TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」58

2014年03月14日 | 物語「水辺ノ夢」

梨子の言葉に、麻樹は立ち止まる。

辺りを見る。

東一族の村の入り口には、彼らしかいない。

梨子が云う。
「杏子姉さんが、・・・心配なのですね?」
麻樹は、答えない。
「その気持ちは、わかります。でも、どうか、水辺には近づかないでください」
麻樹は、梨子を見る。
「罰する?」
「いいえ」
梨子は、首を振る。
「あなたを、罰することは出来ません」
「そう」
「ただ、あなたを危険な目にあわせたくありません」

「・・・杏子は」

「え?」

「杏子は、危険な目に、あっているのだろうか」

「・・・・・・」

梨子は、うつむく。

「私も、杏子姉さんが、心配です」

麻樹は、何も云わない。

「そして、杏子姉さんを心配して動こうとする、みなさんのことも心配です」
云って、梨子は、麻樹を見る。

麻樹は、目をそらし、歩き出す。

「待って!」

麻樹は立ち止まらない。

梨子は、慌てて、麻樹の後を追う。

「待ってください!」

梨子は、麻樹を呼ぶ。

「これを」

梨子は、麻樹に近付き
その手に、取り出したものを握らせる。

「梨子・・・?」

麻樹は、それを見る。

そこに、東一族の装飾品、が。
中でも、結婚の相手に贈る、特別なもの。

「大兄様が、・・・光院が、杏子姉さんに渡そうとしていたものです」
梨子が云う。
「杏子姉さんに渡せなかったので・・・」

梨子は、麻樹を見る。

「代わりに、杏子姉さんのお父様に」


NEXT 59

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。