浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

我が國初のショパン弾き 内田光子によるバラード第3番

2009年05月29日 | 洋琴弾き
5月前半、神戸の街をぶらぶらした。その後息子に続いて僕も体調を崩し、発熱外来で豚インフルエンザの検査を受けるといふめったとない貴重な体験をさせてもらった。救急車の誘導の後、宇宙服にゴーグルといふ物々しい格好の保健所員のエスコートを受けた我が家族は、指定病院に設置された仮設テントの中のパイプ椅子に2m間隔で座らされた。その後、ウイルスは僕のパソコンに感染し、しばらくのご無沙汰となってしまった。久々の投稿に当たって僕の好きなショパンのバラード第3番を聴くことにした。

神戸からZ共和國に帰国してからは、50インチのテレビやステレオアンプ(ステレオの録音はほとんど持ってゐない)を新調したり、ウイルス感染により治療中のパソコンに替わって真空管式自作パソコンも稼動し始めるなど、生活環境ががらりと変わってしまった。そんなこともあって、最新の録音の中から、内田光子によるショパン作品を聴くことにしたのだ。

この録音は1975年頃のもので正規の録音ではないやうだ。子供の頃に弾いたハイドンのハ長調奏鳴曲、ショパンのバラードの第3、第4番とワルツホ短調の4曲を弾いてゐるが、恐らく放送用のテイクと思はれる。

新しいアンプは小型だが仕事部屋には十分な機能を備えてゐて、音楽だけを愉しむのならこれくらいで事足りる(場合によったら簡易イアフォンで十分)。内田光子のまあるい粒粒の音色は綺麗に再現されてゐる。ちょっと風変わりな解釈に聴こえるところもあるが、ほんの少し前までちょん髷を結ってゐた國民とは思えないほど立派である。

「我が國出身のショパン弾きは?」と言へば内田光子と答える人は多い。具体的に言ふと新型インフルエンザに感染した人より多いと思ふ。ショパン競技会で日本新記録となる2等賞をとったからといふ訳ではない。他の日本人入賞者よりも音楽的に優れてゐると思ってゐる人が多いからだ。しかしながら、内田光子のショパンのレコヲドは奏鳴曲くらいしか知られてゐないやうで、モーツァルトしか弾かない洋琴家と思っておられる方も居るそうだ。今日は、ほんの少し昔は内田光子はショパン弾きで通ってゐたといふ事実を再確認できた。

盤は、私家版CD-R F0142。


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3 コメント

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内田光子のショパン (ふぁんふぁん)
2010-02-14 10:38:01
はじめまして。

上記の記事、興味深く拝読致しました。
内田光子のショパンは、ほぼ出回っていませんが、こちらのバラード3番は大変興味があります。
やはり、一般に出回っていないものなのでしょうか?
是非、教えて下さい。

宜しくお願い致します。
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やはり放送録音でした (webmaster)
2010-02-19 23:20:38
ご質問を頂戴し、有難う御座います。現在、帰国して神戸に居る関係で、昨年暮れから更新もままなりませぬが、お答えだけはしておこうと思ひます。このCDRは若い頃にFM放送からオープンリールに録音したもので、NHK-FMであることは間違いありませんでした。後は記述した以上の事は分かりかねます。内田光子の演奏であることだけは間違いありません。残念ながら市販されてゐるものではありません。
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内田光子のショパン (ふぁんふぁん)
2010-02-21 23:19:56
お忙しい中のご回答、誠に感謝です。
彼女が、70年代ショパン弾きであった事は存じておりました。
奏鳴曲以外で私が聞いた彼女のショパン実演は、ポロネーズと前奏曲位です。

出来ますれば、この録音を是非とも拝聴したくお願いしたいのですが…。
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