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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」209

2020年03月24日 | 物語「約束の夜」
朝、早く起きて
オトミの母親は、畑に向かう。

遅れて、家族が到着する。

それまでに、道具の準備を、すませる。

彼女はあたりを見る。
まだ、ほかの畑に、人の姿はない。
いつもより、早すぎたのかもしれない。

「やあ」

突然の声。
彼女は、驚いて横を見る。

「今から仕事?」
「???」
「あれ? 何か驚いてる?」

口をパクパクさせて、彼女は、その姿を見る。

近くに、誰もいないと思っていたのだ。
人が突然現れて、驚く。

「朝は、苦手でね」

その男が話し出す。

「今日は頑張って起きてみたんだけど」
「・・・あ、あなた。西一族??」
「そうだよ」
「え? こんな時間に??」
「だから、頑張って早起きしたんだって」
「まだ、お店も何も開いてないけど・・・」
「知ってる」

男は、彼女に近付く。

「ごめんなさい。もうすぐ家族が来るから」
「大丈夫」

男は、さらに彼女に近付く。

「お茶でも出すわ」

一歩離れて、彼女は声を出す。

荷物から、お茶のセットを出し、お湯を沸かす。

その後ろ姿を、彼は見る。

「慣れているんだね」
「ええ。いつも、家族が来る前にひとりでお茶を・・・」

やがて、お湯が沸くと
彼女はお茶を煎れる。

その手は震えている。

胸騒ぎ。

何だろう。

この男は。

当たり障りなく

早く、ここから去ってほしい。
早く、自分の家族が来てくれないだろうか。

彼女はお茶を差し出す。

「ありがとう」
「・・・・・・」
「いい香りだ」
「そう・・・」
「好きな味」
「・・・・・・」

一口飲んで、彼は湯飲みを置く。

そして

その

伸ばした手が、

「姉ちゃんお待たせー!!」

はっとして、
彼女は顔をあげる。

両親より少し先に、弟と妹たちが駆けてくる。

「お茶ちょーだい!」
「こら、今、家で飲んできたでしょ」

彼女は横を見る。

あの男は、いない。

「どうしたの?」

母親は、首を傾げる。

「いえ、何でも・・・」

何も伝えられないまま、一日がはじまる。







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