Unseasonable Shore

映画の感想を中心に、普通の生活をおくる30代ゲイの日々感じるできごと。

鑑定士と顔のない依頼人(ネタバレ注意)

2014-01-14 17:28:55 | 映画
今回は映画「鑑定士と顔のない依頼人」について。



監督は海の上のピアニストのジュゼッペ・トルナトーレ。主演はシャインのジェフリーラッシュ。なんとも豪華です。ミステリーということで観に行ってきました。

ここで内容を・・・



天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。



と書いてあります(笑)。


もともと、監督がこの作品を撮るときに、主人公は話が決まる前からジェフリーラッシュに決めていたそうです。それだけ、彼のイメージにぴったりな役でした。

鑑定士という仕事、全く知らなかったので、とても面白かったです。ヨーロッパの古いお家には、いろんなものがあるからなんですね。きっと日本でも旧家なんかではそういうことが行われているのかもしれませんが。

この映画、観終わって、「え~っ!」となるんです(笑)。そして、もう1回観たくなる映画です。様々な複線が張られているのですが、それが観終わってからわかるという仕組み。

共演にドナルドサザーランドが出ているのですが、これ、かなりキャスティング的にキーポイントなんです。


これ以上は言いません。すごく面白いというか、インパクトのある映画で、成功をつかんでいた男の、切ない幕切れに酔いしれてみてください。ミステリーがお好きな方、ヨーロッパの絵画や彫刻などに興味がある方、おすすめいたします。




ここからはネタバレです。ぜったいぜったい、ご覧になる前には読まないでくださいね。


























で、この主人公ヴァージルは、誠実そうに見えていて、実は陰で、自分の好きな作品を贋作と偽ったり、友人の画家(これがドナルドサザーランド)と手を組んで、自分のコレクション(有名な画家の情勢の肖像画)を安い値段で手に入れたりと、自分のことが相当好きというか、他人とうまくコミュニケーションできない人物。当然生身の女性とは恋愛や肉体関係もありません。そんな彼が顔を出さない依頼人に、興味をもち、覗き見して、その美しさと、彼女の精神疾患である、広場恐怖、対人恐怖に同情して、彼女をどんどん好きになっていくあたり、うまいんですよね。

で、この不慣れな恋愛を手助けしてくれるのが、修理屋のロバート。彼は女たらしなので、恋愛のテクニックをヴァージルに教えていくんです。



女性との初体験も済まし、恋愛にはまっていくヴァージル。彼女も精神疾患を克服し(外にでれなかったのですが、ヴァージルが家の前で暴漢に襲われ、それを助けるために17年ぶりに家をでます)、二人は一緒に暮らすまでに。




ここで、彼女の家から少しずつでてくる、「オートマタ」という古い機械仕掛けのロボットのような人形の部品が意味をなしていきます。これを修理しているのもロバートなので、必然的に、ヴァージルは彼のもとを頻繁に訪れます。このオートマタは歴史的に見ても非常に価値の高い作品とヴァージルは知っているのです。でも彼女の家で残りの部品を観たときに「大したことない」と言うんですよね。ここに、また彼の狡さが見えます。

でも、彼女と幸せになって、ロバートたちとも顔見知りになって、クレアも楽しげに暮らし、ヴァージルは仕事をやめてクレアと一緒にいつまでも暮らそうと思うようになっていきます。そして、あの誰もいれなかった自分のコレクションの部屋に彼女を入れるんです。そこにはすべて本物の歴史的に価値の高いものばかりが飾られています。

ヴァージルはイギリスでの最後の仕事のために家を離れます。

そして、家にもどって、クレアをさがすと、どこにもいません。


最後にコレクションのある、部屋に入って、彼は愕然とします。



そう、すべての絵が持ち去られていたんです。


つまり、クレアもロバートも、そして、ヴァージルが親友と思っていたドナルドサザーランド演じるビリーもヴァージルをだまして、コレクションをすべて盗むために、グルだったということがラストでわかります。

ビリーは画家だけど、ヴァージルに「才能がない」と言われて、彼のコレクションを手に入れるための手助けをして、手数料をもらっている生活を送っていたのです。ヴァージルは自分のコレクションを増やすために、なかりあこぎなことをしていたので、その片棒を担いていたこともビリーは嫌だったのかもしれません。

きっとビリーが計画をたてて、ロバートも引き入れ、クレア(これも本名ではないみたい)を使って、ヴァージルを陥れたのだと思いました。

ラストは、クレアが以前話していた、喫茶店で彼女の登場を待つヴァージルの姿で終わります。

実は、クレアは本当に彼のことを好きになって、そこで待ち合わせしているのか、単なる彼の妄想か、観る者にその判断がゆだねられるラストです。


これをわかってもう1度観てみると、いろいろわかることが多いから、「ユージュアルサスペクツ」のような映画です。

いや~、あの絵で埋まった部屋の壁がなんにもなくなっていた時のインパクト!

おそれいりました(笑)。

ゼロ・グラビティ(ネタバレ注意)

2014-01-11 13:19:42 | 映画
2014年も始まってしまいました(笑)。年末から年始にかけて観た映画について、これから書いていこうと思っています。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

今回はゼロ・グラビティについて。





予告編を観たときから、絶対みたいと思っておりました。僕の好きなジョージクル―二―が出てるし、おなじみ女優のサンドラブロックも出てるし(というか、この二人しか出てないし)。監督は天国の口、終りの楽園のアルフォンソ・キュアロンということで、観ないわけないでしょう、ということで、観に行ってきました。


ここで内容を・・・



地表から600キロメートルも離れた宇宙で、ミッションを遂行していたメディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。すると、スペースシャトルが大破するという想定外の事故が発生し、二人は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力空間へと放り出される。地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も2時間分しかない絶望的な状況で、彼らは懸命に生還する方法を探っていく。



と書いてあります(笑)。



で、何がすごいって、その映像です。僕はIMAX3Dで観たのですが、本当に自分が宇宙にいるかのような感覚にさせられるのと、「どうやって撮っているのだろう」と思う場面がたくさんでした。後になってわかったのですが、すべてCGなんだそうです。背景も宇宙服も(これ、すごいと思いました)。宇宙服の顔にかかる透明な部分もそうだというから驚きです。でもそんなことわかっていたとしても、映画が始まってしまえば、関係ありません。とにかくその世界に身をゆだねて、サンドラブロック扮するストーン博士の生還を見守ることに真剣になってしまうのですから。

ジョージクルーニーが、とても良い演技で、ますます好きになりましたねぇ(笑)。僕はゲイですが、若い人よりおじさんが好きみたいですね。





サンドラブロックがとても、うまいのもこの映画の魅力だと思います。あんまり美人じゃないところが、かえって宇宙に行く科学者という役に、ぴったりです。ニコールキッドマンじゃ、ダメでしょうね(笑)。

ぜったい、これは3Dで観たほうが良いと思います。そのための映画という感じがします。時間も短いので、緊張感をもって、最後まで見ることができます。

観終わって、人間は誰しも後悔してしまうことを抱えて生きているんだなと感じました。だからこそ、生きるということにしがみつけるというか、生きる意味が出るというか。そんな気持ちになりました。

映画館の大きなスクリーンでご覧になってください。

ここからはネタバレですから、絶対にご覧になっていない方は読まないでくださいね。



















ストーン博士が最初の事故にあう理由というのが、ロシアの衛星をいらなくなったから、自国で爆破したことがきっかけで、その破片が飛んでくるというなんとも人為的なことだというのが、驚きでした。で、それが軌道上にある衛星たちを巻き込んでくるから、どんどん破片が大きくなっていくというのも、当然なのですが、空気のない宇宙ではこれが一定の間隔ですごいスピードでくることになりますよね。これがタイムリミットをうんで、緊迫感がでる演出です。

そして、ストーン博士が飛ばされたあと、コワルスキーが助けにきます。そして、二人は国際宇宙ステーション(ISS)に向かうわけですが、ここでストーン博士の酸素が少なくなるという緊迫感と緊張をほぐそうといろいろな話をするコワルスキーが良いんですよ(笑)。

そして、ISSの近くに到着するのですが、コワルスキーは飛ばされて、ISSに到達することが不可能となり、自ら死を選ぶのです。ストーン博士は助けに行くといったのですが。

で、ISSに入ったストーン博士。ここから脱出ポッドを切り離したいのですが、開いてしまったパラシュートのひもがからまって、うまくいkなかない、そこへまたもや破片の嵐。この映像もすごかった。

なんとか、切り離しを成功させて、今度は中国の宇宙ステーションに向かいます。そこから、地球に帰るという案をコワルスキーが言っていたので。

中国のステーションに行ったのですが、ここからうまく地球に変える手段が見つからなくなり、ついには自ら酸素をすくなくしていって、自殺を考えるストーン博士。

ですが、ここでなぜか外からコワルスキーが中に入ってくるんです。そして、「何とか助かった」って言うんですよね。そして、逆噴射の装置を利用して、推進力を得ようと提案するんです。でも、これはストーン博士の幻。死を決断していた彼女に再び、地球帰還の気持ちを強くさせます。

なかなかうまい演出だと思いました。ここのジョージクルーニーがかっこいいですよ(笑)。


そして、大気圏突入、ボロボロになりながらも地球に帰還できたストーン博士。

娘の死の話をコワルスキーとしていて、それが彼女の生きる力になっていったんだと思いました。

コワルスキーのすごくおもしろい話。結末をしりたかったのですが、それは映画の中のストーン博士も同じで(笑)。

おもしろくないと思う方もいるかもしれませんが、僕はすごく楽しめたし、考えさせられたし、何と言ってもその映像に魅了された映画でした。