ファンタジアランドのアイデア

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スイッチバック遺構をゴミの資源化に活用  アイデア広場 その 608

2020-07-03 20:18:21 | 日記

 SDGs (持続可能な開発目標)と循環経済は、世界の仕組みを変える響きがあります。これらの言葉を聞くと、無条件に正しいと受け入れてしまう自分がいます。でも、SDGsの概念に至った歴史的な背景や解決すべき具体的問題の理解が不十分なのです。排出物に含まれる物質は、大気や水の中で薄まります。自然は、浄化能力を持っています。20世紀の前半までは、「毒は薄めて捨てる」という処理が普通でした。昔は生ごみを地中に埋め、燃えるものは燃やし、汚水は川に流してしまえばよかったのです。そのやり方は、自然の生態系を破壊しているという事実が指摘されるようになります。自然が持つ許容量の「限界」が、世界の共通認識となったわけです。
 私たちが自治体に委ねるゴミ処理は、循環型社会形成に向けての配慮が必要になりました。その配慮の中に、早い段階で分別することがあります。排出時に分別しておくと、回収物の質は格段に向上します。この選別をしておくと、後の処理が簡易に済むのです。分別が悪いと、それらを除くためにいくつもの処理技術が必要となります。分別は、後になるほど大変であり、処理の効率が低下します。ゴミを分別しない場合、後になるほど大変であり、完全に分けることは難しくなります。ゴミ処理は、選択肢が多岐にわたるほど複雑なシステムになってきました。人間は欲張りで、資源利用のオプションをゴミ処理の中に組み入れてしまったのです。いわゆるリサイクル製品の活用です。
 リサイクル製品には次のような難しさがあります。安定した量の確保が難しく、回収のコストがかかります。異物混入のため再資源化のコストがかかり、純度が低いので製品の質が劣ります。質が劣ると、市場の競争力が低くなります。さらには、回収物の価格変動のリスクがあります。分別収集して資源化したが、買い手がなくて放置するケースもでてくるのです。たとえば、古紙回収の場合、新聞紙は高く雑誌は安いわけです。新聞紙だけならば高く取引できますが、そこに雑誌類が混ざればすべて安い値段で取引されてしまいます。そして、現在のようにコロナショックで世界中の古紙の需要が減れば、価格変動のリスクを直接に受けることになるわけです。異物の付着によって純度が低くなり、ごみとなるケースもあります。分別収集した結果、ごみとして処理することは、現在でも起こっているのです。このようになると、分別収集という余分な手間をかけているだけに、直接ごみとして処理するより悪い結果になります。
 日本では、生ゴミを焼却します。ゴミの成分は、水、可燃分、灰分になります。ここで燃えるゴミは、可燃分で炭素と水素の割合が多いほど発生熱量が大きくなります。焼却する際には、水分と灰分を除いた方がよいことになります。水分と灰分は発熱量を低下させ、灰分は灰となって残るので、焼却にとっては邪魔者です。たとえば、水分と灰分の合計が90%だとすると、残り可燃分の発熱量は10分の1になってしまいます。水分は蒸発する際に、熱を奪うので発熱量はさらに小さくなります。家庭での分別の目的は、処理しにくい邪魔なものを除いて処理効率を高めることもあるのです。
 自治体のごみ処理施設も、資源を無駄にしないような工夫がされています。いくつかの焼却施設は、高温排ガスの熱を蒸気として回収し、発電を行っています。発電した電気は施設内で一部を使用し、残りは外部に供給しています。焼却施設は、エネルギー回収施設とみることもできます。電力を売ることで、収入も得られるのです。焼却の排熱を回収して発電することも、エネルギー生産のひとつの方法になります。ボイラーによる熱回収は、ガス冷却が主要目的になります。この燃焼ガス冷却設備と呼ばれていた高温の蒸気によって、温水プールを運営し、保養施設や地域暖房への熱供給も可能になっています。最近では発電の効率も向上し、未利用エネルギーの熱回収技術として位置づけられるようになっています。
 ごみ処理施設は環境影響が生じることのないように建設され、運転されています。それでも、最終的には、灰分を排出ことになります。この灰分を埋めるところが、埋立地になります。埋立地の正式名称は「最終処分場」であり、通常は処分場と呼びます。現在の住民の方は、この焼却施設の建設や処分場の建設に反対する方が多いのです。焼却の知識がないままに焼却施設の建設に反対されるのでは、ゴミ処理施設は建てられません。有害物質を出さないために、焼却施設は工夫されてきました。最適汚染水準という考え方があります。汚染のリスクを削滅するのに必要な追加的費用と、追加的な便益が同じになる水準を最適とする考え方です。焼却施設に反対する場合、最適汚染水準を知ることが常識になります。ごみの種類と処理技術の適合性とともに、様々な処理技術の特性を知った上で、反対意見を述べてほしいものです。もちろん、その代替案を出すことは、常識でしょう。様々な処理技術の特性を知ることで、ゴミ処理への理解が高まります。埋立地は広い面積を必要とするのですが、後に広い跡地を利用できる利点が生まれます。このような利点を、30年後とか50年後に子孫に供与できる仕組みが分かれば、やみくもに反対だけが合理的な選択とは言えないかもしれません。ひとつの意見にこだわるのではなく、多くの意見の中から適したものを選ぶ知恵も必要です。
 最後に、提案です。1980年代に先進的なゴミの資源化を目的として、「スターダスト計画」というものがありました。ごみを機械的に選別し、生ごみ、紙類に分け、堆肥化、パルプ化、ガス化を行おうとした計画です。ガラスびん、ペットボトル、アルミ缶などなどをー緒に集めることを混合収集といいます。混合ごみを選別して可燃物を固形燃料化し、生ごみの堆肥化しようとして失敗したのです。スターダスト計画はが、選別がうまくいかなかったのです。そこで、この試みに挑戦をしたくなったわけです。水分を少なくし、資源のリサイクルを効率的にする仕組みを考えてみました。ヒントになるものは、クリーンかわさき号、イエバエ、亜鉛製錬所、スイッチバックになります。
 川崎市の「クリーンかわさき号」は、コンテナ列車です。このコンテナには、生活廃棄物や家庭から出されるごみが積まれて、焼却施設や埋立地へと運ばれています。川崎市は南北に細長く、なおかつごみ処理施設の多くが南部に偏って立地しています。塵芥収集車の移動距離が長くなり、南北に貫く幹線道路は慢性的に交通渋滞が発生していました。生活廃棄物の円滑な輸送と環境への配慮を目的として誕生したのが、クリーンかわさき号です。家庭から出るごみを運ぶ日本初の貨物列車として、1995年から運転を始めました。「クリーンかわさき号」は、年間に12万トンの生活廃棄物を運びます。川崎市から排出されたゴミの総量は62万トンですから、20%のゴミが貨物列車で輸送されたことになります。
 もう一つは、生活廃棄物の野菜などから出る水分の処理です。水分を減らせば、燃焼効率が上がり、エネルギーの節約になります。ひいては、温暖化の抑止に貢献します。そのヒントが、イエバエです。福岡市で2016年創業したムスカは、ハエを使って飼料や肥料を作っています。畜産農家から出る家畜の糞や食品工場から出る残りカスを利用して、飼料や肥料を作るのです。有機廃棄物1トンに対して、300gのイエバエの卵で、飼料や肥料を生産することができます。ムスカのイエバエを活用すれば、野菜のかすなどを1週間程度で、においや水分を処理し、飼料や肥料できるのです。
 この2つから、生活廃棄物に含まれる野菜などをイエバエに処理してもらう発想が出てきます。年間12万トンは、1日換算する33トンになります。イエバエの幼虫が300gで1トンの廃棄物を処理します。33トンを処理するためには、10kgの幼虫で間に合うことになります。コンテナの中を、イエバエの幼虫の活動しやすい環境にすれば、水分の減量問題が解決することになります。もう一つの課題は、1週間コンテナに入れておく時間的課題になります。
 群馬県安中市に 亜鉛製錬所が設立されたのは 昭和12年です。この工場は、丘陵地に建てられて、上で原料を加工し徐々に下に行くにしたがって製品ができていくというものでした。勾配を利用して、ゆっくり製品化をしたものです。これを、スイッチバックを行うような鉄道路線の勾配を使ってやってみようという発想です。福島県の福島駅から奥羽本線で最も高い峠駅は、626mの標高にあります。ここから秘境駅だった赤岩駅の標高は300mになります。峠駅から赤岩駅の標高差が約300m、その距離が10㎞です。この勾配と距離を利用して、家庭の廃棄物の処理と資源の回収を行う仕組みを作ります。峠駅にコンテナに積んだゴミを運びます。そこからコンテナを赤岩駅に2週間かけて、ゆっくり下降させるわけです。ハエの幼虫を活動させるためには、密封状態を保たなければなりません。この地域には、使われないトンネルが数多くあります。そこをトロッコが走るようにしておきます。トンネル内で、イエバエの幼虫が水分を取り、肥料と飼料を作ります。水分の無くなったプラスチックやアルミ缶などのリサイクル品は、分別していきます。赤岩駅の付近にコンテナ着いた時には、ごみを機械的に選別し、生ごみ、紙類に分け、堆肥化、パルプ化、ガス化がすべて終了しているという仕組みです。