とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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ハウルの動く城

2005年04月27日 23時07分35秒 | 映画評論
大阪府柏原市国分から奈良県王寺町に向かう道は大和川に沿って作られており。なかなか景観がよろしい。
川と道路とJR大和路線が錯綜し、実に絵になる場所なのだ。
途中「亀の瀬」と呼ばれている場所は川が急流になっている場所で、古の時代から大和の都から難波の津へ抜ける難所であったという。

ここ亀の瀬の近く。道路沿いに十数年前まで大きな砕石場があった。
錆びついたコンベアベルトやプレハブ作業所、粉砕設備がアブストラクトのように山に沿って聳え立ち、ガがガガガという機械音が独特の暗さと、独特の生命感を与えてくれていた。

ハウルの城は、そんな砕石場を思い出させる奇抜で生命感に溢れた鉄の造形物だった。

昨年公開されて今もなお上映が続いている宮崎駿の「ハウルの動く城」を、やっと観賞してきた。
さすがに宮崎アニメだけに色彩は豊かで美しく、まるで色つきの夢を見ているような感がスクリーンから漂っていた。
危惧された木村拓哉演ずるハウルの声も違和感なく聞き取ることができたし、倍賞千恵子のソフィーの声もなかなか力演であった。
相変わらずの無国籍調のデザインは芸術の域に達しており、見ているだけでまったく飽きることのない絵作りだった。
CGカットさえ、CGを感じさせないできなのだ。
ローレライのスタッフに見せてやりたい。

しかし、物語となると絵とは正反対。
はっきり言って、宮崎駿もネタ切れか、と思ってしまう内容だったのだ。
荒れ地の魔女は前作「千と千尋の神隠し」の或るキャラクターの焼き直しのようであるし、案山子はトトロの動きを踏襲しているような感じがする。
魔法、についてはなんとなく「魔女の宅急便」に軍配を上げたくなるし、雪をいただいた高い峰々からはハイジの呼び声とオンジとヨーゼフが出てきそうな感じまでした。

これまで宮崎作品には反戦や自然保護のテーマがなんとなく盛り込まれていたが、今回はあからさまに反戦を謳っているので、見ているこっちは瞬間的に興ざめしてしまうのだ。

とにもかくにも物語はどうでもよくて、ともかく宮崎アニメの視覚マジックを堪能したい人にはピッタリな映画だ。