『猫の建築家』 森 博嗣 ・佐久間 真人
私の実家では、猫を二匹飼っている。白に黒のブチ猫の姉妹だ。
猫は、本当に不思議な同居人だった。
餌は貰うけれど、決して媚びない。
猛然と抗議してきたかと思うと、私が、落ち込んでいるときには、どこからともなく現れて、体をこすりつけて慰めてくれたりもする。
そんな猫たちが、窓の外に拡がる空を見上げ、何やら思案している姿を思い出す。
まるで、何かを思い出しているかのように、目を細めた猫たちの、優しい二つの瞳を思い出す。
彼らは、何を考えていたのだろう?何に、想いをめぐらせていたのだろう?
本のページをめくりながら、何度も、あの愛すべき猫たちの姿を思い浮かべた。
そうか。猫って、建築家であり、哲学者なんだね。
佐野洋子さんの絵本にもあるけれど、猫って、本当に、何回も生まれ変わっているに違いない。だから、その哲学は、重く、深く、とても、人間なんて敵わないのだ。
『少し変わった子あります』のミステリー作家・森博嗣さんと、画家・佐久間真人さんの紡ぎあげた物語。
これを読んだ人は、道を歩く猫に出会ったら、きっと振り返ってしまうはずです。
空を見上げている猫のとなりに立って、一緒に見上げてしまうはずです。
そう。そこに隠されている真実を探して。