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乞食の姿をした神様が三匹のけだものに向っておっしゃられた
「どうかこのかわいそうな乞食を助けてくだされ。
わしは幾日も幾日も何にも食べんので、今にも死にそうにくるしい。
噂に聞けば、お前さんたちは人間にも優って
情け深く、親切じゃということだ。
どうかこの哀れな私を救ってくだされ…!」
「それは気のどくなことだ!」
とばかりに、猿は林へ飛んで行っていろいろな木の実を
たくさん集めて来てその乞食に食べさせた。
狐はまた川原へ行って魚をたくさん獲って来て食べさせた。
乞食は「おかげで命が助かりました。」
といって喜んだのじゃ。
ところが兎だけはさっきからただもうあちこち飛び回っているだけで
何にもしてくれない。
「うさぎさん、お前さんも猿さんや狐さんと同じように
親切だときいていました。
どうかお前さんもこの哀れな私に何か恵んでくだされぬか。たのみます。」
「はい、わたしだとて同じようにお前さんが気の毒でなりません。
けれど、わたしには猿さんのような働きもできなければ、
狐さんのような知恵もありません。
私はこのとおり何も出来ぬ役立たずのものでござりますけれど、
お前さんがそんなにいわっしゃるなら……。」
「猿よどうかお前は木の枯れ枝を取って来て山のように積み上げてくれ。」
「狐よどうかお前は猿のつんだその枯れ枝の山に火をつけてくれ。」
「気の毒な旅のおじいさん。私はバカで働きがなくて、何にもしてあげられません。
どうかせめてこのわたしの身体の焼けるのを待って、
この私の肉を食べてください。」
こうして兎は我と我が身を火の中へ投げ入れて、焼かれて死んだのじゃ
「ああ、かわいそうな、しかし、えらいウサギさんじゃ。
いかになんでも、わしはこのような立派な心をもった
お方の肉なんか食べられようか…。」
こうおっしゃって、泣く泣くその焼け爛れた兎の死がいを抱き上げ
そのまま元の神様のお姿におなりになって、
天に昇っておいでになった。
そうしてその兎の死がいを月の御殿におまつりになされた。
それがその「月の兎」という話しのもとじゃ…。
良寛さま 相馬 御風
道は一本
単純で
まっ直ぐがいい
何かを欲しがると
欲しがったところが
曲がる
道は一本
まっすぐがいい
みつを
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乞食の姿をした神様が三匹のけだものに向っておっしゃられた
「どうかこのかわいそうな乞食を助けてくだされ。
わしは幾日も幾日も何にも食べんので、今にも死にそうにくるしい。
噂に聞けば、お前さんたちは人間にも優って
情け深く、親切じゃということだ。
どうかこの哀れな私を救ってくだされ…!」
「それは気のどくなことだ!」
とばかりに、猿は林へ飛んで行っていろいろな木の実を
たくさん集めて来てその乞食に食べさせた。
狐はまた川原へ行って魚をたくさん獲って来て食べさせた。
乞食は「おかげで命が助かりました。」
といって喜んだのじゃ。
ところが兎だけはさっきからただもうあちこち飛び回っているだけで
何にもしてくれない。
「うさぎさん、お前さんも猿さんや狐さんと同じように
親切だときいていました。
どうかお前さんもこの哀れな私に何か恵んでくだされぬか。たのみます。」
「はい、わたしだとて同じようにお前さんが気の毒でなりません。
けれど、わたしには猿さんのような働きもできなければ、
狐さんのような知恵もありません。
私はこのとおり何も出来ぬ役立たずのものでござりますけれど、
お前さんがそんなにいわっしゃるなら……。」
「猿よどうかお前は木の枯れ枝を取って来て山のように積み上げてくれ。」
「狐よどうかお前は猿のつんだその枯れ枝の山に火をつけてくれ。」
「気の毒な旅のおじいさん。私はバカで働きがなくて、何にもしてあげられません。
どうかせめてこのわたしの身体の焼けるのを待って、
この私の肉を食べてください。」
こうして兎は我と我が身を火の中へ投げ入れて、焼かれて死んだのじゃ
「ああ、かわいそうな、しかし、えらいウサギさんじゃ。
いかになんでも、わしはこのような立派な心をもった
お方の肉なんか食べられようか…。」
こうおっしゃって、泣く泣くその焼け爛れた兎の死がいを抱き上げ
そのまま元の神様のお姿におなりになって、
天に昇っておいでになった。
そうしてその兎の死がいを月の御殿におまつりになされた。
それがその「月の兎」という話しのもとじゃ…。
良寛さま 相馬 御風
道は一本
単純で
まっ直ぐがいい
何かを欲しがると
欲しがったところが
曲がる
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