5日(火)。NHK交響楽団のホームページによると、N響6月定期演奏会(全6公演)と7月4日の「オラトリオ『箱舟』」は中止となりました 一方、読売日響の5月13日の定期演奏会については、現況では実施するとは思えませんが、まだ何の発表もありません 読響の場合は振替制度が複雑な(手厚い)こともあり調整が難しいのかもしれません。それはそれとしてN響は発表が早いです これで、どうしても聴きたかったマーラー「交響曲第9番」が聴けなくなってしまいました 何のためにN響会員になったのか とても残念です
ということで、わが家に来てから今日で2043日目を迎え、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイは2日、年次株主総会を開いたが、2020年1~3月期決算は約5兆円の赤字となり、バフェット氏は「世界が変わる」として、保有していた米航空株式を全て売却したと明かした というニュースを見て感想を述べるモコタロです
経営が低空飛行を続けるならまだよかったけど 額が飛んだ話になってしまった!
昨日、夕食に「ちぎり厚揚げと豚バラの和風炒め」「炊き込みご飯」「ジャガイモの味噌汁」を作りました たまには炊き込みご飯も良いものです
林哲夫著「喫茶店の時代 あのとき こんな店があった」(ちくま文庫)を読み終わりました 林哲夫は1955年香川県生まれ。武蔵野美術大学卒。画家、著述家、装填家。2002年に本書「喫茶店の時代」で尾崎秀樹記念大衆文学研究賞受賞
この本を買った動機は、喫茶店に興味があったからです とくに名曲喫茶と言われるクラシック音楽を流す喫茶店には興味を惹かれます そんなわけで、最初に「はじめに」を読んだわけですが、すぐに後悔し始めました そこにはこう書かれていました
「『喫茶店の時代』と題した本書は、実のところ、喫茶店の本ではない。まず、これは喫茶店案内ではないし、経営の指南書でもない。それならば、喫茶店文化史ではないのか、と問われれば、結果的にそういう性格になったことを否定するつもりはないが、文化史を編むことが目的ではなかった 本書はひとつのコレクションである。子どもたちが牛乳瓶の蓋やきれいな小石を集めるのとまったく異ならない。喫茶店という文字を見つけると嬉しくなってメモしていく。喫茶店の写真や絵もできるだけ手許にため込んでいく。そういった遊びの延長にできあがったのがこの本なのである」
あちゃー と思いました。後悔先に立たず、です しかし、せっかく買ったのだから読まねば損だ、とばかりに目次に目を通してみました
「喫茶店出現まで」
「薬局からカフェへ」
「代用コーヒーの系譜」
「カフェー列伝」
「喫茶店の時代」
「音楽喫茶」
「戦後喫茶店の概観」
という文字が並んでいます どうやらこの本は、コーヒーと喫茶店に関する雑学的知識をまとめた書籍のようです この本を読んで次のようなことを初めて知りました
①日本最古の珈琲店は、明治21年(1888年)に上野・下谷に開店した「可否茶館(かひーさかん)」というのが定説である
②コーヒーの語源には2つの有力な説がある。一つはエチオピアの地名カッファからきたというもの、もう一つはアラビア語のカフワが変化したというもの カフワとは酒の別称だったが、その意味は「取り去る」であり、飲酒が食欲を取り去ることからそう呼ばれ、眠気を取り去るコーヒーも同じ発想でカフワと呼ばれるようになったと推定されている
「カフェー列伝」には面白いエピソードが書かれています 明治44年(1911年)に銀座4丁目交差点にオープンしたカフェー・ライオンは、1階がビアホール、2階がレストランと余興室、3階は個室から成っていましたが、精養軒の経営だけに洋食の評価が高く、数多くの文化人も通ったといいます 店のもう一つの大きな特徴は、女給が揃いの白いエプロンを着け、幅広のリボンを背中で結び、美人が多いことで有名だったということです その女給たちが顧客たちをどう見ていたかを相撲の番付表のようにした資料が銀座社発行「銀座」の大正4年(1925年)8月号に「カフェライオン鼻つまみ番付」として掲載されているとのことです それは次のようなものです
〇両大関
村松正俊(1日に8遍も来るから)
原 貢(紅茶1杯で6時間もいるから)
〇関脇
酒井真人(弱いくせに喧嘩をするから)
〇前頭(一部だけ紹介)
辻 潤(酔うと女に抱きつくから)
広津和郎(店のことを小説に書くから)
尾崎士郎(宇野千代に飲み代を貰ってくるから)
山田耕筰(金もないくせに特別室に入るから)
吉井 勇(エッヘッへと笑うから)
コーサク先生、お金なかったんですか? 「この道は~ いつか来た道~ 」ですか? 先生に限らず、客層は昔も今も変わらないような気がします
「喫茶店の時代」の小見出しに出てくるのは、「青木堂」「ミルクホール」「パウリスタ」「ブラジルとブラジレイロ」「不二家」「コロンバン」「モナミ」「千疋屋」「中村屋」「南天堂」「らんぼお」「ユーハイム」等です この中で分かるのは「不二家」「千疋屋」「中村屋」ぐらいで、あとは何となくどこかで聞いたことがある程度です
次に「音楽喫茶」の小見出しに目を通すと、「ミュージック・ホール」「電気蓄音機」「クラシック」「ジャズ・エイジ」「フォーク」「うたごえ」とあります
「電気蓄音機」では、エジソンが音を記録再生できる機械フォノグラムを発明したのが1877年(明治10年)で、ほぼ同じ頃、エミール・バーリナーも平円盤を用いる装置グラモフォンを開発していた、と解説しています そして、加太こうじの説を紹介します。「昭和10年前後の音楽喫茶はおおよそ3種に大別される。それはレコードの種類と女給のサービスによって分類できる ①名曲喫茶=ベートーヴェン、ショパンなどを聴かせ、女給は令嬢スタイルで必要な用件以外は客とほとんど会話を交わさない ②軽音楽喫茶=タンゴ、ワルツ、シャンソン、ジャズなどをかけ、女給は町娘スタイル。会話は比較的多かったが、客はソファに座り、女給は立っていた ③社交喫茶=特殊喫茶ともいう。カフェーが名称を変更したもの。浪花節、歌謡曲などをかけ、女給は客の横に腰かけて酒の酌をした。チップも必要だったが、10銭スタンドなどに対抗し、安価で呑める形態をとっていた いずれの喫茶店もレコードを聴かせるのが看板で、昭和5年(1930年)頃から、電気蓄音機が普及し始めるにつれて増えてきた新商法だった」。どうやら、音楽喫茶には女給(ウェイトレス)が付きものだったようですね。初めて知りました
さて、この本の中で一番身近に感じたのは「クラシック」です ここでいうクラシックとは中野にあった「クラシック」という名前の名曲喫茶のことです この本によれば、五木寛之がこの「クラシック」を初めて訪れたのは早稲田大学露文科に入学した昭和28年(1953年)のことだったといいます
「クラシック」の主人は因幡と名乗ったが、本名は熊本県生まれの洋画家・美作七朗氏。昭和5年(1930年)に高円寺に音楽喫茶「ルネッサンス」を開業、戦時中は「古典」と改名して営業を続けたが、戦災で焼失、敗戦を経て、昭和20年(1945年)9月には中野へ移り「名曲喫茶クラシック」として再開した。平成元年(1989年)に病没。享年82だった。経営は娘の良子が引き継いだが、平成17年(2005年)にその死とともに閉店。老朽化した店舗は取り壊された
私が初めて「クラシック」に行った時の衝撃は忘れられません 古色蒼然たる外観で、中に入ると煉瓦造りの室内はほの暗く、2階に上がると床がミシミシいいました 床板の隙間からは下が見え、踏み外したら落ちると思いました 壁には美作七朗氏の絵画がかかっていますが、暗くて良く見えません 飲み物はコーヒー、紅茶、ジュースだけ。驚いたのはコーヒーの受け皿に載せられていた小さなミルク・ピッチャーです。ステンレスでも陶器でもありません。何やら内側がギザギザしています よーく見ると、キューピーマヨネーズのキャップでした 「リユース、リデュース、リサイクル」・・・当時から「クラシック」は環境にやさしい喫茶店でした 名曲喫茶というと、かかっているレコードはベートーヴェンやモーツアルトを思い浮かべますが、私が訪ねた時に流れていたのはホルストの「惑星」でした その数年後に訪ねた時もなぜか「惑星」がかかっていました 同じ人が数年後に同じ曲をリクエストした・・・などというストーリーはミステリー小説にしか登場しません
私が不満に思ったのは、あまりにも有名な渋谷の名曲喫茶「ライオン」がまったく紹介されていなかったことです
「ジャズ喫茶」で興味深かったのは、昭和43年(1968年)にアメリカ海軍横須賀基地から盗んだピストルで連続射殺事件を引き起こした永山則夫(ご存知「無知の涙」)が、逮捕される直前まで新宿歌舞伎町の「ビレッジバンガード」でアルバイトをしており、その時ボーイとして同じ店で働いていたのがビートたけしだったことです たけしと永山はほとんど口もきいておらず、たけしは「暗いあんちゃん」としか思わなかったそうです もっとも別の従業員によると、たけしも「暗いあんちゃん」だったそうですが
この本は、小見出し単元ごとに詳細な「脚注」が付されていますが、全体の半分を占めるほどの分量です 私は、これをすべて読んでいったら いつまでたっても読み終わらない と思ったので、「脚注」はすっ飛ばして読み進めて行きました 内容によってはこういう読み方も仕方ないかな、と思います
コーヒーや喫茶店の歴史から、それにまつわるエピソードに至るまで、幅広く興味のある向きには強くお薦めします
昨日の読書のBGMはハンガリー出身のチェリスト、ヤーノシュ・シュタルケルのチェロ曲集(CD6枚組)でした ハイドン、シューマン、サン=サーンス、ドヴォルザークのチェロ協奏曲や、バッハの無伴奏チェロ組曲、コダーイの無伴奏チェロ・ソナタ、バッハのアリオーソ等の小品ほかが収録されています 十八番のコダーイはもちろんのこと、シューマンとサン=サーンスの協奏曲も素晴らしいです