Unseasonable Shore

映画の感想を中心に、普通の生活をおくる30代ゲイの日々感じるできごと。

複製された男(ネタバレ注意)

2016-03-29 16:05:58 | 映画
今回は映画「複製された男」について。




この作品、公開当時は観ることができなかったのですが、最近になって観る機会がありました。そしたら、すごく不思議な映画で繰り返し観てしまう魅力というか、魔力というかがある作品です。

監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ、主演はジェイクギレンホール。ノーベル文学賞作家でポルトガル出身のジョゼ・サラマーゴ(映画ブラインドネスの作者)の小説を実写化した映画です。


ここで内容を・・・


何も刺激のない日々に空虚なものを感じている、大学で歴史を教えているアダム・ベル(ジェイク・ギレンホール)。ある日、何げなく映画のDVDを観ていた彼は、劇中に出てくる俳優が自分自身とうり二つであることに驚く。彼がアンソニー・クレア(ジェイク・ギレンホール)という名だと知ったアダムは、さまざまな手を尽くして彼との面会を果たす。顔の作りのみならず、ひげの生やし方や胸にある傷痕までもが同じであることに戦慄(せんりつ)する。



と書いてあります。


観終ってから、「えっ?ちょっと待って、もう一回初めから観ないと、わかんない」って思い、再びオープニングを観てしまい、その後また映画を続けて観てしまいました。


不思議な蜘蛛の存在、アダムとアンソニー、二人の関係、それぞれにいる彼女と妻。カナダの灰色っぽい映像とあいまって、観ているこちらの神経もなんだか変になりそうな、不思議な映画でした。


ゲイ的にはジェイクギレンホールがかっこよいので、それだけでも良いのですが(笑)。


きちんとした結末を望んでいる方は、ごらんにならない方が良いかもしれません。きっと「時間を損した」と感じるかもしれません。それくらい始まりも、終わりも、不思議なんです。

単なる夢オチ(すべてが夢だった)みたいな映画ではなく、観ているこちらの神経がザワツク作品です。


ここからは、ストーリーについてのお話しですから、ごらんになっていない方は読まないでくださいね。















オープニングでアダム(と思っていたけど、実はアンソニー)が地下のセックスクラブに行って、ヌードショーを観るシーンがあって、そこで、巨大な蜘蛛をハイヒールでつぶす(正確にはつぶす寸前でカットがかわります)シーンがあり、後半でも蜘蛛が重要な意味を持ってきます。そしてアダムにお母さんから電話が入ります。「あなたのことが心配なの」と。お母さんとの会話も後半で出てくるので、ここも大切です。そして、妊娠中の女性(これもあとから、アンソニーの妻だとわかります)の映像も一瞬映ります。ここを気にせず、すぅーっと観てしまうと後の話がますますわかりづらくなってきます。


まず、この二人は本当に二人なのかというところなんです。邦題が「複製された男」ですから、僕はクローンや双子のことを思って観ておりました。

でも、映画を観終って、再びオープニングに戻って観たときに、「これって、解離性同一性障害(二重人格)の話なのか」って考えるにいたりました。でも、これも明確に映画の中で描かれている訳ではないのですが。




アダムは学校の先生で地味、アンソニーは俳優で社交的と対照的な二人。なのに、まったく同じ人物。アダムとアンソニーが同時に出てくるのは、必ず二人きりな時だけ。お母さんと会うのはアダム、でもアンソニーもお母さんのところに行ってくると妻に言うシーンもあります。そして、アンソニーはブルーベリーを食べることは体に良いと言い、お母さんに会いに行ったアダムはお母さんからブルーベリーを勧められる。

アダムがアンソニーになりすまし、アンソニーの家に行き彼の妻と一緒にいるときに妻から「学校はどう?」って聞かれるシーンがあります。彼女はアンソニーが浮気していると思い、アダムが本当の男なのかを確かめに学校に行くんです。だから、アンソニーと入れ替わっている彼をアダムだとわかったのかなって感じました。

一方、アンソニーはアダムになって、アダムの彼女とホテルでSEXしようとするのですが、彼女はアダムではないアンソニーに気がつ拒絶します。アンソニーはハイヒールを履いて、セクシーな彼女とSEXしたくなり、アダムと入れ替わりを持ちかけていたのです。

そして、アダムになっていたアンソニーと車で言い争っているシーンの後に交通事故の場面になり、割れた窓ガラスのひびが蜘蛛の巣のようにうつります。

アンソニーになっていたアダムはそのまま妊娠している妻とともに暮すようになり、ラストはその妻が巨大な蜘蛛になっているというシーンで終わります。ラジオでは交通事故の話が流れます。

僕が考えた結論はアダムがアンソニーという人格を作り出して、自分の願望をかなえたいと思ったということです。アンソニーの妻が妊娠した(蜘蛛は妊娠した女性を意味していると解釈)ことで、SEXの願望をセックスクラブに求めていた。アンソニーは派手で女好きな人格だから、浮気もするし、女遊びも好きだから、妻はすごく心配していたのだと。

アダムは自分の恋人ができて、その彼女がセクシーで会うとSEXをする関係となり、アダムとアンソニーの人格が少しずつ近くなっていったのかなって感じました。その彼女のことは当然別人格のアンソニーの好みでもあるから。

で、交通事故はアンソニーとアダムの彼女が死んでしまったということではなく、彼女の単独事故か、全く関係のない事故かわからないけど、アダムがいるということは、アンソニーが実際に事故にあった訳ではないと考えました。

でも、ラストの妻が大きな蜘蛛になっていることを観ると、こっちが現実じゃないのか、とも考えられます。


と言う風に、観終ってもずっと考えてしまうのがこの映画なんです。


この映画をごらんになった方と一緒にこの映画のことを話したくなりました。











オデッセイ(ネタバレ注意)

2016-03-26 16:21:40 | 映画
今回は映画「オデッセイ」について。



主演はマットデイモン。監督はリドリースコット。予告編を観たときから気になっていました。


ここで内容を・・・



火星での有人探査中に嵐に巻き込まれた宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)。乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去るが、彼は生きていた。空気も水も通信手段もなく、わずかな食料しかない危機的状況で、ワトニーは生き延びようとする。一方、NASAは世界中から科学者を結集し救出を企て、仲間たちもまた大胆な救出ミッションを敢行しようとしていた。




と書いてあります。




まず、これを観て、「頭が良くないと生き残れない」と感じました。もちろん火星に行くミッションを行う人たちですから、みんな頭が良いのは当たり前ですけど。どうやって水を作るか、食料を確保するか、サバイバルの能力って、実は化学や植物学、微生物学、いろんな「知識」ということなんだなぁって。あと、ビニールシートとダクトテープ(日本ではガムテープになるのかな)があれば、なんでも対処ができるってことも。



スターウォーズやそのほかのSF映画を観ていると、いとも簡単に宇宙に行ったり、戻ったりしてるけど、実際はこんなに大変なんだよねっていうことも、改めて感じることができるのも、この映画の良いところかもしれません。

たぶん、普通のSF映画だったら、「生きてるのがわかったら、すぐに助けに行こう!」なんていうことになるのだけれど(笑)。


本当は火星って地球より重力が少ないけど、今回の映画では、地球と同じような設定になっているようです。

これも映画ですから、すっかりリアルなわけではないけど、普通のSF映画とは違って、「今の人たちが火星に一人になったらどうする?」っていうことを、感じられる映画です。

興味がある方は、ごらんになってみてください。



ここからはネタバレですから、ごらんになっていない方は読まないでくださいね。





















地球と交信できない状態からスタートするとは思ってなかったので、そこが意外な点でした。だから、自分が生きてることも知られないのです。となると、次のミッションが行われる4年間生き延びないといけないっていうことになるのが、最初の難関。

食料は持ってきたジャガイモを種イモとして育てることに。マークは植物学者ということなので、知識は豊富。火星の土をハブといわれる住居スペースに運んで、自分たちの排せつ物を土に混ぜ、堆肥とし、太陽光発電の光をあて、液体の水素と酸素を化学結合させて水を作り、育てていきます。

そんなことをしていたときに、地球ではマークの葬儀が行われていたのですが、衛星写真から火星での動きに観測所が気がつき、マークが生きていることを知ります。

マークは地球とのコミュニケーションのために、1996年に使用されていた、観測カメラを使って、メッセージを送り、コンタクトをとることに成功。

地球では、彼を救うための宇宙船を発射するのですが、失敗。

また、せっかく育てていたジャガイモも砂嵐によって、破壊されてしまいます。

そこで、中国のロケットから物資を運び、火星から戻ってくる宇宙船にドッキングさせ、再び地球の引力を利用して、火星に向かわせることとなります。ここが日本人の僕的には、日本が協力したかったと感じました。でも、今は中国に対して良いイメージを持ってもらうことは、外交上も良いのかもしれません。

マークは次のミッションのために用意されている火星にあるロケットに乗り込み、戻ってきた宇宙船に助けてもらうという計画。

でも、そこは映画ですから、簡単にはいきません。火星に近づいて、ロケットを発射し(ここもスピードをあげるために、いろいろと捨てるんです)宇宙に行くけど、仲間までもどるには距離がたりません。

そこでマークは自分の宇宙服の手のひらに傷をつけ、空気を出しながら、仲間のところへ戻ります。「アイアンマンになる」ってマークは映画で言ってました(笑)。


宇宙船の船長がディスコミュージックが好きと言う設定で、サントラもすごく良かったし、NASAの人たちがロードオブザリングのオタクだったりと、スターウォーズオタクの僕としてみれば、ツボでした。








キャロル(ネタバレ注意)

2016-03-24 18:17:03 | 映画
今回は映画「キャロル」について。




レズビアンを描いた本作。ゲイの僕が観ないわけはありません(笑)。僕の好きなケイトブランシェットですし。日頃からレズっぽいなと思っているルーニーマーラも出演しているので、キャスティングでも、うまいなぁと感じてしまいます。

監督は「エデンより彼方に」のトッドヘインズ。この映画でも旦那さんが隠れゲイで、その奥さんと親切な黒人男性との恋を描いていました。


ここで、内容を・・・




1952年のニューヨーク。デパートでアルバイトをするテレーズ(ルーニー・マーラ)は、娘へのプレゼントを探すキャロル(ケイト・ブランシェット)に応対する。優雅で気品に満ちた美しさを誇るも、謎めいたムードもある彼女に魅了されたテレーズ。彼女にクリスマスカードを送ったのを契機に、二人は会っては話をする仲になる。娘の親権をめぐって離婚訴訟中の夫と争うキャロルと恋人からの求婚に思い悩むテレーズ。そんな中、彼女たちは旅行に出掛けるが……。




と書いてあります。





1950年代に同性愛であることを、自覚していた人たちの苦悩というのが、とても感じられる映画でした。そんな中でも、彼女達は自分らしく生きるということに一生懸命なのです。

テレーズには結婚を言い寄る恋人(男)もいて、本当の自分をさらけ出すこともなかなかできないという状態も、物語を面白くさせる設定だと思います。

ケイトブランシェットは本当にお金持ちが似合いますよね。そして、1950年代の色使いが可愛くて、街並み、壁紙の色、衣装、この色合いの良さも、光っています。ちなみにウッディアレンのブルージャスミンでも、落ちぶれた金持ちを演じているケイトフランシェット。こっちもなかなか素敵です(笑)。

同性愛に偏見がある方もいらっしゃると思いますが、恋愛映画としてみていただければと思います。


ここからはネタバレですので、ごらんになっていないかたは絶対に読まないでくださいね。






















結局、旅の途中で離婚の訴訟からキャロルはテレーズを置いて、戻ってしまいます。それは、旦那の差し金である探偵が二人の部屋のとなりから、情事や会話を録音して、裁判に不利な証拠として、提出するためだったのです。

その後二人は、離れることに。

テレーズはキャロルと離れてからも、彼女のことを思っていましたが、自分がやりたかった「写真」を仕事にして、新聞社で働きだします。

キャロルは離婚の訴訟で決着をつけ、再びテレーズのもとへ行きます。ですが、テレーズは友人の誘いがあるため、キャロルとの席を中座してします。

テレーズは友人のパーティでも、自分の居場所に違和感を感じていて、ついに、キャロルのもとへ出向き、二人はまた、付き合い始める予感を思わせるラスト。

なんか、ハッピーエンドで良かったと思いました。どうしても、同性愛っていうだけで、うまくいかない人生だから、せめて映画の二人にはうまくいってもらいたいのです(笑)。



007スペクター(ネタバレ注意)

2016-03-18 14:48:01 | 映画
今回は映画007スペクターについて。




今作で24作品目となるボンド物。ゲイに人気(?)ダニエルクレイグがその肉体を見せてくれるので、そこもいつも楽しみにしています。


ボンドガールにモニカベルッチとレア・セドゥーと熟女と若い女性の二人が出ますので、それぞれとどうボンドが絡むのかも気になります。




ここで内容を・・・



ボンド(ダニエル・クレイグ)は、少年時代の思い出が詰まった生家“スカイフォール”で焼け残った写真を受け取る。彼はM(レイフ・ファインズ)が止めるのも無視して、その写真の謎を解き明かすため単身メキシコとローマを訪れる。死んだ犯罪者の妻ルチア(モニカ・ベルッチ)と滞在先で巡り合ったボンドは、悪の組織スペクターの存在を確信する。




と書いてあります。




ダニエルのボンドシリーズはそれぞれ過去の作品を観ておかないと、ちょっとわからないことがあるのですが、今回のスペクターはまさに過去のダニエルボンドの敵達の総まとめ感がすごいです(笑)。なので、全ての作品をもう1度観なおしても良いくらいだと思います。

冒頭のアクションシーンから、すごく楽しめます。ヘリコプターのシーンなんかすごいですから(笑)。


そして、今回アカデミー賞で主題歌賞をとったサムスミスの歌にのせて繰り広げられるオープニングもなかなかみせます。ここに過去のダニエルボンドシリーズがいろいろと出てきて、ストーリーの伏線になっていきます。


で、今回の悪役はクリストル・ヴァルツ。この人、イングロリアスバスターズの時からどうも悪役のイメージが強いです。ジャンゴの時は良い人でしたが。今回もなかなかちょっとクセのある悪役を楽しそうに演じております。

そう、このヴァルツ演じる悪役フランツの手下に追われるシーンで、この手下が全然死なないんですよ(笑)。けっこうすごいことになるけど、ボンドを追う執念がすごいんです。


過去のダニエルボンドシリーズを観てから、ごらんになることをお勧めします。




ここからはネタバレですので、ごらんになっていない方は絶対に読まないでくださいね。


















ここで、この悪役のフランツがどういう人物なのかと言えば、過去に出てきた悪役たちの総まとめをしている人物なのです。スペクターの象徴は「タコ」。このタコの足にそれぞれの悪人たちがいて、それをまとめているっていう形がタコなのだそうです。だから、オープニングの主題歌が流れている場面でもタコのモチーフが出てくるんですよね。


そして、どうしてボンドを執拗にいたぶるのかと言えば、このフランツのお父さんはボンドの育ての親なのですが、このお父さんがボンドばっかりかわいがって、実の子であるフランツをないがしろにしていたと勝手に思っていて、まず小さいころにこの父親を殺し(事故にみせかけて)、そして、ボンドを苦しめようということだったのが、真の理由。

そのためには、MI6にまで手下を送り込むことも辞さないフランツ。


ラストはレアセドゥー演じるマドレーヌがおとりとして使われて、それが罠だと知りながらもとMI6の建物に入り、まぁ、うまく彼女を助け、そこから、フランツとの攻防となり、結果彼を殺さずに、逮捕するという幕切れ。

マドレーヌとボンドは恋人となって、二人で去っていくシーンで終わります。


フランツを殺さなかったのは、育てのお父さんのことがあったからなのか、また、次につなげるためなのか、判断がつきません。


一応ダニエルボンドは次の契約になっていないようなので、ここで終わりになるかもしれません。

次がどうなるか、期待しましょう。



ホワイトゴッド~少女と犬の狂騒曲

2016-03-17 13:57:05 | Weblog
今回は映画「ホワイドゴッド」について。




この作品、ポスターを観たときから気になっていました。少女の周りに多数のイヌがフセをしている状態のポスター。
実際に観に行くことにしました。


ここで内容を・・・


とある町で、雑種犬に対して重税をかける法律が制定される。ハーゲンという犬をかわいがっていた13歳の少女リリ(ジョーフィア・プソッタ)だが、父親にハーゲンを捨てられてしまう。突如として飼い主と引き離された悲しみを抱えたままさまようハーゲンと、その行方を必死になって追い掛けるリリ。やがてハーゲンは、人間に裏切られ、虐げられた果てに、保護施設に放り込まれた犬たちと出会う。その姿を目にして憤怒に駆られ、施設から犬を引き連れて人間への反乱を起こすハーゲンだが……。



と、書いてあります。




この映画に登場する、大人たちはみんな雑種のイヌに対して、非常に冷たく、ひどいことをします。監督はこの雑種のイヌを通して、貧富の差や格差社会に対してのアンチテーゼを描きたかったとのことです。このシーンは非常に胸がつまる思いでした。
そして、ラスト40分はCG無しで250頭の犬達がハンガリーの街を逃走する圧巻のシーンが続きます。
そして、非常に切ないラストシーン。






僕は、この映画を観ていて、人間の動物に対する責任をすごく感じました。何回も泣きましたし(笑)。


あと、すごく関心したのがこの映画に登場する犬達はほとんどが動物保護施設から選んで出演させたそうです。2か月かけてトレーニングして、撮影が終了したあとには、全て里親さんのもとに行ったという話で、このトレーナーの技術に感動しました。

特にすごいなぁと思ったのが、闘犬のシーンです。本当に戦わせたわけではなく、そう見えるように遊びを使って教えたのだそう。なので、シーンとすると、5分くらいなのですが、準備に2か月、撮影に5日かけたとのこと。編集のカメラワークで本当に戦っているように見えるのがすごいです。犬達に苦痛を与えず、楽しんで演技するようにトレーニングするという話を聞いて、大変すばらしいと感じました。


ワンちゃんが好きな方達にとっては、辛いシーンの連続のようなこの映画ですが、このワンちゃん達の「演技」は一件の価値があると思います。

機会があったら、ごらんになってみてください。