鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

樋定規に五三桐紋図笄 古後藤 Ko-Goto Kougai

2012-10-06 | 
鐔の歴史 古後藤




樋定規に五三桐紋図笄 古後藤

 細い樋定規に小さな桐紋を組み合わせた、引き締まった景観の美しい作。赤銅魚子地は古風で、桐紋も同様に古色に溢れている。古い作品というのは、この例のように稚拙な作行ながら味わい深いところに妙趣が感じられるもの。□
 後藤家というと、初代が祐乗、二代が宗乗、三代乗真、四代光乗と続く。子が分家して別家を立てたことも良く知られている。別後藤である。後藤喜兵衛家は乗真の次男が宗家となっている。後藤理兵衛家は五代徳乗の次男(顕乗正継)が宗家。後藤源兵衛家も徳乗の五男が別家を興した。時代的にはこれらの分家の金工も桃山頃を活躍期としている者があり、古後藤の範疇に含められるはずであるが、この点もあまり研究されていないのが現実。何だ別後藤か、などと見下す方もおられるようだが、実はけっこう上手の工があり、甘く見ないでほしい。作品本位で楽しむことをおすすめする。



花筏図小柄 古後藤 Ko-Goto Kozuka

2012-10-06 | 鍔の歴史
鐔の歴史 古後藤




花筏図小柄 古後藤

 洒落た図案ですね。着物にも採られているように、伝統的な文様の一つであり、金工だけでなく、あらゆる分野と美観の連携はあったと考えられる。筏は桂川の上流から切り出された材木の運搬の手段。それに散りかかる桜は嵐山の象徴。春の風景が源にあるが、このような文様に昇華させたのは京都の文化そのもの。全体を文様にするのではなく、魚子地を背景に、波上に筏と桜を構成している。後藤家を興味の対象としている方でなくてもこの美観には心惹かれよう。