とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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マンガ嫌韓流の真実

2005年11月29日 20時52分53秒 | 書評
発売後、1ヶ月で30万部を売り尽くしたマンガ「嫌韓流」(晋遊社刊)は、どういう理由かほとんどメディアに採上げられることがなかった。
書籍が売れないといわれる現代に於いて30万部という数字は決して小さいものではない。
実際のところ、インターネットを使った口コミによって多くの人々広まった「嫌韓流」を、どうしてメディアは採上げなかったのか。
その理由を探れば探るほど、現代日本の捻じれた世相が浮かび上がってくるのだ。

本書は同和問題や仁侠の世界など、数々のタブーに正面から挑んできた出版社「宝島社」が、「マンガ嫌韓流」が社会にもたらしたものと、その社会そのものの背景を、マンガ嫌韓流にも登場したジャーナリストや学者の言葉を引用し、徹底検証を試みたユニークな一冊だ。

ホントのところ、表紙に派手に書かれていた「マンガ嫌韓流の真実 韓国/半島タブーの超入門」という見出しほどのインパクトは内容にはなかった。
日韓併合の歴史的な事情についても、
創氏改名の事実についても、
朝日新聞の誤報から始まった従軍慰安婦の問題にしても、
おおむね多くの日本人や在日の韓国朝鮮人たちにとって既知の事実でしかなかった。
ただ、これらの「当たり前の内容」がこれまでの日本に於いてはおおっぴらに議論することができなかったこと。それこそが異常であり、そういう異常さの中で発生した日本人のうっ屈した不満がこの「マンガ嫌韓流」で表現されたのにすぎないのだ。

主要メディアが「マンガ嫌韓流」のベストセラーを黙殺したのは、単なる言論封鎖という事情だけではない。
現在多くのメディア(とりわけ国営放送NHK)は「韓流」というキーワードをビジネスとしている。
ドラマ「冬のソナタ」に始まった韓国ドラマのブームは意外な大きさで、メディアのビジネスに影響を与えたのだ。
関連のCD,DVDが売り出され、主演俳優の写真集や関連書籍が販売部数を伸ばしている。
韓国映画の封切り本数は従来の想像を超えている。
しかし実際のところ韓流に流されているのは一部の熱狂的な中高年の女性ファンと、それにつき合わされているその伴侶ぐらいなのだ。

過去50年。半島タブーを醸成し、正当な言論を封殺してきたマスメディアが、こんどは金目につられて情報を封鎖している。
いったいこの国の言論機関はどうなっているのだ、というのが真相だ。

面白いことに、この宝島社も韓流関連本を出版している。
ある意味「マンガ嫌韓流の真実」も韓流本といえるかも知れない。
いずれにせよ、マンガと解説本の本書を合わせて読むと、捻じれた日韓関係よりも強く捻じれている日本のメディアの姿が見えてくるのだ。

~「マンガ嫌韓流の真実 <韓国・半島タブーの超入門>」宝島社刊~