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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



「結婚式の披露宴で、写真撮影のアルバイトを頼まれたらね、来賓のお客さんが『舌出をした瞬間』の写真ばかり撮る。するとある意味、面白い写真集が作れます。」

と私に教えてくれたのは学生時代に受けた写真論のY助教授(今風に言えば准教授か)。
私がドキュメンタリーに興味を持ったのがこの瞬間。
この頃、同時に受けていた広告写真論は逆に退屈になり「意図的な製作でもドキュメンタリーの方が力がって魅力的」と考えるようになったのもこの時だった。

写真は切り取るシーンで見る者に与える印象が変わる。
当たり前の事実だけど意外に皆が気付いていない真実だ。

週刊新潮にここ最近「軍事政権下のミャンマー」と題して川畑某というカメラマンの写真コラムが掲載された。
これって「結婚式の舌だし写真」と一緒じゃないか。

先月だったか、このカメラマンはヤンゴンのナイトクラブの取材に成功と銘打って春を売る女性たちを取り上げた。
「彼女たちは春を売って稼いだお金でスラムに一緒に住んでいる家族を養っている」
と言う意味合いで、さもこの暗い話が軍事政権の圧制によるミャンマーだけの話のように締めくくっていた。
調べてみると川畑某はアメリカを拠点に活躍(?)しているジャーナリストだそうだ。
私はアメリカの事情に疎いのでもしかするとアメリカの売春婦はビバリーヒルズや5番街に住んでいるリッチな女がする商売というのが普通なのかもわからない。
が、ミャンマーに限らず東南アジアでは貧困のために春を売って稼ぐ女性が少なくないことは多くが知っている悲しい事実。
お隣のタイ国では北部のチェンマイやチェンライ辺りから出稼ぎに来た容姿端麗な女の子がニューぺッブリー通りやタニヤ当たりの風俗店で働いていることは知られている。
一方、容姿があまり端麗でない東北部出身のクメール系の女の子たちは住み込みのメイドなどをして仕送りしている。
こんなことをわざわざ取材しても新聞雑誌は取り上げてもくれやしない。
貧困は大問題だが、売春問題はたとえHIVを取り上げても「ありきたりの」ネタでしかない。
つまりジャーナリストとしてお金になる仕事にはならないのだ。

そこで登場するのがミャンマーの「軍事政権」という特殊事情。

「軍事政権だから売春しなけりゃ食べていけない」
は絵になるし読者の興味も惹けるというものだ。

ちなみに「取材に成功したナイトクラブ」は観光客なら誰でも取材に成功できるような場所にある。(私は立ち寄ったことはありません、念のため)
向かいに大きなショッピングセンターがあるから、それこそ「ヤンゴンの風俗街の取材に成功」は「バンコクのタニヤの取材に成功」と対して変わらない。
ただ風俗店内の写真撮影は世界中どこでも禁止であることは間違いない。
私も以前会社の同僚と新宿区役所通りのキャバクラに行った時、同僚が携帯のデジカメで写真を撮影しようとしたら強面のお兄さんに注意されたことがある。(店を選んだのは私だったが注意されたのはホントに同僚だ。

褒めてあげるとしたら「風俗店でよくぞ写真撮れましたね」
程度の話。
でも軍事政権のミャンマーだから金になる。

で、今週号の新潮にも同じカメラマンのミャンマーレポートが掲載された。
題して「軍事国家の難民たち」。

タイ国境のカレン民族戦線の村を取材したレポートだ。

このカレン民族戦線。
ミャンマー国内はもとより外国でもテロ活動に積極的な困った君で、犠牲者もたくさん出している。
つまるところタリバンやアルカイダとあまり変わらない人たちなのだが「軍事政権」と対立しているので善玉に祭り上げられ外国ジャーナリストの手厚い保護を受けている。
例えば赤軍派が海外メディアから称賛されているようなものだ。
昨年もカレンゲリラがミャンマー国内で路線バスを襲撃し乗客多数が殺される事件が起きている。
でもジャーナリストはゲリラの見方だし、軍事政権も思いっきりアホなデモ弾圧を行なった直後なので、殺された乗客に同情する海外メディアはどこもなかった。

ともかく、健全なるジャーナリストはもっと真当なものを取材して雑誌に売り込むことをお勧めしたい。
そもそもこういう際物取材は週刊朝日か週刊金曜日がふさわしく、週刊新潮の記事じゃない。

「ミャンマー軍事政権ネタ」
売れないジャーナリストの生活源でしかないのが真相のようだ。

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