鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

川中島合戦図小柄 Kozuka

2011-06-09 | 小柄
川中島合戦図小柄


川中島合戦図小柄

 南北朝時代から室町時代の動乱は、下克上の言葉があるように、主を頂点とした権力のピラミッド構造を崩壊させた。それは国そのものの骨組みさえ危ういものになる可能性を秘めていた。
 この戦国動乱の時代、鎌倉時代の一騎打ちを想わせる伝説を残した武将がいる。武田信玄と上杉謙信である。幾たびか両雄が戦った川中島でのことである。
 川中島の合戦は、大きな視点で捉えると、信濃国からさらに北へ進出を目論む武田氏と、それを阻もうとする上杉氏の戦い。その中、永禄四年に行われた最大の合戦で、武田軍の陣中まで馬を進めた上杉謙信が、床机に掛ける信玄に太刀を打ち下ろすという状況が起こった。信玄は見事に軍配で避け、勝敗は決しなかったが、このような伝説を生み出した。
 小柄はこの場面、陣中の信玄と、これに向かって馬を走らせる謙信を、左右に彫り分けている。