人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ダニエル・ハーディング ✕ 二カ・ゴリッチ ✕ 東京都交響楽団でベルク「7つの初期の歌」、マーラー「交響曲第1番ニ長調」を聴く ~ 第1006回Bシリーズ定期演奏会

2024年08月10日 06時50分03秒 | 日記

10日(土)その2。昨日開催された「フェスタサマーミューザ 日本フィル」公演については「その1」で書きました モコタロはそちらに出演しています 是非ご訪問ください

昨日19時からサントリーホールで東京都交響楽団「第1006回Bシリーズ定期演奏会」を聴きました プログラムは①ベルク「7つの初期の歌」、②マーラー「交響曲第1番 ニ長調」です   演奏は①のソプラノ独唱=二カ・ゴリッチ、指揮=ダニエル・ハーディングです

ダニエル・ハーディングは1975年、イギリス・オックスフォード生まれ。ドイツ・カンマーフィル、マーラー室内管首席指揮者・音楽監督、パリ管音楽監督などを歴任 現在、スウェーデン放送響音楽&芸術監督、マーラー室内管桂冠指揮者を務める 2024年9月にサンタ・チェチーリア国立アカデミー管&合唱団音楽監督に就任予定・・・と、ここまでは他の指揮者とさほど変わらないプロフィールですが、ハーディングの場合は飛行機の事業用操縦士(CPL)の資格を持っています レコード会社勤務の城所孝吉氏によると、彼は資格を持っているだけでなく、年の半分をエールフランスのパイロットとして働き、残り半分を指揮者として活躍しています 「なぜ彼はプロのパイロットになったのか?」等の詳細は2023年11月23日付toraブログに書いていますので、興味のある方はご覧ください

     

オケは12型で、左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置 コンマスは水谷晃、隣は山本友重というダブルトップ態勢を敷きます クラリネットはN響首席の伊藤圭が客演しています 舞台上手にはハープの高野麗音がスタンバイします

1曲目はベルク「7つの初期の歌」です この曲はアルバン・ベルク(1885-1935)が1905年から08年にかけて作曲、1928年にウィーンで初演されました 第1曲「夜:非常にゆっくりと」、第2曲「葦の歌:中くらいの速さで」、第3曲「ナイチンゲール:柔らかく、動きをもって」、第4曲「夢を抱いて:ゆっくりと」、第5曲「この部屋で:軽やかに、動きをもって」、第6曲「愛の賛歌:非常にゆっくりと」、第7曲「夏の日々:いきいきと」から成ります

ソプラノ独唱の二カ・ゴリッチはスロヴェニア出身。マリポルのバレエ音楽学校、グラーツ国立音楽大学で学び、ロンドンの王立音楽アカデミーで研鑽を積む。これまでモーツアルトをはじめ主要なオペラのヒロイン役を歌った

ダークグリーンの衣装のゴリッチが登場、ハーディングの指揮で演奏に入ります ゴリッチは美しいソプラノでベルクの世界を歌い上げます 個人的には第2曲の水谷晃(コンマス)、遠藤香奈子(第2ヴァイオリン首席)、篠崎友美(ヴィオラ首席)、伊東裕(チェロ首席)、池松宏(コントラバス首席)の弦楽五重奏を伴った音楽が印象に残りました

     

プログラム後半はマーラー「交響曲第1番 ニ長調」です この曲はグスタフ・マーラー(1860-1911)が1884年から88年にかけて作曲、1889年にブタペストで初演され(初稿)、その後93年から96年にかけて改訂、96年にベルリンで初演(決定稿)されました 第1楽章「ゆっくり引きずって ~ 常にとても快適に」、第2楽章「力強く動きをもって、しかし速すぎず」、第3楽章「厳粛かつ荘重に、ひきずることなく」、第4楽章「嵐のように動的に」の4楽章から成ります

ハーディングの指揮で第1楽章に入ります 伊藤圭のクラリネット、弘田智之のオーボエが素晴らしい ホルンも大活躍です。舞台裏で吹かれるトランペットも冴えています と思って聴いていると、20時前後に会場が揺れました 地震です 聴衆はもちろん、演奏者も気がついた様子でしたが、演奏はそのまま続行されました ほんの短時間で揺れが収まったので良かったです それを合図に、というわけではありませんが、ハーディングはオケを煽り立て、スピード感溢れる圧巻の演奏でこの楽章を締めくくりました 第2楽章は弦楽セクションの渾身の演奏が印象的でした 第3楽章は池松宏のコントラバス・ソロで厳かに開始されました クラリネット、オーボエ、フルートが冴えています 第4楽章は冒頭から劇的な展開が繰り広げられます 終盤になると、第1楽章と同じように楽員を煽り立ててスピードを上げます ホルン全員とバストロンボーンが立奏し、オーケストラ総力を挙げてのフィナーレは圧巻でした

ハーディングと地震の関係で思い出すのは東日本大震災の時のことです ハーディングは2010年に新日本フィルのミュージック・パートナーに就任しましたが、翌2011年3月11日の東日本大震災が発生した14時46分には、その夜の「同パートナー就任披露公演」のゲネプロのため車でトリフォニーホールに向かう途中でした 当日夜の本番は、会場に駆けつけることが出来た楽団員を振り、わずかな聴衆のためにマーラーの交響曲を演奏したのです 彼はその後、しばらく日本に滞在し被災状況を目の当たりにしました そんなこともあり、彼は翌年6月に新日本フィルと「チャリティー・コンサート」を開き、マーラーの「交響曲第5番」を演奏しました ハーディングと新日本フィルとが極めて良好な関係にあったのは、そのような”事件”があったからとも言えます

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、繰り返されるカーテンコールを見ながらそんなことを思い出していました

     

     

     

     

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広上淳一 ✕ 服部百音 ✕ 日本フィルでメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調」、チャイコフスキー「交響曲第5番」他を聴く ~ フェスタサマーミューザ

2024年08月10日 00時07分08秒 | 日記

10日(土)その1.わが家に来てから今日で3497日目を迎え、11月の米大統領選で再選を目指すトランプ氏が8日、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に「大統領が発言権を持つべきだ」と述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     トランプが大統領になりFRBの政策に口出しして失敗したら 絶対FRBのせいにする

  昨日の午後はコンサートのハシゴだったので、夕食作りはお休みしました  

         

昨日、15時からミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ 日本フィル」演奏会を、19時からサントリーホールで「東京都交響楽団Bシリーズ」定期演奏会を聴きました ここでは日本フィルのコンサートについて書きます

プログラムは①J.シュトラウス:ポルカ「狩」作品373、②メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」、③チャイコフスキー「交響曲第5番 ホ短調 作品64」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=服部百音、指揮=広上淳一です

広上淳一は東京音楽大学指揮科卒。26歳でキリル・コンドラシン国際指揮者コンクールで優勝 ノールショッピング響、コロンバス響などを指揮。2022年まで14年間にわたり京都市交響楽団常任指揮者を務めた 現在、オーケストラ・アンサンブル金沢アーティスティック・リーダー、日本フィルフレンド・オブ・JPO(芸術顧問)などを務める傍ら、東京音大指揮科教授として後進の指導に当たる

開演前の14時20分から広上氏と「わたなべオーケストラ」(女性のピン芸人)さんによるプレトークがありました 今年1月から3月にかけてTBS系列で放送された「さよならマエストロ ~ 父と私のアパッシオナート」では、広上氏と彼が教授を務める東京音楽大学が全面的に協力しましたが、「わたなべオーケストラ」さんはオーボエ奏者役で出演したそうです 彼女は学生時代に吹奏楽部に入っていたそうで、番組のオーディションを受けて合格したそうです 広上氏は、主役の西島氏をはじめ、役者さんたちの役作りの熱心さに接し、勉強になったと語っていました また、広上氏が20代の頃、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を世界的なオーケストラに鍛え上げたベルナルト・ハイティンクが「これまで自分はオーケストラに育てられてきた。残りの人生は恩返しをする時期だと思う」と語っていたが、自分も日本フィルとは40年以上の付き合いになる これまで日本フィルに育てられてきたと言える。今は恩返しだと思って指揮をとっている、と語りました

     

さて本番です。服部百音人気か、会場は満席です

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは扇谷泰朋です ホルンのトップには読響首席の松坂隼が客演しています

1曲目はJ.シュトラウス:ポルカ「狩」作品373です この曲はヨハン・シュトラウス2世(1825-1899)が作曲、1875年2月27日に初演されました

広上氏が右手に空気銃を持って登場 そのまま指揮台に上がり指揮を始めました この曲はウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでよく演奏される楽しい曲ですが、曲の途中で銃を上に向けて撃つシーンが何カ所かあります。空気銃には実弾が入っているわけではなく、撃つときにタイミングを見計らって打楽器奏者が鞭の音を出していました ここで実弾を撃つと無鉄砲と言われます 広上氏はバカ受けしていました

2曲目はメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)が1844年に作曲、1845年にライプツィヒで初演されました 第1楽章「アレグロ・モルト・アパッショナート」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグレット・ノン・トロッポ ~ アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の服部百音は2009年リピンスキ・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで史上最年少第1位 その後も多数の国際コンクールでグランプリ受賞 現在、桐朋音楽大学音楽学部大学院に在籍

協奏曲のため、弦楽器は12型に縮小します オケのチューニングが終わり、ソリストを待つだけになります。すると、舞台袖の閉じた扉の奥から第1楽章冒頭のメロディーがかすかに聴こえてきました 服部百音は直前まで指使いのチェックをしているのか、と驚きました やがて広上とともに緊張した面持ちで登場した服部は、黒とベージュの斜めストライプの衣装が映えます

服部は集中力に満ちた演奏を展開しますが、最高音から最低音までのレンジが広く、研ぎ澄まされた弱音が素晴らしい 広上 ✕ 日本フィルはピタリとソリストに寄り添います 聴きごたえのある素晴らしい演奏でした

満場の拍手のなかカーテンコールが繰り返されますが、服部は手を振って舞台袖に引っ込んだかと思うと、広上 ✕ 日本フィルの演奏に乗せて、もの凄いスピードで無窮動の音楽を演奏しながら再登場し、一瞬の休みもなく最後まで弾き切りました 明らかに道路交通法違反(スピードの出し過ぎ)の演奏で、聴衆からやんややんやの喝さいを浴びました 後でアンコール・ボードを見たら「パガニーニ作曲『モトぺルペトゥオ』」という曲でした

     

プログラム後半はチャイコフスキー「交響曲第5番 ホ短調 作品64」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1888年に作曲、同年サンクトペテルブルクで初演されました 第1楽章「アンダンテ ~ アレグロ・コン・アニマ」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ、コン・アルクーナ・リチェンツァ」、第3楽章「ワルツ:アレグロ・モデラート」、第4楽章「フィナーレ:アンダンテ・マエストーソ ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

オケは14型に戻ります

広上の指揮で第1楽章に入りますが、かなり遅いテンポで演奏が進みます 冒頭の「運命の主題」を吹いたクラリネットが素晴らしい ファゴットもいい味を出しています アレグロ部に入ってからはトロンボーン、ホルンなど金管楽器が冴えています 広上は躍動感溢れるダイナミックな指揮ぶりでオケを引っ張ります 第2楽章は冒頭の松坂のホルン独奏が素晴らしい また、オーボエ、クラリネットがよく歌います 第3楽章は弦楽セクションのアンサンブルが素晴らしい 第4楽章は第1楽章で暗いイメージで登場した「運命の主題」が、まるで勝利の音楽のように響きます これぞチャイコフスキー・マジックです 金管・木管楽器が咆哮し、ティンパニが炸裂し、弦楽器が渾身の演奏を展開して力強いフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました 広上は拍手を制し、自身がアーティスティック・リーダーを務める「オーケストラ・アンサンブル金沢」の活動について触れ、今年1月の能登半島大地震の影響がまだ続いているが、人間が生きていく上では「衣」「食」「住」に加え「心」が必要だ 音楽はそのためにある 日本には全国各地にオーケストラが存在するが、被災された地域もある。そのような人たちのために演奏したいーと語り、弦楽合奏によりグリーグ「過ぎにし春」をアンコールに演奏、コンサートを締めくくりました 広上氏の人柄がよく出た選曲であり演奏でした

     

     

     

     

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