totoroの小道

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一つの花の記録 ~子供たちのノートから~(11 最終) 

2015-08-10 15:33:33 | 4年 国語

めあて なぜゆみ子が小さいお母さんになるのでしょう。

T:すぐに赤丸を付ける言葉があるけれど・・・・
S:「でも」です。

S:でもは、前に書いてあることより、後ろに書いてあることが大事。
S:でもの前には、「ゆみ子は、お父さんの顔を覚えていません。自分にお父さんがあったことも、あるいは知らないのかもしれません。」
S:でもの後ろには、「今、ゆみ子のとんとんぶきの小さな家は、コスモスの花でいっぱいに包まれています。」

S:お父さんは、死んだのじゃないか?
S:いや、敵に捕まっているかもしれない。
S:捕まっても、もう10年立っているんだから、生きているかどうかぐらい分かるよう。
S:顔を覚えていませんだから、会ったことはないんだよ。
S:知らないのかもしれませんって、変だね。
S:お母さんが、お父さんのことを話すと悲しいから、お父さんの話題を出さないようにあいている。
S:ゆみ子も、お母さんが悲しむのを見たくないから、聞かずにそっとしている。

T:でも

S:今は、幸せ。
S:コスモスでいっぱい。
T:あのときのコスモスなの?
S:いや、あのときのコスモスは枯れたけど、きっと種を買ってきて毎年蒔いているんだよ。
S:お母さんが、ゆみ子にコスモスのことを覚えていてほしい。
S:ゆみ子も、コスモスを見ると、不思議に笑顔になるんじゃないかな?

T:コスモスで包まれるって?
S:本当に包むでなく、家の周りに百本ぐらい。
S:家が見えないぐらいたくさん。
S:コスモスの中とか、コスモスのトンネルとかって書いてあるから、家が見えないぐらいたくさん育てている。
T:前の家と同じ家なの?
S:いや、前の家は燃えて灰になった。
S:だって、とんとんぶきだもの。
S:空襲で焼けてしまったけれど、お母さんもゆみ子も生き延びたんだ。
S:それで、大きな家や、ちゃんとした家を建てるお金がないから、ちいさなとんとんぶきの小屋。
S:建物は、ぼろだけど、幸せだし、あのときお父さんの渡した「美しい」ものに囲まれている。
S:美しい心がある。

T:なぜ、ゆみ子がお母さんになるの?
1 ゆみ子はお手伝いが好きだから。  5人
2 お母さんは忙しいから。        24人

S:今日は日曜日でしょ。昔は、土曜日も学校があったんだって。日曜日は、ゆみ子も家にいて手伝える。
T:日曜ぐらい、親子で買い物に行けばいいのに。
S:お母さんは、忙しいんだよ。
S:だって、話している間だけミシンが止まるけど、すぐに仕事をしている。
S:忙しくて、ミシンを止めなくて、ミシンで話をしているみたい。
S:ミシンの音が、音楽みたい。
S:お母さんは、日曜日も働いているんだよ。
S:いつもは、一日ミシンの仕事をしながら、買い物に行ったり、食事の支度をしたりして、お母さんはくたくただよ。
S:だから日曜日ぐらいは、ゆみ子が変わってあげるんだ。

T:そんなに一生懸命に働かなくていいのに?
S:お母さんにも、ゆみ子を満足するこにしてほしいという、お父さんの願いが心の中にあるんだよ。
S:お肉と、お魚って選べるぐらいお金があるのは、お母さんが一生懸命に働いているから。
S:お父さんの願い通り、満足する子に育てるために、家も、食べ物も、コスモスも、手に入れないといけない。
S:だから、そのために、ゆみ子を一生懸命に育てているんだ。
S:ゆみ子が、幸せに育つように、お父さんの分まで頑張ってるね。
S:それをゆみ子も知っているから、小さいお母さんになるんだね。

T:お父さんは、ゆみ子とお母さんを思い、お母さんは、お父さんとゆみ子を思い、ゆみ子はお母さんをいたわる。
S:いい家族だね。
S:貧乏かもしれないけれど、幸せだね。
S:ゴミ捨て場にさいているけれど、美しいコスモスみたいだね。

なんだかんだで、3週間近く取り組んだ「一つの花」がこうして終わった。

子供たちのノートを何度も集めながら、チェックしていたが、どの子もよくノートにまとめていた。
今まで、授業研究の会の授業は「書かない」ことが批判されていた。
しかし、十分話し合うと、書きたいことがどの子の頭の中にもある。
だから、せいぜい5分程度しか各時間が取れないが、どのノートもよくまとめて思いが書かれている。

あまりに、どのノートもすばらしいので、私はそれをしばらく預かることにした。
そして、夏休みの面談で、保護者の皆さんに
「どうですか。このノート。すごいでしょ。」
「一人一人の子供が、どれだけ授業に一生懸命に取り組んだかは、ノートを見ると分かります。」
「これだけの、ノートがかけるのですから、今もしかしたら成績は満足するものでないかもしれないけれど、これを続ければ伸びますよ。」
と、保護者の前で子供を褒めて、ノートを返却した。

この一つの花、のテストは、平均点が90点を超えた。
ミスは、ほとんどが漢字で、読み取りはほぼパーフェクトだった。
やはり、丁寧に取り組めば、力が付くのだと感じた。

55回

9月12日  土  9:00  15:00  天竜壬生ホール  第1会議室
56回 10月17日  土  9:00  12:00  天竜壬生ホール  第1会議室

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2 コメント

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ひでさん ありがとうございます。 (totoro)
2015-09-04 07:57:01
夏の会に参加しました。その時に、戸田先生が年度当初の授業で、あの「学び会う」授業を作っていく様子について学ぶことができました。どういう言葉がけをし、どういう要求をしているのかの手の内を少し見せてもらいました。

愛知の会にも参加しました。石井先生が、「学び会う授業」へむけて、教材解釈をもとにどういう構想をもって授業にのぞむのか、その手の内を少し見せてもらいました。

秋にごんぎつねに取り組みます。さっそく、このお二人の実践を試してみたいと思っています。
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子どもたちに「学び」の成長が凄い! (Mrヒデ)
2015-08-29 11:03:17
 「一つの花」の授業記録をずっと読まさせてもらいました。
 授業研究の会ではあまり課題にあげられない「お父さんは何も言わずに」「お父さんのばんざい」「一つの花をみつめながら」「お父さんはにっこり」などを取り上げながら授業をされました。新しい課題で子どもと追求できるこたがわかりました。また、これらの課題で子どもも教師も読み取る力がつくことが証明されたようです。
 子どもたちは、酒井先生の指導により、学習の仕方が身に付き、どんどん読み取りができるようになってきているようです。教師の1つの発問に対して子どもたちは、いくつも続いて重要な発言ができています。また、「指示語」や「文を切る」「理由」「前後の文への注目」「短文つくり」「ノートへの記述」等々です。
 今、国会では安保法案等で問題になっています。また、戦争体験者が少なくなってしまっています。子どもたちに「戦争はいけない」、「平和が大切」だと大声で言ってもどうしてダメなのかわからないでしょう。この「一つの花」のような授業を展開することが、戦争の悲惨さを真に理解できるのだと思います。
 素晴らしい実践ですので、論文にまとめて応募することを望みます。
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