ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『ミーナの行進』

2007-04-09 11:19:01 | わたしの読書
『ミーナの行進』 小川洋子

「出産後は、目を使っちゃ駄目だよ」
色々なところで言われた。そして、自分なりに決めた約束。「3月一杯は、読書禁止」。
そんな時に限って、図書館から、何ヶ月も前から予約していた本が、ようやく届いたりする。
なんとか3月一杯我慢して、4月1日からスタート!人気のある本は、次の予約がつまっているから延長が出来ない。かなり焦ってのスタートでした。

が、そんな心配は無用。あれよあれよという間に読了です。
読みやすいの一言につきます。いやいや、この作家さんとは、とことん波長が合うというのが、正解なのかもしれません。
ドキドキ・ワクワクで次を読むというよりは、す~っと文章が身体に入っていくカンジ。
読書中、ずっと、この心地よさを感じていました。

これは、13歳の主人公の少女が、富豪の伯母さんの家に預けられ、美しくも病弱な従妹・ミーナと暮らした一年間の物語。
誰にだってある・・・、そう、私にだってあった、美しくも切ない、少女時代。
読んでいる私も、すっかり少女に戻ってしまった。ハンサムな伯父さんにドキドキし、バレボールの選手に熱をあげ、図書館員のお兄さんに憧れを抱く。ミーナとの会話を楽しみ、台所のお手伝いを楽しみ、邸宅のシャンデリアにドキドキする。
いつの間にか、伯母さんの邸宅の住人の一人になっているような、この感覚。いいな。

コビトカバを始めとして、伯母さんの家に暮らす人々は、みな少しずつ変わっていて、孤独な人々。
小川洋子の文章は、いつも、こういう変わった者たち、ひっそりと生きている者たちへの愛情に、溢れている。「ブラフマンの埋葬」でも「博士の愛した数式」でも。
やっぱり、小川洋子の作品って好きだ。改めて実感した一冊でした。

本の好きなミーナのために、主人公が図書館で借りていく本も興味深い。どれも、受験か何かで覚えた?題名ばかり。だけど、恥ずかしながら、読んだことがない本たち。いつか、読んでみよう。
「はつ恋」ツルゲーネフ
「園遊会」キャサリン・マンフフィールド
「眠れる美女」川端康成