ファンタジアランドのアイデア

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学校におけるいじめ対策  アイデア広場 その609

2020-07-04 18:38:01 | 日記


はじめに
 文部科学省の調査で2017年度に学校が把握したいじめが、過去最多の41万件を超えたと報告しています。内訳は、小学校の認知件数は31.7万件、中学校は8万件、高校は1.5万件でした。2018年は、さらに悪い結果となっています。全国の小中高校などで2018年度に認知されたいじめは、過去最多の54.4万件でした。いじめの認知件数は、前年度比31.3%(13万件)増になりました。増加幅は中学21.5%、高校19.7%に対し、小学校が34.3%と特に大きく、11万件増えているのです。
 今回の調査では、小学校では8年連続で増えています。中学や高校は、一時減少傾向にあったのですが、今回の調査では、増加傾向になっています。マスコミがいじめを大きく取り上げる傾向が強くなったために、軽微な事案も報告され、いじめの認知数は急増しているともいわれています。いじめの認知に関しては、「子どもが心身の苦痛を感じる状態を『いじめ』と捉えるという認識が共有されることになった」ことが、認知件数の増加を招いているようです。けんかやふざけ合いでも、生徒が被害を感じている場合には、いじめになります。学校現場が積極的にいじめの把握を促した結果、過去最高の件数になった面もあるようです。ある面で、実態を反映しており、好ましい傾向といえます。

1、いじめの実態
 小学校の3年生ぐらいになると、いじめられる子といじめる子がでてきます。小学生の場合、比較的いじめの把握が容易です。低学年のいじめの把握が容易なことは、その認知件数の多さからも分かります。中学校や高校になると難しくなります。特に、集団内のいじめは、誰がいじめたのか、いじめた事実があったのかなど、認定が困難な場合が出てきます。近年は、SNSなどインターネット上の閉鎖空間でのいじめも目立つようになりました。閉鎖空間でのいじめに対して、学校や家族が把握できない事例も増えています。
 小学校3年から4年にかけて、子ども達は仲間集団を作り、集団を操作していく能力が育ってきます。子どもに集団を操作していく能力ができてくると、いじめられっ子を作る能力も出てきます。いじめには、排除するいじめと拘束するいじめがあります。仲良し集団が、孤立した子どもをいじめる光景もその一つです。また、仲良し集団の中で特定の子どもをいじめる光景もあります。初期のいじめは、モノを取ったり、隠したりすることが多くなります。次に、悪口、からかい、仲間はずれ、脅しなどにエスカレートしていくケースが増えてきます。
 いじめの有無の把握には、いくつかの見方があります。たとえば、グループのメンバーであるA君、B君、C君、D君が笑顔で学校生活し、成績が向上してる場合、いじめがないと判断できます。グループに所属しない孤立した子どもに関しては、成績も向上し、マイペースで学校生活をしている場合も、いじめがないと考えても良いでしょう。一方、グループのメンバーA君、B君、C君、D君の中で、C君だけが急に成績が低下した場合や以前と比較して沈んだ状態になったときには、注意が必要になります。
 いじめの状況は、一様でないことにも理解が必要になります。多くのいじめについて最終的にいえることは、成績の推移からいじめの有無が推察できるということです。仲間集団の成績が向上してる場合は、いじめがないと判断できます。仲間の一人だけの成績が低下している場合、その仲間集団に何かあることが推察できます。そこに、指導や支援の手をさしのべる教師がいることを希望します。
 いじめ相談を行うためには、いじめの事実を裏付ける確かな物証をそろえておく必要があります。いじめられている子どもにとって、学校は勉強するどころではなくなるのです。勉強する環境ではなく、当然成績は落ちてきます。食欲がなくなり、不眠が続くようになれば、朝なかなか起きてこなくなることもでてきます。いじめがエスカレートしていけば、不登校を選択する子どもが出てくることになります。


2、いじめの対処法
 学級運営の規則が厳しい(管理型学級)と、子どもたちはしばしば教師に反感を持ち反抗するようになります。もっとも、管理型学級だけでなく、満足型学級やなれ合い型学級のどちらでもいじめは起こるものです。日本の学校には、学習指導の他にも学級運営、生徒指導、保護者対応、行事指導、部活動指導などのノウハウの蓄積があります。学習には目標があり、評価があります。その学習のあらゆる段階に、評価があります。「評価」に着目してみると、診断的評価、形成的評価、総括的評価の3種類があるのです。
 まず、学習指導に先立っておこなわれる診断的評価があります。次に、実際の指導の過程でおこなわれる形成的評価が行われます。次に、指導の区切りでおこなわれる総括的評価になります。授業などの学習には、この3種類の評価を使って、学力の向上を確認していくわけです。この手法は、生徒指導、特にいじめにも応用できます。診断的評価で、クラスの傾向を把握します。形成的評価で、弱者に対するホスピタリティの向上などを把握します。総括的評価で、抑制力の向上や多様性の育成の成果、リーダーの成長などを把握することになります。いじめの指導にも目標と評価の関係から、あらかじめ両者を一体としたデザインを設計することになります。
 ベテランの小学校の先生は、子ども達の仲間関係を熟知しています。いわゆる子ども達のソシオメトリーを利用しながら、学習効果を上げることを試みているわけです。教室には、物事をすぐに理解するA君となかなか理解できないB君がいるとします。このA君とB君が仲良ければ、席交換の時にお互いに話あえる距離に席を決めます。分からないままにすることは、学習の遅れに繋がります。一方、仲が良すぎて、授業中お話ばかりしたり、脱線を繰り替えるような場合、席を離します。

3、新しい形態のいじめ
 今回の文科省の調査では、ネットを介したいじめの認知割合が3%と報告されています。近年のスマホや会員制交流サイトの普及を考慮すると、この数字は氷山の一角という見方が出てきます。学校だけに対応を任せず、家庭や地域社会も連携して、対策をたてることになるでしょう。協力する組織や会社もあります。たとえば、写真共有サイト「インスタグラム」は、いじめと捉えられるコメントを自動で非表示にする機能を導入しています。いじめが、社会に拡散しない仕組みを設けているわけです。
 中学生は8万人がいじめにあったとされています。ここの調査は、意外と難しい問題があります。多くの中学生は、スマホを持つようになります。ネットの閉鎖空間では、目に見えないいじめが始まります。当然のごとく、閉鎖空間でのいじめに対してスマホを持たせるべきではないという意見があります。でも、これからの社会は、スマホなどの利用は必須のものになります。これを無しに、社会で活躍していくことはできないでしょう。むしろ、スマホを所持し、その中で解決策を構築していくことが求められます。
 ネットによるいじめは、証拠が残り、事実認定を得やすいという利点もあります。ネットによるいじめは証拠も残り、訴えることができる材料になります。泣き寝入りをする必要のないのが、ネットによるいじめということになります。記録を取るだけで、いじめの抑止になることもあります。学校も子ども達のスマホから、友達関係の情報を収集分析できるようになれば面白いかもしれません。単に生活指導に役立てるだけでなく、学習の向上に使うこともできるようになります。
 スマホには、いじめを解決するツールが備わっているのです。スマホを持つ中学生からは、位置情報が把握できます。どんな仲間と付き合っているかを把握できるのです。メールのやり取りが頻繁であれば、その活動時間帯を把握できます。仲間が深夜に集まることを繰り返していれば、望ましくない行動を取っていると推定されます。深夜にメールのやり取りをしていれば、やはり望ましくないと推定されます。これに授業の成就度や成績の低下が重なれば、望ましくないパターンと判断されます。

4、いじめ問題の複雑さ
 不自然さをからかったりすることへの抵抗がなくなると、リスクは高まります。軽い「からかい」を繰り返すうちに、実行者は次第に感覚が麻癒していきます。繰り返すうちに、からかいがイジメにエスカレートしていくケースも多いのです。さらに、からかいを行っている子ども達は仲間を作り、仲間の結束を高めていく傾向があります。「イジメ」をする仲間は結束していくけど、「イジメ」を受けている子供は孤立をますます深めていく流れができるのです。
 いじめは、人格をゆがめる行為です。それにともなって、将来の可能性を破壊する行為でもあります。いじめにあっている子どもが、成績で上昇することはありません。イジメは、何の落ち度もない人間に生きる希望を失わせ、ときに死にさえ至らしめる行為でもあります。いじめを受けてまで、学校に行く必要はありません。この考え方は、一定の家庭に浸透しています。要は、高校や大学に入れる学力をつけておけば良いわけです。このように割り切れば、学習塾は福音の学び舎になります。学習塾でも、学力の向上はもちろん良好な仲間関係の作り方などのノウハウを蓄積しておくことになります。
 あるアメリカの少年のお話です。母親は通学用にコーデュロイのズボンを用意し、けっしてジーンズははかせませんでした。普通のジーンズをはかなかったそれだけのことで、少年は、学校でのけ者にされたのです。異質なものは奇妙だと見なされ、盛り上げる材料になってしまいました。異質なものは、サーカスのショーを盛り上げる材料と見なされたわけです。
 服装の違いや方言、そして異質な言動は、イジメのターゲットに誰でもなる可能性があります。グループや組織の標準と少しでも異なるところがあると、イジメが起こりやすくなるわけです。からかわれている子どもは、孤独な立場で悲惨なイジメを受ける状態に追いやられます。人間を分類する社会の中で、自分をその分類に合わせようともがく子どもや合わせられず苦しむ子供が存在するのです。

さいごに
 2017年には41万人がいじめられたという実態がありました。2018年には、54万人にも達しています。中には、自殺にまで追い込まれた子どももいたのです。文部科学省や厚生労働省は、この問題を放置することなく、介入する姿勢を示しています。各市町村の相談事業に費用を助成し、市民団体と共同して子どもの相談に乗る体制を整えています。相談事業を行っている機関には、いじめに関する情報が蓄積されつつあります。そして、この情報をもとに、より良いアドバイスが相談する子ども達に提供されるようになってきました。
 学校や家族に相談できない子ども達は、民間や行政の用意した相談窓口を利用することが増えています。今の子どもは、あまり電話を使わないようです。子どものSOSの発信は、電話からSNSなどに移りつつあると言います。いじめに苦しむ子どもは、相談窓口で無料対話アプリLINEを活用して訴えているのです。LINEならちょっとした愚痴でも、気軽に相談してもらえるという安心感があるようです。相談事例が増えるにつれて、相談員同士で事例を共有し、ノウハウを蓄積している組織もあるようです。
 学校と相談事業が協力できれば、より良いアドバイスが提供できるかもしれません。たとえば、学校は、スマホの携帯を認めます。そのとき、保護者に子ども達の位置情報を、学校が把握できることを認めてらうのです。学校は、相談機関に位置情報を通したソシオメトリーを提供します。いじめにあった子どもが相談機関に相談する場合、子どもを取り巻く状況を正確でなくともある程度把握していれば、より有意義な相談情報を子ども達に提供できるでしょう。
 今の社会では、いじめはあるものと覚悟しておく必要はあります。パワハラやセクハラが新聞紙上に多数出てくる昨今、それに備えることも学校の役目になりつつあるようです。子ども達に対していじめの具体的事例を示して、いじめを回避する授業を行うことが必要です。授業を受けて、いじめを回避する能力を高めておくことが求められます。その学習が、社会に出ても役に立つかもしれません。