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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



先週土曜日に放送されたNHKスペシャル「立花隆 サイボーグ技術が人類を変える」は衝撃的な内容だった。

じつはつい先日、会社の仲間と他愛もない冗談を話していたところだった。
「なにか記憶しなければならないような製品マニュアルやビジネスデータは、そのうちマイクロチップにプログラムして人間の脳に埋め込めば、もう研修や勉強会なんか、いらんのんとちゃう」
と。
ところが、こういう技術は冗談でも空想でもなく、現実となりつつある世界であることをこの番組で具体的な映像で突きつけられ、戦慄してしまったのだ。

番組では、事故で両腕を失ったアメリカ人の男性が、ロボットアームを取り付けて「自分の意志」でコントロールする様子や、生まれながらに聴覚障害を抱えていた日本人の子どもが、人工内耳を埋め込み耳が聞こえるようになった姿などが紹介されていた。

かつて私が中高校生だった頃、アメリカの人気テレビシリーズで「600万ドルの男」と、それに続く「バイオミック・ジェミー」という番組が放送されていた。
どちらも事故で瀕死の重傷を負い腕や足、視覚、聴覚を失った主人公がアメリカ政府の秘密技術「バイオミック技術」により、それら失った機能を取り戻し、もともとの肉体よりも優れた、それらの機能を駆使して悪と立ち向かうというSFシリーズだった。
ハリウッドのユニバーサル・スタジオへ行くと、バイオミックパワーのアトラクションが上演されていて、観客は舞台に上がり、自動車を持ち上げるというパフォーマンスを体験することができたものだ。

今回の番組で見た人工の腕や耳、目、そして完成はこの年末だというパワードスーツ技術などはまさしく、20年前にテレビで見た、SFの世界そのものだった。

最も感動的だったのは、不治の病とされるパーキンソン病が脳に電極を打ち込むことによって治癒されてしまうという医療技術だった。

以前、元東北大学学長の西沢潤一氏はその著書の中で「科学に不可能はない。今現在、不可能であっても、必ず人類は科学技術でその問題を克服するだろう。それは歴史を見ればあきらかだ」という意味合いのことを述べられていた。
まさしくテレビの映像の中で展開される最先端技術による「奇跡」の一つ一つは、その言葉を裏付けるものだったのだ。

一方に於いて、原子力技術が大容量発電という夢を与えてくれたのと同時に最終兵器という悪魔をもたらしたのと同様、サイボーグ技術にも醜い姿が潜んでいることも番組ではきっちりとリポートされていた。

アメリカ軍はすでにサイボーグ技術を兵士に応用しはじめていることも番組は伝えていた。
そしてまた頭に電極を埋め込まれたネズミがコンピュータの指示通りに行動する様は「災害時に役立つだろう」というポジティブな考えとともに、人間を操れる脅威のシステムというネガティブなイメージをももたらしたのだった。

「我々はボーグだ。おまえたちを同化する。抵抗しても無意味だ」
と言うヤツ等が現れないように、素晴らしいが、凄いがうえに厳重なる注意も注がねばならない技術だと感じたのだった。

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