Unseasonable Shore

映画の感想を中心に、普通の生活をおくる30代ゲイの日々感じるできごと。

ミスト(ネタバレ注意)

2008-05-28 10:25:54 | 映画
今回は今公開している映画「ミスト」について。この映画、監督がフランクダラボンで、原作がスティーブンキングという「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」のコンビの3作目ということで、どんな映画なのか気になっていました。予告編を観ると、なんだか不思議で怖そうな・・・。なんて思って観にいってみました。
ここで内容をすこし。アメリカの田舎町の夜に大嵐がやってきます。翌日被害は結構大きく、スーパーマーケットには食料や物資を買い求める人が殺到します。そこへ、町全体を覆うような霧が発生し。みなが不思議に思っていると血だらけの男が、スーパーに助けを求めて駆け込んでくるんです。「友達が何かに引きずられていった!」。その後もなにかえたいの知れない生物(?)、らしき物が見え隠れして、被害者が少しずつ出てきて・・・・。
おもしろいから絶対みてください!観てからでないと話ができません(笑)。

ここからはネタバレになるので、絶対にごらんになっていない方は読まないでください。これを読むとあの「ショック」が半減してしまいます。






スティーブンキングの原作をフランクダラボンが脚色したこの作品。ラストを迎えるまでは、「割とよくできた、パニックホラー」という感じなんです。スーパーという「密室」に置かれた人々が宗教、人種、職業などの様々な影響から殺し合いになったり、人間のもろさなんかもきっちり描かれています。この映画の主人公は子供と一緒にスーパーに来ていた、イラストレーターの男なんですが、結構正義感もあり、映画の中ではリーダー的な存在になります。しかし、ある熱狂的なキリスト教信者の女性が中心となった「この危機から逃れるためには、生贄をささげることが大切」と訴えるグループがスーパーを牛耳るようになり、そこからも脱出することになります。外にはモンスターがたくさん。スーパーにも戻れない。霧がどこまで続いているかもわからない。この状況の中で、仲間3人と子供をつれて逃げることになります。車で逃げ続け、ついにガソリンがつき、遠くからはモンスターの足音が。そこで、この男と仲間が取った行動がショッキングだったんです。
そう、集団自決。というかこの男がみんなに同意を求め、みんなも納得の上でピストルを使って死んでいきます。この男は銃弾が足りずモンスターの餌食になるように車から降りるのですが、その時霧がうっすらと晴れて、軍が救助に来るという皮肉。もともと、モンスターが出てきたのも、軍の実験の失敗により異次元からとつながってしまったから。実はスーパーにいるときに、ある女性が「自分の子供達が家に残っているから、帰りたい。でも、車がないから誰か助けて」と頼むシーンがあります。ここで、他の人達は自分の身が危ないからと言って、彼女を助けないという結果になります。その女性は一人で霧の中に出て行くのですが、そのときに「みんな地獄に落ちなさい!」っていう捨て台詞を吐いて出て行きます。なんとその彼女が子供一緒に軍の車に乗って、主人公の男を見下すという、さらなる追い討ち。
いや~。やられました。なんとも考えさせられる映画です。

ノーカントリー

2008-05-27 11:17:11 | 映画
今回はアカデミー賞を受賞した作品「ノーカントリー」について。コーエン兄弟の作品なので、ヒトくせもフタくせもあるんじゃないかなって思って観にいったのですが、一貫していたのは「世の不条理」という概念。それを殺人者と追われる者、殺人者を捕まえようとする警察との関係を通じて描いています。
ストーリーは、ドラッグからみで殺しあって全員死亡した(本当は一人生きているのですが)現場を偶然見つけた男がそこにあった大金を持って逃げます。それを追う組織から雇われた殺人者が、執拗に殺しをかさねながら追い詰め、またその殺人者を追う保安官も事件を解決しようとしますが・・・

音楽など一切なしで、どこかドキュメンタリー的な映像。殺人者を演じるハビエルバルデムもあの独特な髪型で、存在感たっぷりだし。僕は好きな映画ですが、ラストがはっきりしないので、「これで終わり?」って感じになります。これに違和感が出る方もいるかもしれませんね。でも「世の不条理」ってこんな形で見せられると「そんなもんか~」って妙に納得してしまうあたり、コーエン兄弟のうまさかもしれません。どんなにまっとうに生きていても殺されてしまうし、悪いことをしていたとしても、生き延びてしまうし・・・。でも生き延びたとしてもその後の人生は全く変ってしまうのだけれど。


「今をしっかり生きる。」ことの重要さ。これがこの映画を観終わってじわじわ感じてくる感想です。

全員にオススメするわけではないですが、興味がある方はご覧になってみてください。

大いなる陰謀

2008-05-19 13:52:52 | 映画
今回は今公開している映画「大いなる陰謀」について。予告編を観たときから期待していたんですよ。監督と主演(主演となる人物は6人)がロバートレッドフォード、メリルストリープ、トムクルーズと豪華!でも、その内容が非常に重く、考えされられるものなんです。イラク戦争をなんとか勝利で治めたい、トムクル-ズ扮する上院議員が自分の作戦をテレビ記者であるメリルストリープに話すところから映画はスタートします。自信に満ち溢れている上院議員にテレビ記者が長年の勘から、なにか腑に落ちない感じをいだき初め、様々なやり取りをインタビューの中で行っていきます。いっぽうカリフォルニアで政治心理学の教授であるロバートレッドフォードはある生徒に、戦争参加している優秀な生徒の話をしていきます。この生徒達があの上院議員が立てた作戦にのっとって任務を遂行中に、敵の攻撃にあいピンチの状態へ。映画はこの3つの場面をうまくカットバックしながら進んでいきます。ほとんどセリフだけで、カメラワークもさほど凝っていないのですが、演技がとてもうまいので、どんどん引き込まれていきます。痛烈なアメリカ政府の批判が含まれており、ラストは観ているものに「本当にこのままでいのか?」という疑問をなげかけるように、終わります。
この映画で描かれている内容は、じつは今の日本にも当てはまることだと思います。官僚達が現場の様子などわからず、自分達の都合だけで物事を決めていく。けっか被害にあうのは、末端の国民。どこの国も一緒。

GWにこんなことを考えるのもいいかもしれません。オススメします。

フィクサー

2008-05-07 11:24:51 | 映画
今回は今公開している映画「フィクサー」について。ジョージクルーニーのファンとしてみると、楽しみにしていた作品。なかなか見ごたえがありました。物語は・・・、ある企業が人間に被害をもたらすとしっていながら、作っていた農薬で実際に健康被害をうけた人達の弁護をしていた、企業弁護士の言動がおかしくなりそれを追求していくフィクサー(もみ消し屋)のクルーニーが企業の裏側を知り始め、しだいに追い詰められていき命もあぶなくなるのですが・・・。といったサスペンスの入った「エリンブロコビッチ」という雰囲気です。でも今回のクルーニーは自分の将来に不安を感じ、引退してバーを開こうとして事業に失敗して借金があったり、離婚した奥さんとの子供(この少年の読んでいるファンタジー小説が結構重要になるのですが)との関係もなかなか微妙だったりと、あの年代の人間らしさがうまく出ていたと思います。そして、相手企業の弁護士をティルダ・ウィンストンが演じて、アカデミーを獲りました。人間追い詰められるとああなるものかと迫真の演技でみせています。あの焦り方はすごいですよ(笑)。
地味な映画で、あんまり評判にはなっていないみたいですが、クルーニー好きもそうでなくても、おもしろい作品です。
ごらんになってください。