『ロールパン・チームの作戦』
カニグズバーグ(著), 松永 ふみ子 (翻訳)
そらこさんのブログで紹介されているのを見て、どうしても読みたくなった一冊。
紹介されていた本は『ベーグル・チームの作戦』(アマゾンの画像でも)。でも、私の借りてきたものは、『ロールパン・チームの作戦』。きっと、ベーグルが、日本では、ほとんど知られていなかった時代の訳なのだろう。昔から読まれてきた、名作なのでしょうね。ちょっと古い?いえいえ、物語は、ちっとも色あせていないのです。
それどころか・・・最高に面白かった!
カニズバーグの原文が良いのか、訳が素晴らしいのか、まずは、その文章の虜になってしまいました。
パリッとした清潔なワイシャツのような・・・そんな文章。一行読んだだけで、相性がピッタリだと確信しました。そして、グイグイと引っ張られるようにして、あっという間に、読了。もう少し、読んでいたいような、そんな気にさせられる文章でした。
さて、物語は、どこにでもいる、ちょっと生意気な12歳の男の子から見た、家族、友だち、女の子、社会。主人公の少年が所属する野球チームの、ある年のリーグ戦を軸にして、それが、見事に描かれています。
面白かったのは、主人公が、常に大人たちを観察しているところ。ああ、私も、そうだった。寝たふりして、親の会話を盗み聞きしたり、あれこれ分析したり。
けれど、親となった私が、一番おもしろいと感じたのは、やはり、物語に描かれた親子の関係。
何より、素敵だったのが、主人公のお母さんでした。最初は、感情的だし、言いたいことはストレートに言うし、なんて母親なんだろうと思ったのですが、これが、本当に素敵なお母さんなのです。
一番気に入ったシーンは、プレイボーイという(裸の女の子が出てくる本ですね)雑誌を巡る騒動が持ち上がったときの、彼女の毅然とした態度でした。親に隠し事をするなんてと、とがめるおばさんに、きっぱりと言い放つのです。
「・・・どんな子でも何か母親にかくすものが必要なのよ。・・・・・あの子がベッドのマットレスとスプリングの間にじぶんだけのコーナーを持ちたいなら それもいいと思うわ。」と。
胸が、チクリと痛くなりました。
幼い、幼いと思っていた我が息子だけれど、最近、「親には見られたくない」という感情が芽生えたらしいのです。それは、まだ、たかが宿題で書かされた詩だったりするのだけれど。でも、以前は、そんなことなかった。
「見せて。」「見せたくない。」「いいじゃない~」「いやだ。」
つい最近、そんなやりとりをしたばかりだったのです。これから、もっと増えていくのであろう、息子の秘密。すべてを知っていて当然だった頃は、もう、終わりなのかもしれません。
まだまだ、善悪の基準が曖昧な息子。「知らなくていい」の線を、どこで引くのか、これは、親の裁量なのだろうなあ。そう思えば思うほど、この主人公と母親のような関係が築けたら、どんなに素敵だろうと、思わずにはいられない。また、無関心のようでいて、要所要所で、的確なアドバイスしてくれる父親も、とても素敵だった。
親として、憧れの一冊。そして、自分の12歳の頃を思い出す一冊でした。
息子が読んだら、どう感じるだろう?これも、それを強く思った一冊でした。まだまだ、冒険ものや、事件が巻き起こる物語が大好きな息子。6年生になったら、勧めてみようかしら。
朝日新聞の「天声人語」を読むのが好きなのですが、以前、カニズバーグの『クローディアの秘密』が、そこで紹介されていました。ずっと読みたいと思いつつ、そのままになっていた一冊。カニズバーグの本。次は、これを読もう!!