浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

チェリビダッケ 丁抹國立放送響とのラヴェル「クープランの墓」

2009年02月28日 | 指揮者
チェリビダッケは放送局の管絃團との付き合いが結構多い指揮者だ。欧羅巴の指揮者は大概オペラで土台づくりをする慣わしがあるやうだが、チェリビダッケは異質だ。今日は、丁抹時代のライブ録音からラヴェルを取り出した。

伯林を去ってからは伊太利亜、瑞典、丁抹、南独逸の放送局の管絃團と契約を結んだチェリビダッケだが、おかげで録音嫌いの指揮者にもかかわらず録音は多数残されてゐて、全部が発売されたら蒐集家は家をたたまねばならなくなるだらう。

そのやうな中で現在入手可能なCDは、よほど立派な演奏であるか、相当個性的でインパクトのある伝説的な奇演であるか、聴き手は大いに期待するものだ。丁抹とのラヴェルは初めて聴くレコヲドだ。1968年10月3日のコンサートの模様を収めたCDであるが、つい先ほどまでフィルハーモニア管絃團の演奏でエルガーを聴いてゐた僕の耳には、その差は歴然と感じた。お世辞にも一流の管絃團とは言へない。特に管楽器はよろしくない。同じパッセージを繰り返してミスするあたりは人間として親しみさへ感じる。しかし、全体から発せられる洗練されたバランス感覚の素晴らしい響きはとても心地よい。

リゴードンでは、指示されたとおり弱音から凄いクレッシェンドを必死で表現するオーボエ奏者の茹蛸のやうな顔が目に浮かぶ。この日はモーツァルトの「ジュピター」とヒンデミットの「画家マチス」がプログラムに上がってゐるが、僕はラヴェルが一番良い出来栄えだと思った。

盤は、伊太利亜ArlecchinoによるCD ARL172。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。