大学時代に構内で一際光彩を放つ禿頭がゆらゆらと揺れながら動いて行くのを何度か見た。此れこそが名曲「平城山」を生み出した禿頭なのだ。久々に日本の調べが聴きたくなり、CD棚の一番下に隠れてゐたNAXOSの"Japanese Melodies"といふハープ伴奏の歌曲集を取り出し、平井康三郎の名旋律を何度も聴き返した。
「平城山」は叶わぬ恋を謳った北見志保子の詩につけた旋律ではあるが、此の名旋律は人の心を洗い流し、昔の懐かしい情景をふと甦らせることがある。
白熱球に浮かび上がる天井の木目と、其の下で熱にうなされる子供の姿が見える。虫捕り網を持って保久良山を駆ける父子が見える。
ハープが琴のやうに響く中、静かに平井康三郎の旋律が流れる。普段は喧騒の中に息を潜めてゐたものたちの囁きが聴こえてくる。一瞬、額の中の親父が微笑んだのが分かった。
「平城山」は叶わぬ恋を謳った北見志保子の詩につけた旋律ではあるが、此の名旋律は人の心を洗い流し、昔の懐かしい情景をふと甦らせることがある。
白熱球に浮かび上がる天井の木目と、其の下で熱にうなされる子供の姿が見える。虫捕り網を持って保久良山を駆ける父子が見える。
ハープが琴のやうに響く中、静かに平井康三郎の旋律が流れる。普段は喧騒の中に息を潜めてゐたものたちの囁きが聴こえてくる。一瞬、額の中の親父が微笑んだのが分かった。