浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ジョン・アマーディオによる名人芸を「ナショナル・メロデー」に聴く

2008年10月04日 | 器楽奏者
僕の嫁さんはフルーティストで、世界のフルーツに通じてゐることは何度か触れたことがあるが、最近はカヴェルネ・ソーヴィニオンのジャムに凝ってゐる。久々の休日を嫁さんとフルートの名人芸を楽しんでゐる。

モイーズの前の世代のフルート吹きに新西蘭のジョン・アマーディオといふ名人が居た。この忘れられた名人芸をクリストファー・N・○ザワ氏が立川澄人と紹介する番組が30年ほど前に放送された。

このレコヲドの演奏を聞き終えた立川澄人は、思わず「これはひどい!」と本音を漏らし、○ザワ氏の機嫌を損ねぬやうに必死で言い訳をしてゐたのを思い出す。アマーディオは最初はフルートの2倍の長さのバス・フルートで大人しく演奏し始めるが、タイトルのとおり、ビリーヴ・ミー・春の日の花、マルセイエーズなどのメドレーの間にフルート、ピッコロと瞬時に持ち替えを行って超絶技を聴かせてくれる。しかも、現代の銀色、金色のフルートではなく、真っ黒の木製フルートでの演奏だといふから恐ろしい。我が家のMOECK製のトラヴェルソは写真のものだが、リコーダーが横を向いた形状で、木の管に穴が開いただけの構造である。木製フルートはこれにキーが付いたやうなものなのだらうか。

あまりにも凄い技に「これはひどい!」とゐふ言葉が出るのも不思議ではない。「ひどい」と「凄い」は同じものを指して使うことのできる言葉なのだ。ホロヴィッツON TVのショパンの奏鳴曲の演奏でも同じことが言へる。「まじめ」と「みじめ」が同じ人物を指して使われるのとよく似てゐる。

このレコヲドは1910年頃の録音といふことだが、さらに、この録音の後、アマーディオはフルート・ダ・モーレといふ楽器を作らせて、ネリー・メルバ(ピーチ・メルバの菓子を作ったことで有名)やルイーザ・テトラツィーニらのオブリガートを演奏してゐて、その様子はいくつかのレコヲドでも聴くことができるそうだ。

盤は、私家版CD 765-0038KM。


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