浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ヘルマン・アーベントロート シューマン「春」

2006年07月11日 | 指揮者
アーベントロートのシューマンは4番とチェロ協奏曲は聴いたことがあったがそれほど印象に残らなかったが、「春」は最近聴いてちょっと感動したので取り上げておこう。

オーケストラはライプツィッヒ放送響で1949年の録音となっている。このオケの音は弦が硬く、管楽器の音色も伯林や維納と比べるのは無理がある。やはり、ちょっと聴いただけで2流と分かる。

しかし、この散漫な印象を持たれがちな曲の表現については、僕は、なるほど、と思った部分がいくつもあり、久々に感心した。特に1楽章は、速目のテンポでたたみかけるやうに進めて、多動の傾向のあるシューマンのやりたいことを、きちんと納得できる音楽に仕上げている。

2楽章は、そろそろ耳が慣れてきた弦が、かなり歌っている。3楽章もかなり速い。そして、僕が一番気に入った4楽章。この散漫になりがちな曲の展開では、アッチェレランド、リタルダンド、フレーズの最後をやや長い目にするなど、テンポの変化が著しい。中間部のオーボエに続いてアルペンホルンを思わせる部分などは、この曲の奇妙な感じがなくなり、本当に自然な流れになっている。そして、フィナーレに向かってかなり激しい盛り上がりをつくっている。

いい線までいくけれども、いつも何かが足りないもどかしさを感じるアーベントロートだったが、この「春」の演奏は、久々の大当たりだった。

このCDにカップリングされている4番と「マンフレッド」を久々に聴いたが、こちらについては、昔の印象とさほど変わらず、フルトヴェングラーの名演を知る者にとっては、わざわざ聴くほどのことはないと僕は思っている。

盤は、クロアチア メトロムジカのCD Virtuoso83007。


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