鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

草摺曳図小柄 赤城軒元孚 Motozane Kozuka

2012-04-02 | 鍔の歴史
草摺曳図小柄 (鍔の歴史)


草摺曳図小柄 赤城軒元孚(花押)行年七十歳

 歌舞伎の演題、その名場面を活写した作品も多い。もちろん古典に通じるものであり、名場面は単に演者を格好良く見せる一場面というだけでなく、物語全体を示すもので、何らかの意味を持っている。
 草摺曳は鎌倉時代の曽我兄弟の活躍譚を素材としたもの。現在でも歌舞伎で演じられることがあるので、御存知の方も多かろうと思う。力比べを美しく表現した例は、『平家物語』の錣曳きや、朝比奈の首曳きなどがある。
 元孚は江戸の奈良派に直接学んでおり、本作も見るからに奈良風の出来となっている。小柄を縦位置に用いた構図が良い。人物描写とその表情には迫力が満ち溢れている。裏板の猫掻鑢仕立てにも奈良に学んだ様子が窺える。