オトミの母は、その日も畑で作業をしていた。
南一族の村は、一年中、畑仕事で忙しい。
オトミの母の家も、壮大な畑を有していて、総出で働く。
「ちょっとお茶にしましょうか」
「この調子じゃ間に合わないぞ!」
「でもね、お父さん、子どもたちも疲れているわ」
「・・・仕方ないなぁ」
長女であるオトミの母は、お茶の準備をする。
「父さん母さん、準備出来ました」
「じゃあ、休憩しましょう」
作業の終わりきらない畑を前に、家族は坐る。
弟、妹たちは、茶菓子を食べ、何やら楽しそうに会話をする。
「お前が男だったらなぁ」
父親がポツリと呟く。
「容量もいいし、うちの畑を任せられるんだけど」
オトミの母は、父親を見る。
南一族は
男が家を継ぐと云う風習は、特にない。
女が家を継ぎ、畑を継いでもいいのだ、
けれども、この父親は違う。
どこかの他一族のように、
家は男、長男が継ぐものだと思っている。
実際、
父親の家系はなぜだか、そうなのだ。
「お前に託すと、この畑は別の家のものになる」
婿の家にとられてしまう、と。
母親も横でその話を聞いている。
が、何も云わない。
「うちの畑は、あの子に託すとしよう」
父親は、弟たちの名を云う。
立ち上がる。
休憩は、終わりだ。
「お前たち、はじめるぞ!」
はぁい、と、弟、妹たちが、動く。
まだまだ遊びたい年頃。
この忙しい時期は、畑仕事に専念するしかない。
オトミの母親は、弟、妹たちを不憫に思う。
NEXT
南一族の村は、一年中、畑仕事で忙しい。
オトミの母の家も、壮大な畑を有していて、総出で働く。
「ちょっとお茶にしましょうか」
「この調子じゃ間に合わないぞ!」
「でもね、お父さん、子どもたちも疲れているわ」
「・・・仕方ないなぁ」
長女であるオトミの母は、お茶の準備をする。
「父さん母さん、準備出来ました」
「じゃあ、休憩しましょう」
作業の終わりきらない畑を前に、家族は坐る。
弟、妹たちは、茶菓子を食べ、何やら楽しそうに会話をする。
「お前が男だったらなぁ」
父親がポツリと呟く。
「容量もいいし、うちの畑を任せられるんだけど」
オトミの母は、父親を見る。
南一族は
男が家を継ぐと云う風習は、特にない。
女が家を継ぎ、畑を継いでもいいのだ、
けれども、この父親は違う。
どこかの他一族のように、
家は男、長男が継ぐものだと思っている。
実際、
父親の家系はなぜだか、そうなのだ。
「お前に託すと、この畑は別の家のものになる」
婿の家にとられてしまう、と。
母親も横でその話を聞いている。
が、何も云わない。
「うちの畑は、あの子に託すとしよう」
父親は、弟たちの名を云う。
立ち上がる。
休憩は、終わりだ。
「お前たち、はじめるぞ!」
はぁい、と、弟、妹たちが、動く。
まだまだ遊びたい年頃。
この忙しい時期は、畑仕事に専念するしかない。
オトミの母親は、弟、妹たちを不憫に思う。
NEXT