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鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

檀渓渡河図鐔 銘 浜野直随 Naoyuki Tsuba

2013-05-20 | 
檀渓渡河図鐔 銘 浜野直随


檀渓渡河図鐔 銘 浜野直随(花押)

 先に同図を3点ほど紹介したが、檀渓渡河図鐔を新入荷したので紹介する。直随の得意とした劉備危機一髪という場面を、朧銀地高彫金銀赤銅素銅色絵象嵌の手法で表現した作。当たり少なく保存状態が良く、永くコレクターが大切にしてきたことが分る。愛馬を駆って荒れ狂う檀渓に突き進む、その鬼気迫る様子を的確に描き出している。やはり鏨使いに迫力がある。意図的に鏨の痕跡を活かして動きの矣ある背景をも表現し、もちろん主題である劉備と的盧の表情が素晴らしい。名品である。□

趙雲奮戦図鐔 浜野矩随 Noriyuki Tsuba

2013-05-15 | 
趙雲奮戦図鐔 浜野矩随


趙雲奮戦図鐔 浜野矩随

 長坂で曹操軍に追いつかれて混乱に陥った劉備軍は、飛張の活躍で渡河を断念させるに至るのだが、その陰では悲しい出来事も起こっていた。劉備の甘夫人や糜夫人とその子供である阿斗などが敵兵に捕えられてしまったのである。その救出に向かったのが趙雲。ところが、怪我をして動けない糜夫人は趙雲に阿斗を託すと、自らは足手まといになるのを恐れて井戸に身を投じてしまった。趙雲は阿斗を懐に奮戦、かろうじて脱出。その姿を描いた鐔で、懐に阿斗を抱き、左手に槍、右手に剣を持ち、巧みに馬を操る場面。鉄地高彫金銀象嵌。阿斗を描いた作は珍しい。浜野矩随は政随の高弟。この鐔には忠五郎と自信の名が刻され、さらに十七歳とある。

長坂橋図鐔 濱野直随 Naoyuki Tsuba

2013-05-13 | 
長坂橋図鐔 濱野直随


長坂橋図鐔 濱野直随

 曹操への降伏帰順か対立かを迫られていた劉。その下、新野城にあって対曹操戦の要とされていた劉備は、突然の劉の降伏によって孤立してしまった。曹操の大軍団を前に為す術もなく、諸葛孔明の案により、劉備は、ひとまず江陵を目指して南下する策を採ったが、新野の領民も劉備に追随の道を採ったため、軍行は捗らず、ついに曹操軍に追いつかれて混戦となった。それが長坂橋の辺り。
 攻め寄せる曹操軍の長坂渡河を許さじと橋の中ほどに馬を進めて独り立ち、敵軍を睨みつける飛張の姿が作品化された例は多い。濱野直随のこの鐔は、赤銅地を高彫にして金銀素銅の色絵を巧みに加えた、直随らしい迫力のある作。


諸葛孔明図鐔 良紀 Yoshinori Tsuba

2013-05-09 | 
諸葛孔明図鐔 良紀


諸葛孔明図鐔 良紀

 赤銅地高彫色絵。先に紹介した鐔と同じ構成だが、厳しい表情の諸葛孔明を描いている。孔明を描く際の決まりごとの一つに独特の被り物と羽団扇がある。以前から気にはなっているのだが、被り物については家流や自出を示すものであろうか、歴史上の当時の流行であろうか、よくわからない。あるいは飛張や関羽の風体のような、単純なるキャラクター設定上のものかもしれない。

諸葛孔明図鐔 随廣 Yukihiro Tsuba

2013-05-07 | 
諸葛孔明図鐔 随廣


諸葛孔明図鐔 随廣

 諸葛孔明を自らの参謀に得たいと願う劉備は、良い返事をもらえないながらも度々訪れた。目上の者であるはずの劉備の、三度の訪問に応える形を採った孔明は、その行為そのものを歴史に刻んだ。『三顧の礼』である。
 机に向かう孔明の姿はよく描かれる。思慮深く繊細な趣を携えており、飛張や関羽とは全く異なる存在感。性格の異なる武士を束ねた劉備自らも結構面白いキャラクターであり、各々が性質を異にするエピソードを生み出すことからも人気がでたものであろう。写真の鐔は、静穏なるその様子を描いた作。朧銀地高彫色絵。随廣は江戸後期の浜野派の工。

草廬三顧図鐔 橋部正貞 Masasada Tsuba

2013-04-30 | 
草廬三顧図鐔 橋部正貞


草廬三顧図鐔 橋部正貞寛永七年

 後藤七郎兵衛家二代益乗の門人。一般に後藤家では鐔の製作は少ない。しかも在銘作も少なく、年紀を切った例はさらに少ない。その中で、寛永七年の年紀が切られたこの鐔の価値は計り知れない。そもそも鐔を製作した金工全体を眺めても、江戸時代初期以前にまで時代の上がる作で、信頼できる年紀が切られた鐔はほとんどないのである。
 歴史的価値は、まずは横に置いて、この作品を眺めたい。赤銅魚子地高彫に様々な色絵表現。後藤の作風に間違いない。とは言え、後藤にはない手法も採られている。後藤家に学んだ橋部正貞に注文した武人はいったい誰であろうか、おおいに興味を引くが、分からない。精巧な彫刻で描き分けられた草廬の諸葛孔明、これを訪ね来た劉備一行。その背景となる山中の様子も見事。


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調子の悪かったパソコンが、こわれてしまった。
HDを取り出してデータを回収しようと試みたが、デスクトップに置いたデータのみがない・・・なんて状態。『銀座情報』の原稿もデスクトップで処理していたが故に書き直し。
問題はパソコンの本体ではなさそう。何しろ、Win8に変えてから良いことがない。

檀渓渡河図鐔 浜野直随 Naoyuki Tsuba

2013-04-24 | 
檀渓渡河図鐔 浜野直随


檀渓渡河図鐔 銘 浜野直随(花押)

 先に紹介した鐔と全くの同図。直随の作風は、切り込んだ鏨の力強い痕跡を活かした描法に特徴がある。先の作品に比較して、今回の鐔の鏨の活かし方が、直随の個性。動きのある波の表情も迫力に満ちている。朧銀地高彫金銀赤銅色絵。

檀渓渡河図鐔 浜野直随 Tsuba

2013-04-23 | 
檀渓渡河図鐔 浜野直随


檀渓渡河図鐔 銘 望窓軒浜野直随(印)

 浜野直随はこの場面を好んで描いている。あるいは、この場面が好まれたからであろうか。表に馬上の劉備を、裏にはその後半身を描き分ける構成も鐔ならではのもので画面を大きく使う結果となり迫力がある。朧銀地高彫色絵。直随の生涯は破天荒であったようだ。江戸で金工を学び、甲府、越後などと各地を渡り歩いて弟子を育て、晩年は南信濃の木曽に棲み、最期の地は伊那谷であったようだ。

張飛図鐔 玉成堂周治 Chikaharu Tsuba

2013-04-20 | 
張飛図鐔 周治


張飛図鐔 銘 玉成堂周治

清龍刀を盾のようにして周りに睨みを効かせているのが張飛。この前で何やら巻物を読んでいる武将がいる。いかなる場面であろうか、ご存知の方がおられたら教えてほしい。
 鉄地を高彫にし、金銀赤銅の象嵌を加え、迫力ある場面を活写している作。玉成堂周治なる金工については詳らかではない。動きのある人物像を彫り出した本作を見る限りだが、独特の顔つきや表現などに挑んだ独創的な思考の持ち主であると思う。江戸末期であろうか、作品が少ないのは、時代背景によるものであろう。他の作品も見てみたい気がする。

樊噲(はんかい)図鐔 Tsuba

2013-04-09 | 
樊噲(はんかい)図鐔


樊噲(はんかい)図鐔

 自らの命を賭けて主の救出に向かう樊噲(はんかい)は、やはり人気があったようで、装剣小道具には比較的多く描かれている。先の張良や韓信のような智謀に長けた策士というより、力任せに突入してゆくところも好感が持たれたのであろうか。鉄地肉彫金布目象嵌。
 透鐔というと、表裏が同じ意匠になる場合が多いのだが、ここでは巧みに背後からの図に仕上げている。

韓信股くぐり図鐔 森直悦

2013-04-05 | 
韓信股くぐり図鐔


韓信股くぐり図鐔 森直悦

 韓信もまた劉邦に仕えた一人。普通考えないであろう川を背にして陣を敷く、「背水の陣」なる奇策を以て強敵を倒した武将、策士である。その、若き頃の逸話を画題として採った例が多い。描かれていように、ひとの股下をくぐるなどという屈辱的な行為を強いられるも、それを耐え忍んだ。
 この鐔は、正確な構成と精巧で緻密な鏨使いにより、朧銀地高彫色絵に表現している。

養由基図鐔 Tsuba

2013-03-23 | 
養由基図鐔


養由基図鐔 

 養由基の馬上から天空を狙う姿を描いた鐔。真鍮地を鋤下彫と高彫を組み合わせて立体的にし、金銀素銅の色絵を施し、強弱変化のある毛彫をも加えている。

養由基図鐔に合わせて《鐔Tsuba装剣小道具の世界 バックナンバーから》を更新しましたので参考にご覧ください。

太公望図鐔 一滴斎 Tsuba

2013-03-21 | 
太公望図鐔 一滴斎


太公望図鐔 銘 奥州会津藩一滴斎

 鉄地一色になる高彫の作品。太公望を主題とし、森の背後に文王の一団が近づく様子を描いている。周囲を騒がす者に動じないという姿勢はこの鐔でも同様に題意として採られていると言えよう。常にみられる多くの同図に比して若く描かれている点は作者の想い入れであろうか。裏面には呂尚の許へと歩む文王の行列を描き、人との交わりを捨てたという呂尚の強い意思のありようをも表現している。
 一滴斎の号を持つ作者については詳らかではないが、その下に記されている花押のような崩し文字は「盛寿」と読むのではなかろうか。

太公望図鐔 水戸金工 Tsuba

2013-03-19 | 
太公望図鐔


太公望図鐔 無銘水戸金工

 正確な構成と精密な彫り口で高彫に表現するを得意としたのが水戸金工。もちろん製作の時代は宗典に比較して下がり、この間に彫刻手法や技法の発展があることから、宗典とは作風の上で比較できないが、顔に刻まれている皺の表情などからも、水戸金工の技術の高さは理解できよう。画題の意味が理解できなくても充分に楽しめる作品である。
 釣り人に貴人の組み合わせで太公望の図が完成するのだが、この鐔のように太公望のみで文王を描かない例も多い。知的で何物にも左右されないという強い精神力が示された作品である。水戸金工は、その背景にある文化により、古典に題を得た作品が多い。

 パソコンを替えたという話をしたが、このブログの編集画面の一部が見えていない状態。背景の色が再現されないから、一部の色文字が見えていないのだ。クリックする位置を手探りで探しながら処理している。写真のアップも途中で止まってしまうし、最悪。

太公望図鐔 Soheishi Tsuba

2013-03-18 | 
太公望図鐔 無銘藻柄子


太公望図鐔 無銘藻柄子

 日本の風俗や風習に題を得た作品を紹介してきたが、唐突に古代中国に目を転じる。
 よく題にとられるのが、釣りをしている人物とそれを見守る貴人の図。釣りをしているのが古代中国でも殊に時代の上がる紀元前一千年以上前の武人呂尚、わが国では太公望と呼ばれている人物、貴人が文王である。伝説的な面が強く、武人とは言うも軍師、軍略に長けた人物で、野にあって自由な生活をしていたところへ、狩りに来た文王に見いだされるというもの。文王の父が待ち望んでいた人物という意味で「太公望」と呼ばれたという。
 藻柄子宗典は和漢の歴史人物を本作のような鉄地肉彫地透に金銀の象嵌を施して奥行と立体感、さらには画面に広がりを持たせた構成を得意とした。合戦図などでは人物が小さく描かれることが多いのだが、ここでは主題を明確にし、人物の表情の描写にも気配りされている。

パソコンを変えてWin-8にしたところ、入らないソフトが頗る多く、DLもできないソフトが多く、手こずっています。何がいけないのかも分からない。とにかく、簡単に動きそうもないので、ブログも少し間があきそうです。少しずつ更新してゆきます。Win-8は近年最悪の気配。