浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ロベール・カサドッシュの交響曲第壱番

2010年08月25日 | もう一つの顔
ロベール・カサドッシュはディエメに学んだ仏蘭西の洋琴家として知られてゐるが、立派な作曲家でもある。最初の作品は17歳のときに書いた10の洋琴小品「架空の旅」で、その後69の作品を残してゐる。今日は、彼の最初の交響曲を聴いてゐる。

この軽快なタッチで始まる第壱交響曲は1933年から翌年にかけて作曲され、妻であるギャビー・カサドッシュに捧げられた作品である。冒頭のいかにも仏蘭西近代の響きを聴けば多くの聴衆はこの洋琴家がただならぬ作曲の才を持ち合わせてゐることを直感するだらう。ルーセルを多少明るく装い直したやうな印象だ。

彼自身が言ふやうに、フォーレ、ルーセル、サンサーンスをモデルとし、其の作風は確固とした古典の様式に基づいてゐる。24の前奏曲、作品番号5はラヴェルに認められるきっかけとなった作品で、後にラヴェルに献呈されてゐる。そういった輝かしい経歴にも拘らず、彼の作品は現在は見向きもされてゐない。

幻想的でラヴェルの色合いに似た第二楽章やルーセルを彷彿とさせる第三楽章など、管絃樂の語法も卓越した腕前を披露してくれ、聴いてゐる者を最後まで集中力を切らさずに引き付ける。彼が愛したモーツァルトのやうに、旋律は泉のやうに溢れ、語り口も平明で聴き易いのが特徴だ。

第壱交響曲は此れが初録音と記されてゐるので、あまり知られた作品でないやうだが、此のCD盤には第五番と合唱付きの第七交響曲「イスラエル」がカップリングされてゐる。演奏はハワード・シェリー指揮ノーザン・シンフォニアによる。

盤は、EU製Chandosのデジタル録音 CHAN 10263。


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