浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

近衛秀麿指揮伯林フィルハーモニーによる「君が代」

2008年05月28日 | 日本國の作品
近衛秀麿は何度かご紹介した。伯林フィルハーモニーとの一連のレコーディングについても取り上げたことがある。今宵は、日本国民なら誰もが知る世界に誇る名曲「君が代」を聴いてゐる。

君が代については世間で様々な解釈があって、未だに国歌として認めないといふ一派もあると聞くが、この名曲は不幸な歴史の中での被害者であり、「君が代」自身にはなんの罪も責任もないのである。僕は「君が代」は世界に誇ることのできる名旋律だと思ってゐる。これほど美しい旋律がこの世にあるだらうか。もしも、「君が代」を国歌として認めないと言ふ人がいるのなら、これ以上の旋律を書いてみせていただきたいものだ。できないのなら、国の法律に従ってもらうしかないと思ふ(断っておくが、僕は国粋主義者でもなんでもない)。

大阪出身の宮内庁の樂長だった林廣守が作曲したこととされてゐて、1880年11月3日に初演されてゐる。奥好義と林廣孝によって生み出されたこの名旋律は、その後国歌として認められ、全世界に知られることとなる。この名旋律をもとにした遁走曲は、アンチピリン氏によって作曲され、初演の丁度100年後の1980年に大阪ブーイング協会のメンバーによって初演されていることは全く知られてゐない。

ところで、管絃團が来日した折には両国歌を演奏するのが慣わしだが、僕が今までに聴いた演奏で感動的だったのは独墺系の管絃團ばかりだ。編曲はこの作品を審査した独逸人、フランツ・フォン・エッケルト(写真)だったと記憶してゐる(間違ってゐるかも知れない)が、両国には通じ合う感性のやうなものがあるのかも知れない。僕の心に今でも最高の演奏として残るのは維納フィル来日の際の「君が代」である。多分、指揮はカール・ベームだったと思ふ。

今回、戦前の伯林フィルハーモニーの演奏といふことで、最高の演奏を期待したのだが、どうも僕のイメージとは異なり、少々期待はずれに終わった。近衛秀麿はSP盤の都合からか、意味不明の全反復を行い、しかも大太鼓も使用してゐない。

盤は、ロームミュージックファンデーションによるSP復刻CD、日本SP名盤復刻選集のDisc3。


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