浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

フルトヴェングラーのブラームス第4番 = マスダ名曲堂の想い出

2009年11月30日 | 指揮者
今日は55回目のフルトヴェングラーの命日だ。今日聴いてゐる東芝AB8033のレコヲドを親父と一緒に買いに行ったことはつい先日のやうに覚えてゐる。国鉄三宮駅北側にあるマスダ名曲堂とかいふ名前のお店のことも懐かしく想い出される。古びた店内にはLP盤がぎっしりと並べられてゐて、丸いパイプ椅子が2つ置いてあった。カウンターのやうな板の上に店主の作成したカードを広げて、1時間ほど語らいながら購入するLPを決めるといふやり方だった。

店主の頭はフルトヴェングラーのやうにきれいに禿げあがり、顔も痩せてゐたのを覚えてゐる。どんな会話をしたのかはあまり覚えてゐないが、トスカニーニのやうな明確で整然とした演奏が好きな親父の前で、フルトヴェングラーの良さを説いてくれた。そのおかげでフルトヴェングラーのLPを幾つも買って貰えたのは間違いない。

中学生当時ですら懐かしさを感じさせた其のお店は、大学を卒業した頃には消えて無くなってゐた。いつの間にか取り壊されてゐたのがとても残念だった。その後知ったが、店主の名は、増田豊太郎と言って、絵描きさんだったやうだ。ベレー帽を被せると、確かに立派な画家のイメージに違わない。

さて、この当時のことについてあらゆる記憶を総動員して考えてみると、おそらく中学1年生の誕生日のプレゼントに買って貰ったのが、今聴いてゐるブラームスの4番だったのだらう。そのLP盤は震災も無事に乗り越え、僕の音楽室の棚に大切に仕舞われてゐる。未だにこの演奏を超える名演には出会わぬまま数十年が経ったのだ。幸せな少年時代を送ってゐたとしみじみと思ふ。歳をとった証拠なのだ。

盤は、東芝AngelのLP盤 AB-8033。


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