浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

アーノルド・ドルメッチ 平均率

2006年07月12日 | 器楽奏者
僕の親父は現役の経済学者だが、フルートも吹くし、リコーダーはカール・ドルメッチに1年間スクールに通って習ったほどの凝りようだった。今では、それらの楽器もすべて僕に譲ってくれ、自分では吹こうとしない。

そんな親父が、倫敦大学に呼ばれた際に、僕に一緒に英国に2年ほど行かないか、と誘ってくれたことがあった。僕はつまらない理由で断ったが、今思うと残念でならない。全然違った人生を歩む自分を妄想することがよくある。親父はこのとき、ドルメッチ・スクールに通い、古楽コンソートなどを楽しんでいた。

親父が帰国して間もない頃、日本のアルティスコといふレーベルからカールの父、アーノルド・ドルメッチのクラヴィコードのSP復刻LPが出た。なんともかぼそい音だが、こんな演奏がSPレコヲドに残されていたことに少々驚いた。その昔に、こんなに目立たないが、颯爽と、音楽の礎を築いていた人がいた。土の中の微生物の如く、音楽文化の土を耕していた人がいた。

正に、今、目の前に居るあなたのために弾いている音楽がそこにはあるやうな気がする。これこそが音楽の命。少し離れると、それはもう聴こえない。

盤は、日本アルティスコ・レーベルのLP。


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