鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

唐草文図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2011-10-26 | 鍔の歴史
唐草文図鐔 (鍔の歴史)


唐草文図鐔 古金工

 山銅地の簡素な板鐔の左右を大きく透かして文様としながら、小柄笄の櫃穴としても使用可能な構造とし、唐草文を毛彫で耳際に配している。唐草の構成には唐草の枝や蔓に変調があるなど、古風なそれとはだいぶ風合いが異なり洗練味が感じられよう。
 唐草文は、何時の時代においても文様としては大きな、そして重要な位置付けにあったとも考えられる。時代の下がるに従い、多様に変化しており、その意匠の変遷を追うだけでも意義深い。そもそも唐草文は、世界各地において自然な形で生まれてきた。小型の渦巻文や古代中国の龍文、縄文土器にみられる火炎文なども広い意味では唐草文に含めて考えられる。その背後には、永遠に連続する生命の存在、それに対する憧れがあると思われる。枯れては再生する唐草。次々に新たな芽を生じて先端をのばす蔓草がそれに当てられたことは想像に難くない。
 唐草文の描写に毛彫という技法は合っている。線描を曲線的に連続させるだけで唐草に見える。そこに強弱変化を付け、添景なる何ものかを付属させると、洗練味を帯びた文様となる。82.2ミリ。