TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」210

2020年03月27日 | 物語「約束の夜」

日が傾く。

へとへとになって、畑仕事が終わる。

食事の準備をしに、母親はひとりで先に家へと帰った。
父親は、居眠りをする末の子を抱き、歩き出す、
弟妹たちは、互いに手を引き歩く。

彼女は、ひとり

道具を片付ける。

疲れている。

いつものこと。

そして

帰ったら、弟妹たちをお風呂に入れなければならない。

「はあ・・・」

彼女はため息をつく。
空を見る。
夕焼け。
あたりを見る。
自分の家の、広い畑。

彼女は坐りこむ。

こんなことをしている場合ではない。
急がないと、・・・叱られるかも。

けれども、身体が疲れている。

彼女は目を閉じる。

風。
草木が揺れる音。

何かの、気配。

「・・・・・・!?」

彼女は目を開く。

そこに

昨日の男。

「・・・・・・」
「昨日はお茶をありがとう」
「・・・・・・」

彼女は答えない。
彼は構わず、続ける。

「ひとり?」
「・・・・・・」
「家族はもう来ないよね」
「・・・・・・」
「来て」

「来て?」

彼女は立ち上がる。

「私、帰らないと」
「いいから」
「でも、」
「急いでるんだ」
「私は、」
「早く」

彼女は、自身の手を見る。

その手は握られている。

「誰なの?」

彼女は口を開く。

「いったい、何をしたいの?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

彼女は、手を振り払うことが出来ない。

「血が、」
「え?」

「血がほしい」

「・・・血?」

「強力な魔法が使える南一族の、ね」





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