ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『あの犬が好き』

2009-03-02 15:14:58 | わたしの読書



シャロン・クリーチ作 金原瑞人 訳

詩を書く。
それは、なんて、楽しいことなんだろう。なんて、切ないんだろう。
詩を書く。
主語が何で、述語がなんだとか、段落がどうとか、そんなこと
いちいち考えなくても書けてしまうという、素晴らしい特典つき。
「文の途中で主語が変わってるよ?」なんて、注意されたりしない。(ね、息子くん)
会話にはカッコをつけるなんてルールも、無視したければ、無視すればいい。(ね、息子くん)
いや、もしかしたら、それさえも、魅力の一つになってしまうんだから!詩は、やめられない!

この本は、そんな私の詩への想いを充分に満たしてくれるものでした。
詩なんて女の子の書くものだ!と言っていた男の子・ジャックが、先生との
やり取りを通して、どんどん、詩にハマッていく姿は、とても愉快で、温かい気
持ちにさせてくれました。

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もうすぐ、息子の卒業式。
最後の個人面談で、2年にわたり、詩を通して、自分を表現することを教えて下さった
担任の先生にお礼を言いました。
個人面談で、絶対に伝えようと思っていた感謝の言葉。こんなこと、あんなこと。
けれど、先生のお答えは、とてもショックなものでした。
「残念ながら、そう言って下さる保護者の方ばかりでは、ないのですよ。」

「先生は、詩や絵にばかり、力を入れるのですね。」という抗議が、あったとのこと。
それよりも、算数などの授業に時間を割いて欲しいと思われる親御さんが、多いとのこと。
そのため、6年生になってからは、書かせる場面を、極力少なくしたとのこと。
知らなかった・・・・・。
詩を書く機会が少なくなったのは、息子が、残念がっていたから知っていたけれど
それは、行事が忙しくて、時間がとれないだけなのかと思ってた・・・

保護者からの抗議で、教育方針を変えていくことについては、先生に対しても、色々と
思うところがあるのだけれど、こういうご時勢だからと、お気の毒に思ったり・・・・
でも、「何故?」ばかりが、心に残ったままでした。

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詩を書くときに、一番必要なのは、自分の心と向き合うこと。
自分の中の悲しみや喜び、気づき、美しいと思う気持ち、時に人を憎む気持ち。
そんなものと、正直に向き合う。それこそ、生きる力の源だと思うのです。
でも、それは、
反対する親御さんの考えと同じように、一個人の抱く、一つの考え方でしかない・・・。
保護者面談の日から、悲しい気持ちが、心の中に、ずっと残っていました。
そんな私に、この本は、エールを送ってくれているようでした。
ジャックなら、こんな風に言ってくれるだろうか?

「そういう考え方、たぶん、間違ってないと思うよ。うん。たぶんね。
だってさ、詩のおかげで、僕の犬は、いつまでも、大好きな僕の犬でいてくれるんだから!」

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私の中で、子どもの詩と言ったら、何と言ってもこの本!
この本が、もっともっと、有名になったら、
「先生、子どもに詩を書く喜びを教えて下さってありがとう!」と言ってくれる親御さんが
増えるのではないか?と、密かに思っているのだけれど・・・・・駄目かな。



『たいようのおなら』 灰谷健次郎 編  長新太 画


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8 コメント

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Unknown (ぱせり)
2009-03-03 06:18:11
この本のストレッチべり先生、こももさんの息子さんの先生を重ねていました。

個人面談での先生のお話、なんともいえない話で・・・
なんでもスピードアップ、インスタントに即結果がほしい・・・そんな時代なのでしょうか。わたしもそうではない、といえないけど・・・でもなんだかねえ・・・
教育は!なんて大きなことは言えないけど・・・
今すぐ結果が出るもの、訓練すればするほど結果に結びつくもの、そういうものも大事だと思うけど、人の心の奥に届くまでに時間がかかってさらにそれが表面に出るまでにもっともっと時間がかかるものの元を作ることも教育だってことを忘れてはいけないですよね。
算数に力を入れたら詩や絵を書くことに力を入れることができない、というのも違うだろうし・・・

子供たちがお世話になった先生が言っていた言葉で忘れられない言葉があるんです。
「静かな湖の水面に小石をぽひとつ落とすと、そこから波紋が広がる。すぐには広がらないけれど、長い長い時間をかけて湖全体に伝わっていく。・・・そんな小石のような教育をすることが理想・・・」というようなお話。忘れられない言葉なんです。

詩を書くことに対するこももさんの言葉、素敵です。ひとつひとつに頷いてしまいます。
「あの犬がすき」でジャックにおこったことってまさにそういうことですよね。あの本では一年という時間がかかったけど、もっともっと長い時間かかって現れる何かがあるかもしれないし、ないかもしれないし、自分でも気がつかないかもしれないし・・・
そういう教育のこと忘れたくないですね。そういう教育のできる教師にめぐり合えたことを幸せだった、といつか子供たちが思えたらいいのだけれど。

「一個人の抱く、一つの考え方でしかない」のでしょうけど(笑)、こももさんがご自身のお気持ち伝えられてよかったです。改まって先生に進言しなくても、こももさんのように感じている保護者もきっとたくさんいるに違いないはずだもの。
先生がんばって。
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Unknown (jasumin)
2009-03-03 09:06:21
こももさん、こももさんの言葉、先生に伝えられてよかったですね。
きっと来年度からの先生の方針に、小さくても力強い応援になったと思いますよ。
私は学習塾には興味がなく、子どもが絵の教室に通うことの方を選びました。
そしてお金はなくても、どっさり本を与えます。
小学生の頃に大事なのは、いい高校・大学に行く為の能力を養うことじゃなくて
人としての自分を理解して、他者を理解する力をつけたり
自分を伝える能力を養ったり・・・ま、一個人の考えですけど。。。
息子君ほどその恩恵を大きく受けた子は、もしかしたらいないのかもしれないけれど
子どもの変化をこももさんほど感じることのできる保護者が、いなかったのかもしれません。
先生はみんなの先生だけれども、息子君の先生であれた幸せをしみじみ感じてくださったのでは?
あ~・・・何を言いたいのか・・・
ただ、私は息子君の担任の先生、いいなぁって、うらやましいなぁって思ってました。
そんな感じです。

「たいようのおなら」私も持っています(笑)
互いに10人の親に勧めてみることにします?(少ないか・・・笑!)
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大変 (kotatsumikan)
2009-03-03 10:12:43
きっとお子さんが算数苦手なんでしょうね。抗議された親御さんは。
お子さんも親御さんもいろいろなので、先生も大変ですね。。。
でも、私もこの先生のように詩や絵を大切に教えてくれる先生っていいなぁと思います。芯の大事な部分を育ててくれている気がします。「勉強」も必要だけど、人間として生きていくためにはそれが一番じゃないと思います。
jasuminさんにならい、「たいようのおなら」を私も10人に勧めてみます
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 (naoko)
2009-03-03 12:51:16
 詩はいいよねぇ。
嬉しいことや、辛いこと
苦しいことや、懐かしいこと
いろんな感情をすくい取ってくれるもの。

 詩を心の中に持っているだけで
本当にたった一人になってしまっても
そこに友達がいる気がしないか?

 どんな内容であれ、
「先生の授業に注文をつける」親御さんがいるという事に驚きです。
レストランに行ってダシのとり方を講釈するよなものだ。

 お姉ちゃんの伝えた言葉は、
先生の心に小さな波紋を残したと私は思います。
どんなに自信をもって教育を志していても、
反応があった方が嬉しいに決まっているもの。
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ぱせりさんへ (こもも)
2009-03-03 15:59:30
ぱせりさんが教えて下さった本は、まさに、今、私に必要な本でした。
そして、「続・豚の死なない日」を読んで、ロバートの先生の詩や文学についての言葉に、涙しました。
こうやって、必要なときに、必要な本が降りてきてくれるから、読書もやめられません。
ぱせりさんの先生の言葉が、ロバートの先生の言葉と重なります。
素敵な先生ですね。

ぱせりさんのように、こんな先生に巡りあえた幸せを、じっくりかみしめたいと思います。
そして、息子がいつか、自分が、どんなに素晴らしい教育を受けたか、気づいてくれますように。
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jasuminさんへ (こもも)
2009-03-03 16:07:14
ありがとうございます。
先生に伝えて良かったんだって、今更ながら、思うことができました。
先生に言い訳させてしまったこと
(6年生になって、詩を書かせなくなってしまったことについて)
申し訳なかったなあ・・・と、そのことも、心に引っかかっていたのです。
面談に行くときは、jsuminさんを見習って、伝えたいことは、ちゃんとつたえなくちゃ!と、はりきっていたのですがね・・・(笑)
ありがとうございます!
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kotatsumikanさんへ (こもも)
2009-03-03 20:26:48
市内のどこの学校が、授業が一番進んでいて、どこが、一番遅れているか。
ものすごい情報網なんですよー。
みんな、すごいな。
でも、私みたいに全く興味のない人は、やっぱり、片一方の意見の人なんでしょうね。
そういう私も、かなりの教育ママゴンなんですけれどね(笑)

うふふ。
「たいようのおなら」知っている方が、こんなにいるんだなーって思ったら、
なんだか、気持ちが温かくなりました。
でも、絵本ブログ仲間だから?(笑)
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naokoへ (こもも)
2009-03-03 20:30:09
本当だね。
私も、下手ながら詩を書く大人の一人として、
そのことは、強く感じます。
詩って、不思議だね。

>どんなに自信を持って教育していても・・・
という言葉に、ハッとさせられました。
そうだよね。先生だって、人間だもの、不安になることあるよね。きっと。
まして、抗議を受けたとなれば、なおさらです。
先生には、これからも、素晴らしい教育を実践して欲しいな。
今回のことが、少しでも、先生の自信を後押ししすることになったなら嬉しいな。
みなさんの意見を読んで、心からそう思いました。

>レストランンに行って、ダシの取りかたに・・・

うまいね~。さすがの返しです。
今の先生は、大変だよね。
私の小学校の時の先生なんて、一年中音楽しかやらなかったのにねえ(笑)
今やったら、教育委員会ものだね!
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