浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ニアレジハジの「マゼッパ」

2008年06月22日 | 洋琴弾き
アーヴィン・ニアレジハジといふ名をはじめて聞いたのは学生時代だった。その当時夢中になって聴き漁ってゐたInternational Piano ArchiveのLPの中にニアレジハジといふ聞きなれぬ名前が1枚混じってゐた。それが出会いだった。

ニアレジハジは、11歳でマックス・フィードラー指揮する伯林フィルハーモニーの演奏会にデビューしベートーヴェンの第3協奏曲を弾いてゐる。その2年後、フレデリック・ラモンドに師事し、リスト弾きの次世代の担い手として頭角を現す。この頃、アルトゥーロ・ニキッシュ指揮する伯林フィルハーモニーとリストの協奏曲で協演し、その後、米國に渡り、スラム街で過ごす。数奇な人生を歩んだ洋琴弾きだが、IPAのデンコ氏が再発掘してレコヲド界に再デビューできたのは不幸中の幸いだった。この時期、ユーラ・グレアも突然の再デビューを果たしたやうな記憶があるが、ニアレジハジの強烈さと比べればウサギとスッポンくらいの違いがある。

今宵、アンピコのロールピアノに録音した演奏でリストの超難曲「マゼッパ」を聴いてゐる。オクターヴの連打を強烈な速さでいとも簡単に片付けるあたりは、なにか空恐ろしさを感じずにはおれない。テーマをオクターヴで弾きながら、半音階的に動く内声部など、とても人間の技とは思へないのだ。

ただし、これはロールピアノでの演奏なので、本当にこの速度で演奏してゐたのかどうか、タッチはもっと幅があったのではないか、など判らないことばかりだ。ニアレジハジのSP録音を聴いてみたい気がするがそれも叶わぬらしい。ニアレジハジは、リストがこの世を去って間もない頃、生前のリストの演奏の記憶を持つ人々に「リストの生き写し」と評された洋琴家である。リストのレコヲドが無い以上は、ニアレジハジの演奏を聴いて、リスト自身の演奏を想像するしかない。

盤は、英国SymposiumによるCD 1211。


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