Unseasonable Shore

映画の感想を中心に、普通の生活をおくる30代ゲイの日々感じるできごと。

メランコリア

2012-02-28 10:06:32 | 映画
今回は映画「メランコリア」のお話。



監督は「ダンサーインザダーク」のラース・フォン・トリアー。出演がキルスティンダンスト、シャーロットケンズブール・キーファーサザーランド、シャーロットランブリングなどなど。非常に豪華で贅沢なメンバー。予告編の映像の美しさからぜひ観たいと思って、観に行ってきました。

ここで内容を・・・



巨大惑星メランコリアが地球に接近する中、ジャスティン(キルステン・ダンスト)は盛大な披露宴を催す。姉クレア(シャルロット・ゲンズブール)の夫(キーファー・サザーランド)が所有する豪勢な屋敷での宴は盛況だったが、花嫁のジャスティンはどこか空虚な表情だった。披露宴を取り仕切った姉夫婦はそんな妹を気遣うが……。


まず、冒頭の10分近くの映像と音楽がものすごく美しくて、切ないです。ここでほぼ映画の内容を説明してくれるんですよね。だから映画が進行していくと、冒頭の映像が頭の中に浮かんでいくという、にくい演出(笑)。キルスティンダンストのやつれて、かわいくない(笑)顔がすごく良いんです。



冒頭の10分が終わると、第1部ジャスティンの表記。ここから、映画本編がはじまります。ジャスティンの結婚披露宴が姉のクレア(シャーロットケンズブール)の家で行われるのですが、最初は和やかなんですけど、だんだんこのジャスティンの内面が現われていきます。それが、まるでメランコリアが近づいていることが関係しているように感じてしまいます。もともと奇妙な行動をとっていたという過去が姉の口から(今日は、何もしないでね)わかるのですが、この日は特におかしくなっていきます。式の途中で抜け出し、広いゴルフ場でおしっこしたり(ドレスをきたまま)、一人で風呂にはいってしまったり。母親(シャーロットランブリング)も人付き合いが下手で、自らも離婚して(もと旦那もこの式に出席)結婚なんて無意味と思っている変わったおばさん(笑)と描かれこれは血筋?と思わせるところも。結局二人の結婚はこの式の最後にはダメになってしまうんです。それはジャスティンの精神疾患によって。旦那もとてもよい人なんですけど、理解できないといって、いなくなってしまうんですよね。ジャスティンの仕事の上司も出席しているのですが、ここでのジャスティンの評価は高いのです。ということは仕事はきっちりしていた人ということになるのでしょうね。

ただ、この結婚式の一連が長い(笑)。しかも手持ちのカメラでリアルな感じに撮るのが監督の特徴なので、軽くビデオ酔いの状態になってしまいます。ここ、注意してごらんになった方が良いです(笑)。なるべく遠くで観た方が良いですよ(笑)。

そして、第2部クレアの表記。どうやら、あの式の後ジャスティンは本格的に病んでしまったようで、再び、この屋敷に呼んで世話をすると決意する、クレア。クレアの旦那(キーファーサザーランド)は天文学者。今回のメランコリア接近は一大イベントとして捉えています。でも世間では地球と衝突するともっぱらの評判。この旦那はそんなことは無いとクレアに言います。でもクレアはそのことが心配でしょうがない。大接近まであと5日というところで、ジャスティンが屋敷に来ます。クレアは親身になってジャスティンの心のケアをします。でもそれをあまり快く思っていない旦那(笑)。でもメランコリア観察には非常に熱心。しだいに開放に向かうジャスティンなんですけど、これはある意味メランコリアが地球と衝突することがわかっていて、それを受け容れていくことで、精神が開放されていったのだと思います。ジャスティンのセリフに「地球の生物は邪悪」というのがあるんですけど、それが象徴しているように感じました。大接近の夜、心配になるクレアですが、このときは確かに遠ざかっていくメランコリア。この映像がとても美しいので、ぜひ観てもらいたいです。
でも、翌日あわてるクレアの旦那。そして、クレアは彼が自殺してるのを発見します。そう、やはりメランコリアは地球と衝突することがわかったからです。しかもその自殺に使った薬物はクレアが用意していたものだったのに。ジャスティンは全て悟っていて、余裕すら感じます。クレアはなんとか息子を助けたいと思います。地球の何倍もある惑星ですから、どこにいっても無駄なのに。



結局、ジャスティンと息子とクレアの3人で、最後の時を迎えます。ここで一番取り乱しているのがクレア。息子とジャスティンは次のステージに進んでいるかのようなんですよね。この最後の映像を観ると、一番金持ちで世間からも一目おかれ、常識を重んじていたクレアの旦那が一番弱く、そんな旦那のことを疑いながらも信じていた一見か弱そうなクレアの方がまだ強かったというところがわかります。でも、精神を病んでいたジャスティンが一番強く、世間からは変わり者だと言われる人物だからこそ、こういう事態に対して冷静で沈着という皮肉があるように思います。

にしても、豪華なお屋敷と地球消滅という静かだけど、スケールの大きな話。ハリウッド的な人間愛や感動などのてんこ盛りはないからこそ、あと、メランコリアがあまりにも美しいからこそ、心に残る映画だったと思います。

くれぐれも、ビデオ酔いにはご注意を(笑)。劇場で観たほうがメランコリアの迫力と美しさが堪能できます。

TIME(ネタバレ注意)

2012-02-21 10:31:04 | 映画





今回は今公開している映画「TIME」について。

予告編を観たときから、設定の面白さとジャスティン・ティンバーレイクが主演ということでちょっと興味がありました(笑)。監督のこと調べずに観にいったけど、「ガタカ」を撮ったアンドリュー・ニコルなんですね。ガタカは好きな映画なんですよ。あれも遺伝子操作の話でした。


ここで内容を・・・



科学技術が進歩したことにより老化現象を解決した近未来、25歳で生体の成長が止まると余命はあと1年という社会が構築されていた。富裕層は寿命を気にしなくていい一方、貧しい人々は寿命を延ばすためにあくせく働き続けなければならなかった。貧しい青年のウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、時間と引き換えに裕福な男性を殺した容疑を掛けられ、追われる身となってしまい……。


と書いてあります(笑)。


観終わって、「うーん、残念」という感じ(笑)。設定はおもしろかったのですが、ストーリーのもっていきかたと、オチの部分がどうもしっくりこないというか。前半の時間で物を買ったり、人と時間のやり取りするところなんかはけっこう面白かったんです。だけど、ストーリーが進むにつれて、なんだか映画の方向性が変わってしまっているような感じがしてしまって。正直、DVDでも良いと思います(笑)。ただ、ゲイの視点からすると若くてカッコイイ俳優がたくさん出てくるのは楽しいことですが(笑)。もちろんジャスティンティンバーレイクはお約束のように上半身裸で出てきますし、富裕層でウィルに助けられる男性ヘンリーをマットボマーが演じて、貧乏ゾーンにいるギャングをアイアムNO4のアレックスペティファーが演じてるので、かなりイケメンぞろいな映画となっております(笑)。でも、あんまり露出はないのでそこら辺が残念ですが(笑)。なにせみんな25歳のところで老化が止まってしまうから(笑)。

この手のSFが好きで、なおかつイケメンの俳優を眺めるのには良い映画だと思いますが、それ以上のことはあんまり期待しないでご覧になることをオススメします(笑)。考えているならやめても良いかも(笑)。


ここからはネタバレですので、ご覧になっていない方は読まないでくださいね。
















でも、この主人公ウィルが100年という時間を手にして、富裕層ゾーンに行くところから、ストーリーが展開しだすんですよ。そこのカジノで大儲け(1000年という時間)して富裕層の娘と恋におちる。その100年という時間を与えたヘンリーが時間切れとなって死ぬから、ウィルにその容疑がかかる。これはわかるとしても、この時間の流れを監視している時間監視人がウィルを調べもしないで逮捕して、1000年の時間も没収するというのはちょっと疑問でした。だって、もらったものなのにどうしてつかまってしまうのかがわからないんです(笑)。もらったという証拠が記録に残らないなんて変じゃないですか?(笑)もし、時間がお金のかわりなのであれば、相続するという規定があっても良いはず(笑)。貧乏ゾーンの人だからという理由もなんかふに落ちないというか。でもこの時間監視人はなんだかそこまで悪い人ではないような描かれ方で。でね、結局ウィルは富裕層の彼女と一緒に時間銀行を襲って、時間を庶民に与えることを始めるっていうオチ。現代での一部の富裕層のために庶民が働いている構図と照らし合わせることはできますが、そもそも富裕層が価格や利率を決めているっていうのもどうなのかと。政治家や政府はどうなっているの?って思ってしまうんですよ。金(時間)の力でしょうか。ということは、現代でも富裕層が自分達に有利になるように政治家を操っているって言うことを伝えたい?(笑)。だったら、もっとそこを追求したような描き方でも良いのではと思うのです。なんだかネズミ小僧のようなラストも希望を持たせるような終わり方だから良いととらえると、いいのかもしれませんが(笑)、個人的には結局、大きな権力には逆らえない的な終わりで、それでも戦うという感じでもよかったかなと(笑)。

ちょっと、残念な映画でした(笑)。

ドラゴンタトゥーの女(ネタバレ注意)

2012-02-20 15:03:28 | 映画


今回は、今公開している映画「ドラゴンタトゥーの女」について。

これ、なんといってもデビッドフィンチャー監督の作品なので、期待していました。僕は彼の作品のファンなので、彼の作品はとにかく無条件に観にいくことにしています(笑)。あと、主演がダニエルクレイグだし。彼は年齢を重ねていってもかっこいいですよね。あと、僕は原作を読んでいたこともあって、あの長い話をどうやって映画にしているのかも気になっていました。スウェーデン版が公開されたときに、行こうかと思っていたのですが、なんだかんだといけなくなって、そうこうしている内にデビッドフィンチャーが撮ると聞き、そちらを待つことにしたという訳です(笑)。


ここで、内容を・・・


月刊誌「ミレニアム」で大物実業家の不正行為を暴いたジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)。そんな彼のもとに、ある大財閥会長から40年前に起こった兄の孫娘失踪(しっそう)事件の調査依頼が舞い込む。連続猟奇殺人事件が失踪(しっそう)にかかわっていると察知したミカエルは、天才ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)にリサーチ協力を求める。


と書いてあります(笑)。


ハリウッドでリメイクすると、なんだか大味の大作になってしまうこと多いのですが、フィンチャー監督は北欧のあの冬景色にこだわったということで、彼の得意とするスタイリッシュで、色彩を抑えた画面がこれでもかと登場します。やはり、彼は天才だなと(笑)。そして、彼の作品では久しぶりのオープニングタイトルのカッコよさ(笑)。セブンの時はカイルクーパーという人が担当していましたが、今回は違のですけど、すごくカッコイイです。ここから、映画に対する期待がどんどん膨らむオープニング。

主人公のミカエルを演じるダニエルクレイグは原作にすごく近い雰囲気でよかったです。にしても、スタイルも良くてカッコいいですねぇ(笑)。真冬ということなので、007の時みたいな露出は無いものの、ローライズのボクサーブリーフ姿を披露してくれています。あと、なんといってもリスベットを演じているルーニーマーラのすごさ(笑)。彼女はソーシャルネットワークでもフィンチャー監督と組んでいますが、今回は原作のリスベットそのままっていう感じで、すごく良かったです。この作品でアカデミーにもノミネートされていますね。

原作はとても長いのですが(でも映画も2時間35分と長いです)、とてもうまく映像化されています。ハリエットを殺したのが誰なのかという謎解きがおもしろいですよ。にしても、スウェーデンって女性のレイプや性的暴行、DVなんかが多いんですね。そして、それをほとんどの人が警察にとどけたりしないという事実があるようですよ。これってヒントですかね(笑)。

劇場でごらんになることをオススメします。原作を読んでいたとしても、十分楽しめるし、少し違うところもありますから(笑)。むしろ、読んでからごらんになるっていう方がおもしろいかもしれません。

ここからはネタバレですから、ごらんになっていない方は、絶対に読まないでくださいね。
















で、ハリエットが姿を消した理由は殺人ではなくて、逃げていたということがラストでわかります。そう、自分の身に危険がせまるから。というのも彼女の兄マルティンと父ゴットフリードからレイプされ、知らない女性を殺害することを強要されるというおぞましい過去から逃げるために失踪という形をとることにしたのが、この映画のオチ。これをおじのヘンリック(かれはハリエットのことをとても心配しています)が殺人と思い、40年捜査をしてきているのです。ここで、重要なのが、この地域がハリエット失踪の日に密室になることなんです。本土との唯一の橋の上で、大きな事故があってその橋がふさがってしまっていたのがまたおもしろくさせる仕組み。そんな状況で忽然と姿を消したから、殺人に違いないと。ここで、このゴットフリードとマルティンの狂った父子。ナチに傾倒していた父親と父から女性を恐怖で従わせる楽しさを教えられた子供という、ちょっと意外とも言えるこの背景。日本人にはさすがに理解しがたい事実ですが、大戦中のヨーロッパでは当然のようにユダヤ人にたいする迫害や、弱い女性に対する暴力は「あたりまえ」のようだったんですよね。単に、狂人というだけではすまないところ、歴史的にも深いです。一見関係のない未解決の女性殺害事件が実はゴットフリードとマルティンによって行われていたのがわかるのも、謎解きの面白さ。金田一耕介シリーズにも狂った金持ち出てきますが、それとは違いますよね(笑)。

原作では、ハリエットはオーストラリアで生きていて、大きな農場を経営していることになっていますが、この映画では映画ならではのオチがあって、ハリエットを逃がしたアニタ(ハリエットのいとこ)として、イギリスで生きていることになってました。原作では、アニタは現存してイギリスに暮らしているのす。ミカエルがアニタのものを訪れて、マルティンが死んだことを告げる場面があります。原作では、ここからアニタはオーストラリアにすぐ電話をかけるのです(リスベット達が盗聴しています)そして、ハリエットがオーストラリアにいることがわかるのですが、映画では盗聴しても全く変化が無いんです。ということはアニタは「ハリエット」だと気付く。ここら辺、なかなかおもしろいです。原作よりもいいかもって思いました。

ミカエルとリスベットが同じ事件に関わっていくのに、時間がかかるっていうのは原作を読んでいても、映画でも同じでした。原作だと上巻のラストでようやく二人が出会うのですから(笑)。

ミカエルと同僚のエリカとの関係。エリカにも旦那がいるのですが、愛人のような関係(エリカの旦那はミカエルとのことを知っています)になっています。ここが原作だとどうしてそうなっているのかが、よくわかるのですが、映画ではイマイチはっきりしないです。

そうそう、映画を観ていて気がついたのですが、設定では橋は1本しかないのですけど、橋が映る場面で奥にもう一つ橋が映っているところがあります(笑)。CGで消さなかったのかなと思ったり、気がつかなかったのかと思ったり(笑)。

このほかにも原作とは違ったり、はしょられたりしていますが、そこは原作でもいらないかもって思ったところだったので、本当にとてもうまく映画化されています。

次回作もぜひ、映像化してもらいたいです。