totoroの小道

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一つの花の記録 ~子供たちのノートから~(10) 子供から教えられたこと

2015-08-10 14:48:45 | 4年 国語

め どうしておとうさんは、ゆみこでなく、一つの花をみつめながら行ってしまったのだろう。

いよいよ、子供たちが一番考えたい、大問題を話し合う日がやってきた。
ここまで、たくさんのことを発見してきたので、この日の話し合いを楽しみにしていた。

実は、私は指導案を書く際にとても悩んだ。
子供たちの作った大問題は、「なぜ見つめながら」だった。
また、子供たちは「なぜ、何も言わずに」という疑問にもこだわっていたが、こちらは中問題することになった。
最初、私は、大問題で指導案を作った。何度も書き直したが、どうも授業が組み立てられない。

中問題「なぜ、何も言わずに。」の場合は、「ゆみ子は、お父さんに花をもらうと、キャッキャッと足をばたつかせて喜びました。」という文を根拠に話し合うというプランがたった。

大問題のばあい、根拠になる文は「ゆみ。さあ、一つだけあげよう。一つだけのお花、大事にするんだよう・・・・。」 になる。
この文を出した場合、お父さんが一つの花に込めた思いを勉強する。
しかし、この一行からは、その材料があまりにも少ない。
「さあ」を扱おうか。
「だけ」を取り上げようか。
「よう」を考えさせようか。
と、あれこれ何度もプランを考えたが、
こちらでは、どう考えても、子供の力で、答えがさせる自信がなかった。
そこで、研究授業は、中問題で取り組むことにした。

いよいよ、今日が大問題。
しかし、私は、それを解決する糸口を、いまだはっきり持っていない。
困ったまま、授業が始まった。

 

T:今日はどの文を最初に読んだらいいの?
S:ゆみ子のにぎっている、一つの花を見つめながら・・・・。

全員で  ~ゆみ子のにぎっている、一つの花を見つめながら・・・・。~

T:どうして、ゆみ子ではなく、一つの花を見つめながらなのかね~。
S:よく分からないね~

しばしの沈黙の後
私にとって、目から鱗の発言があった。

S:あのね、一つの花を見つめながらってかいてあるけど、お父さんの見ていたのは、一つの花だけではないんだよ。

・・何を言い出したのか
・・・彼が、何を言おうとしているのか最初、よく分からなかった。
T:もうちょっと、詳しく言ってみて。

私も、クラスの子供たちも、耳を澄まして、彼の方を見つめた。

S:あのね、ただ花を見ていたんではないよ。こう書いてあるじゃない。
S:にぎっている、一つの花を見つめながらって。
S:あ~
S:花だけじゃなくて、花を握っているゆみ子の手も見えているんだ。
S:にぎっていたんだ。
S:そうかあ、花だけを見ているんじゃなくて、花と一緒にゆみ子の握っている手も見つめているんだ。

T:見る、と見つめるのちがいは?
S:見るはただ見る。
S:見つめるは、穴があくぐらい、ずっと見ている。
S:注目している。
S:じっと目を離さないで、見る。見続ける。

S:私は、にぎるを調べたんだけどね、五本の指を曲げて物をつかむ。
S:持っている物を話さないように、力を入れて持つ。

S:何を離さないように、握ったんだろう?
S:一つの花。
S:いや一つの花に込められたお父さんの思いだよ。
S:そうだよ。お父さんの思いのつまった、一つの花を握りしめていたから、お父さんは花を見ていたんだよ。
S:まだ、1歳だけど、何かとても大切な物をもらったと分かったんだよ。
S:お父さんからもらった、宝物だと思ったと思うな。

T:それはどこを調べたら分かるの?

S:お父さんは、プラットホームのはしっぽの、ごみすて場のような所に、
  わすれられたようにさいていたコスモスの花を見つけたのです。
  あわてて帰ってきたお父さんの手には、一輪のコスモスの花がありました。

S:この中に、お父さんの願いがたくさん入っているね。

S:こんな所に咲いているコスモスだって、こんなにたくましく咲いている。ゆみこも、どんなに苦しくても、たくましく生きていってほしい。
S:たくさんのコスモスの中で、これが一番きれいだったんだよ。一番きれいになってね。
S:人が注目して無くても、自分の力で生きていくと、たくましくなれる。
S:お父さんは帰ってこないかもしれないけれど、このコスモスを忘れないでね。
S:コスモスをお父さんだと思って、大事に育ててね。
S:このコスモスは、ゴミ捨て場のような所でも、満足して育って、こんなにきれいな花を咲かせたんだよ。

※気持ち良く、それぞれが、お父さんの願いを想像することができていた。

まとめ
こんな所に咲いているコスモスだって、こんなにたくましく咲いている。ゆみこも、どんなに苦しくても、たくましく生きていってほしい。という、お父さんの願いを握っているのを、そうなってほしいと願って、じっと目を離すことができなかった。

この部分は、お父さんの花に込めた「願い」を扱う部分だとは決めていた。
しかし、ついに根拠になる文、言葉を見つけられないまま、この日を迎えた。

子供たちは、私の杞憂をいとも簡単に乗り越えた。
「一つの花」を見つめたのではない。握った、「一つの花」なのだ、という発言には私もはっとさせられた。
根拠にする文は、「ゆみ子のにぎっている、一つの花を見つめながら・・・・。」ではなく、
お父さんは、プラットホームのはしっぽの、ごみすて場のような所に、わすれられたようにさいていたコスモスの花を見つけたのです。なのです。
という言葉に、子供たちの成長を感じた。

この1時間は、子供たちのおかげで成立した1時間だった。

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