モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

ジンジャーゼラニュウムの花 と ゼラニュウムの小話④Final

2008-05-12 07:45:26 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
「ゼラニュウム」を『ペラルゴニウム』に改名した男とその時代の物語

庭で育てているペラルゴニウム6番目で最後のジンジャーゼラニュウムの花が咲いた。
先に咲いたシナモンゼラニュウムに近い花色だが、
ピンクの色が薄く、花びらは1.5倍くらい大きい。

上の花びら2枚に描かれた濃い赤紫の網状の線は、
古代の洞窟に描かれた線画のようでもあり
携帯電話に表示される受信の記号のようでもあり
自然がつくるアートは素晴らしい。

(写真)ジンジャーゼラニュウムの花


『ペラゴニウム』は
1772年から南アフリカからイギリスのキューガーデンに大量のゼラニウムを
送ったのはフランシス・マッソン(Francis Masson1741-1805)で
ゼラニュウム小話①でふれたが、これが遠因で名前を変えることになった。

それまでは、ディオスコリデスが名付け、リンネが学名として採用した
“鶴を意味するゲラノス(geranos)”を語源とする“ゼラニュウム”であったが
南アフリカから入ってくるゼラニュウムが膨大なので、
新しい属名を作りペラルゴニウム(Pelargonium)と名づけた。

この属名を変えたのがレリティエール・ド・ブリュテル(L'Héritier de Brutelle, Charles Louis 1746-1800 )
フランスの裕福なアマチュア植物学者で判事だった。
アマチュアとプロの線引きは、職業としなかっただけだと思うが業績は十分にある。

レリティエールは、1787-1788年に『ゼラニュウム論』を書き
それまでのゼラニュウムを3つに分けて
南アフリカから入ってきたゼラニュウムをペラルゴニュウムに変更
それ以外のクレーンズビル(cranes bill)をゼラニュウム(ギリシャ語のgeranos鶴を語源)
高山植物をエロディウム(ギリシャ語のerodiosサギを語源)
とした。

ペラルゴニウムという名は、ギリシャ語のペラルゴス(pelargos)からきたものでコウノトリを意味する。

ツル・コウノトリ・サギと名前のつけ方はいい加減のようではあるが、
区別することが重要で、この区別が浸透していないというのも現実だ。
特に、園芸品種が多いためさらにわかりにくくなっている。

ペラルゴニウムの花の特色は、7本のおしべと上が2枚下が3枚の花びらで、
上2枚には網脈のようなしみがついていて春だけの一季咲きとなる。
ゼラニュウムの場合は、10本のおしべを持った整斉花で大部分が北半球の耐寒性がある植物からなる。

レリティエールは、フランス革命後も治安判事を務めていたが1800年に暗殺された。
原因はわかっていないが、彼のそれまでの業績とかかわっていたのだろう。

トピックスとしては、
レリティエールは、自分の著書の植物画を描く挿絵画家を探していて、
王立植物園博物館で絵画技師をしていた若き画家を発見し、この人間を育てた。

1789年に、友人から預かった植物標本をフランス革命の破壊から守るために
イギリスにこれをもっていった。
この時、若き画家も連れて行き銅版画技術を学ぶ機会を与えた。
絵から輪郭線を取り除く技術で、これにより上品なグラデーションが可能となった。
この若き画家は、あの官能的な美しい『バラ図譜』などを描いた
ピエール・ジョセフ・ルドゥーテ(Pierre-Joseph Redoute 1759-1840)であった。

ボタニカルアートの頂点でもある彼の絵は、レリティエールと出会ったことにより
科学的な植物解剖学の知識を教えられ、これを表現する技術をイギリスで学び
リアルを切り取る写真では表現できない官能的な美を生み出した。

しかし、レリティエールは、イギリスから帰国後投獄され釈放後に暗殺された。
友人の植物標本は、この採集に協力したスペインから権利を主張され返還請求があったが
これからも逃れるためにイギリスに持っていったことがかかわっていたのだろうか?

南アフリカからペラルゴニウムを大量に採取したプラントハンターのマッソンにしろ
暗殺されたレリティエールにしろ
“Catch the roots”は、命がけだった時代があったのだ。

命まではとられない今日、
命がけでやれる或いはやりたいコトを持っているのは素晴らしい。
“命がけでやれ!”とか“命をかけてやります!!”とか誰も言わなくなったが、
決して死語にはなっていないのだろう。

人類・地球の未来を創って来たのは、このような命をかけた人たちだった。
足を引っ張ってきたのもそうだが・・・・。

(写真)花と葉


ジンジャーゼラニュウム(Ginger Geranium)
・フウロソウ科ベラルゴニウム属(和名テンジクアオイ)の耐寒性がない低木。
・学名はPelargonium x nervosum ‘Ginger’。英名はGinger Geranium。
・原産地はアフリカ南部。
・日当たりの良いところ。夏場は涼しいところ。冬場は、耐寒性がないので、軒下か室内。
・乾燥気味で育て、乾いたらたっぷり水をあげる。梅雨の時期は雨のあたらない風通しの良いところで育てる。
・成長期の肥料切れに注意。
・開花期は、5月~初夏、ピンク系の小花が咲く。
・葉は縁にギザギザがありさらにウエーブが入っている。


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