モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

その64:マリー・アントワネットのプラントハンター:アンドレ・ミッショー⑤Final

2008-10-18 09:15:09 | マリーアントワネットのプラントハンター、ミッショー

ミッショーがアメリカに持って来た植物の謎解き

サルスベリ(百日紅)を書いていて、原産地の中国からこの植物を北米チャールストンに持ち出した人間がいた。

この時はフランス人が持ち出したので不思議だな~と感じていたが、
この人物が、ミッショーだった。

ちなみにサルスベリでの原稿では、
サルスベリは今では世界に普及している植物となったが、西欧への普及は、1790年の頃であり、フランスの植物学者アンドレ・ミッショー(Andre Michaux)が、中国・韓国原産のサルスベリを、米国サウスカロライナのチャールストンに持ち出したという。」

前号(その63)では、ミッショの北米での活動で1790年の記録がなく
何をしていたのだろうという疑問があったが、
もしかしたら中国に来ていたのかもわからない。

1789年にフランス革命が勃発し、その後の身の振り方に悩んだに違いない。
ミッショーは、チャールストンの富豪で大農場を所有するドレイトン家、ミドルトン家と親交があり、
1786年にミドルトン家を訪問した時にアメリカ初の“つばき”を手土産として持って行った。

ドレイトンホール、ミドルトンプレイスは、チャールストンの観光名所となるほどの景観を有するが、
ミッショーの1791年からのプラントハンティングの活動資金は、
この2つのファミリーから出資されたのではないかと思われる。

“つばき”のような新しい東洋の木・植物への投資があった。と考えるのが合理的な推測になりそうだ。

ミッショーは、わかっているだけでも次のような中国原産の植物をチャールストンに持ってきている。
ツバキ、サルスベリ、ミモザ又はネムノキ、お茶植物、サザンカ、イチョウなどである。
いつ、どのようにしてもってきたのか確認が取れていないが、二つしか考えられない。

① 1786年にチャールストンに大農園を確保した時に、フランスから持ってきた苗をニューヨク郊外の庭園から移動した。この仮説はミドルトン家の記録に1786年にミッショーが“ツバキ”を持ってきたと記載されている

② 1790年頃に中国に行って持って来た。或いは中国の苗があるヨーロッパから持ってきた。この説を裏付けるのが“サルスベリ”のケースでありまた1790年のアメリカでの活動記録がないことにある

アメリカの植物探索に来ていたミッショーが中国原産の植物・樹木をアメリカに導入すること自体不可思議だ。

もしあるとすれば、ミッショーを送り出したフランスの当事者トーイン(Andre Thouin 1746-1824)
の研究テーマが、世界各地の植物を移植して育てる最適な技術の開発研究であり、
このためにアメリカに植物・樹木を持ち込む可能性がある。
しかしこの場合は、中国原産の植物である必要がなくヨーロッパの植物でもよいはずだ。
中国原産の樹木を最初からアメリカに持ち込むこと自体が考えにくい。

そうすると、仮説の②が浮かびあがってくる。
中国まで行って樹木を持って帰るほどの時間はないはずだが、スポンサーを獲得せざるを得ない。
と考えると、ミッショーの相当の必死さが伝わってくる。
ヨーロッパ経由で、喜望峰、中国というコースで船旅をしたのだろうか?

もしこれが史実だとすると、ミッショーは相当な探検と冒険をした人物で、
花卉植物のマッソンに匹敵する樹木でのプラントハンターだといえる。


ミッショがアメリカに持って来た樹木一覧

1.サルスベリ(1790年にチャールストンに導入)
ここを参照
・ミソハギ科サルスベリ属の落葉中高木。耐寒性は強くない。
・学名は、Lagerstroemia indica。英名はCrape myrtleで、ミルテのような花弁がクレープのように縮れているのでつけられた。
・ミルテの和名はギンバイカ(銀梅花)
・和名がサルスベリ、別名百日紅(ヒャクジツコウ)
・原産地は、中国南部で熱帯、亜熱帯に分布する。
・開花期は8~10月で、紅、ピンク、白などの花が咲く。花弁は縮れており百日咲いているので百日紅と名付けられたが、実際は次から次へと咲いている。
・樹高4~5メートルで、今年伸びた枝に花がつく。
・剪定にコツがあるようで、太い枝を剪定し、細い枝を残すと自然の形状が維持できるようだ。この逆はこぶが多くなるという。

2.ツバキ(1786年チャールストンに導入)
・原産地は中国、朝鮮、本州以南の日本、台湾
・学名は、Camellia japonica L.。和名は、ヤブツバキ、別名ヤマツバキ。
・暖かい沿海地に生息し、樹高は10mを超える
・葉は長卯形で厚く硬い。濃い緑色で光沢がある。
・春先に枝先に1個ずつ赤い花が咲く。

3.ミモザ
・オーストラリア原産
・学名 Acacia decurrense var.deaibata。和名フサアカシア、別名ミモザ。
・樹高10m以上になり葉はネムの葉のように対になり小さな葉が30対ほどある。
・春先に濃い黄色の花を多数つけ、全体が黄色でかすむ。

オーストラリア原産ではなく、台湾・フィリピン原産の「タイワンアカシア」ではないだろうかと思う。
「タイワンアカシア」別名ソウシジュ(相思樹) 学名Acacia confusa Merr.

4.ネムノキ
・原産地は、南アジアおよび日本
・学名はAlbizia julibrissin Durazz.
・樹高は10mまでになり、梅雨時の代表的な花木である。
・初夏に枝先に頭状花序をつけ、赤い色をした3~4cmの雄しべの花糸が美しい。
・葉は薄暗くなると垂れ下がって閉じ、眠ったように見える。

5.お茶植物、tea-olive、チャノキ(チャ)
・原産地は中国南西部で広く分布
・学名は、Camellia sinensis (L.)O.Kuntze
・常緑低木で、葉は楕円形で肉厚。
・花は10~11月頃に下向きにうつむく感じで白い花が咲く
・日本には、800年代の初期に唐から最澄が持ち帰ったとする説がある。また別の説では、1191年に僧栄西が中国から持ち帰ったという説もある。
原文では、「tea-olive」と記載されているが、これは、シマヒイラギをさす。

6.山茶花、sasanqua
・原産地は本州以南の日本
・学名は、Camellia sasanqua Thunb.でツンベルクが命名
・山茶は中国ではツバキのことを言う。

7.イチョウ
・原産地中国といわれるが中国での自生地は確認されていない。
・学名は、Ginkgo biloba Linn.
・古くに渡来し神社仏閣に植えられる。
・雌雄別株
・花期は4月で花の色は、雄花は淡い黄色、雌花は緑色。これは気づかなかった。

(リンク) ボタニックガーデン
ツバキ、ネムノキ、チャノキ、サザンカ、イチョウ


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