Unseasonable Shore

映画の感想を中心に、普通の生活をおくる30代ゲイの日々感じるできごと。

リンカーン

2013-04-25 17:20:35 | 映画
今回は映画「リンカーン」について。




やはり、アカデミー賞でもダニエル・デイ・ルイスの演技がすごいと話題でしたし、僕は教科書程度にしかリンカーン大統領のことを知らないし、歴史の勉強をしに行こうと思って観に行ってまいりました。

ここで内容を・・・


エイブラハム・リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)が、大統領に再選された1865年。アメリカを内戦状態に追い込んだ南北戦争は4年目に突入したが、彼は奴隷制度を永遠に葬り去る合衆国憲法修正第13条を下院議会で批准させるまでは戦いを終わらせないという強い決意があった。そのためにも、国務長官ウィリアム・スワード(デヴィッド・ストラザーン)らと共に憲法修正に必要な票を獲得するための議会工作に乗り出す。そんな中、学生だった長男ロバート(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が北軍へと入隊し……。



と書いてあります(笑)。



映画を観終わった時に「これはやはりアメリカ人がもっとも好きな大統領だ」と感じずにはいられませんでした。もちろん、奴隷解放と戦争の終結を同時に行うという目標のために、和平にきた南軍の存在をひた隠す策士の部分もありますが、人間という存在の平等さをアメリカ国民に知らせないといけないという信念のもとに行動をとった彼は、現代の私たちが見ても「すごい人だ」と思うのです。あと、票をあるめるためのロビー活動もけっこう露骨なんだなぁって感じました(笑)。

でも、こういう人物がもし現代の日本にいたらいったいどうこの日本を立て直してくれるのかと考えてしまいました。


個人的にはトミーリー・ジョーンズがとてもうまいと思いました。彼が演じるタデウス・スティーブンスが奴隷解放を強く願うのですが、どうしてそこまで願うのかがわからないままなんです。でも、ラスト近くになってわかると、そこまでの彼のかたくなな気持ちがすごくよくわかると感じました。アカデミー賞でも助演男優賞をあげたかったです。

もちろん、戦争の残酷なシーンや、当時はまだまだ電気も少なく、画面も暗いシーンが多いのですが、それが僕にはかえって真実をみせてくれていると感じました。

あと、今回はテレビドラマで活躍している俳優さんたちが、多く出演しているのも興味がありました。「あっこの人!」みたいな感じで(笑)。

2時間30分くらいある映画です。もちろん、派手な演出やシーンは少ないです。ですから、皆さんにおすすめできるとはおもいません。きっと「つまらない」と感じる方も多いかもしれません。僕は勉強しにいくと思って観たので「つまらない」とは思いませんでした。知らないことを知る喜びの方が大きかったからです。


興味がある方は、劇場の大きなスクリーンで観てもらいたい作品です。集中して観たほうが良いと思うからです。

ヒッチコック

2013-04-21 11:06:19 | 映画
今回は映画「ヒッチコック」について。



これはなんといっても、アンソニーホプキンスが特殊メイクと太る役作りで本物のヒッチコックにそっくりになっているところがミソ(笑)それと、映画「サイコ」がどのようにできていったのかがわかるというところも観たいと思った点でした。あとは、ヒッチコックを支えていた奥さんをヘレンミレンが演じるのも、観たい理由でした。


ここで内容を・・・


1959年、作品の高評価とは裏腹に監督としてはアカデミー賞に縁遠かったアルフレッド・ヒッチコック(アンソニー・ホプキンス)は、後にサスペンス映画の金字塔と称される『サイコ』の製作に着手。しかし独創的かつ奇抜であるがゆえに資金繰りは難航し、数々の困難に見舞われてしまう。さらに、常に彼を支え続けてきた最大の理解者である妻アルマ(ヘレン・ミレン)との関係までほころびが生じてきて……。


と書いてあります(笑)。


映画が終わって、「サイコ」ってこうやってできたのかぁって思って、もう1度サイコを見直してみたくなりました。

そもそもヒッチコックは才能はあるのに、コンプレックスがたくさんあったり、ブロンド美女に偏熱的であったり、殺人に倒錯気味だったりと、ちょっと変わった人物だったんですね。サイコに固執していくのもそのあたりが理由でした。このサイコのモデルになったのは殺人鬼のエド・ゲイン。彼が映画の中でヒッチコックの心の声として様々な場面であらわれてくる演出も面白かったですね。ちなみにこのエド・ゲインは映画「悪魔のいけにえ」のモデルにもなっているくらいの殺人鬼(笑)。彼が映画のオープニングで殺人をする場面、テレビシリーズのヒッチコック劇場のような演出でヒッチコックが登場してくるのも、テレビシリーズを観ていた人たちにとっては、おもしろい演出です。ちなみに、ラストの演出もなかなか秀逸ですから、期待してください(笑)。

アルマが浮気してるのでは、と疑っていくあたり、女優たちの着替えを壁の穴からみてるあたり、サイコの主人公ノーマンのようで、「壁の穴が見る側の方が大きく空いているのはなぜ」とスカーレットヨハンソン演じる女優ジャネットリーに尋ねられるのですが、「それは、いろんな角度からみたいから」と即答するヒッチコック。いつも女優の姿をそうやって壁越しにみていたからわかるっていう演出なんですね。おもしろい。

サイコの有名なシャワーのシーンですが、ここにもヒッチコックのこだわりがあって、ナイフをふるスタントマンにダメだしして、自らおこなうんですよね。ジャネットを本当に殺す(というか、犯す?)ことが目的のようにふるまうヒッチコックにその異常さが垣間見れるところです。

主演女優達を大きく飛躍させることが、ヒッチコックの目的だとわかる場面も描かれています。ジェシカ・ピール演じる女優ヴェラ・マイルズとヒッチコックの会話で、有名にさせてやろうとしたが、君がそれを望まなかった(彼女は結婚していて、人気が出たところで妊娠した)と怒る場面が出てます。これもヒッチコックにしてみれば、自分の思い通りにならない女性に対してのきびしさみたいなものが現れています。

アルマもヒッチコックのことは才能があって好きなのですが、自分のことをもっと大事にしてもらいたいと思っている感じがしました。だから、友人の脚本家であるウィットと共同で脚本を書くあたりは、なんだかうれしそうな場面もあります。でも、ウィットが本当に他の女性と浮気(ウィットには奥さんがいます)しているところ見たアルマはショックをうけるんですよね。ここ、「やっぱ、ちょっと浮気心があったのかも」と思わせる演出です。


そんなこんなでなんとか進んだサイコですが、最初のできあがりはあんまりおもしろくないものだったみたいです。そこで、奥さんであるアルマが最後に編集の作業に加わって、今僕たちがよく知っているあの「サイコ」になったということがわかりました。いわば、彼女のおかげで最高の映画になったんです。


ちなみにこの映画の監督、調べたらトムハンクスの「ターミナル」を撮った人だったんです。あの作品もすごく好きな映画ですが、今回の演出もどこかにユーモアがあって、楽しい映画になっていました。

映画ファンなら、観ても損はない作品だと思いますよ。

アンナカレーニナ

2013-04-19 13:55:12 | 映画
今回は映画「アンナカレーニナ」について。





僕ははずかしながらこの有名なトルストイの小説「アンナカレーニナ」を読んだことがありません。ですから、今回この映画でどういうストーリーなのかを知りたかったというのが、観に行った理由の一つです。あと主演がキーラナイトレイだし、監督がつぐないやハンナのジョーライトというところも気になったところです。


ここで、内容を・・・



19世紀末のロシア。政府高官カレーニン(ジュード・ロウ)の妻にして、社交界の花として人々から注目されるアンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)。しかし、華やかな生活の裏で夫との愛なき結婚に空虚なものを抱いていた。そんな中、彼女は離婚の危機に陥った兄夫婦の関係を修復させようと、彼らのいるモスクワへ。駅に降り立ったアンナは、そこで青年将校ヴロンスキー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と出会う。彼から強い思いをぶつけられて戸惑う彼女だが、自分にも彼を慕う気持ちで胸がいっぱいだった。


と書いてあります(笑)。




こう書いてあると、なんだかアンナの話だけのような気がしますが、ここに対比するようなストーリーである、地主のリョーヴンの恋愛話(リョーヴンが昔から好きだった、アンナの兄の娘との恋愛)が絡んでくるところが、実は面白いところなのだと感じました。

アンナとヴロンスキーの恋の話はわりとよくある不倫から始まって、お互いの気持ちがどんどん盛り上がっていくけど、アンナのヴロンスキーに対する不安(他の女のことを好きになってしまったのではないかという)から、最後は自殺してしまいます。この話の中で特筆するとすれば、夫であるカレーニンが、すごく良い人だったというところだと思います。彼はなるべくアンナの良いようにしてあげようとしていたのに、アンナが彼のそういうところが嫌だと言って出て行ってしまって、最後は彼女とヴロンスキーの子供も引き取って育ててあげるっていうラストに、「やっぱいい人だったんだぁ」って(笑)。

リョーヴン(これはトルストイの分身と言われているようです)は都会ではなく、田舎で地元の人たちと一緒に畑を耕し、生活することで、人生の幸せをつかんでいく。これぞ、人間の自然の姿と言わんばかり。

この二つのストーリーが対比される演出も面白かったです。アンナの話は一つの劇場の中だけで、話が進んでいくおもしろい手法。劇場の様々な場所が駅になったり、家になったり、競馬場になったり、レストランになったりと、ちょっとミュージカルのような演出でした。一方リョーヴンの話では、大地と自然と普通の暮らしが普通のように描かれています。

ここも、裕福だけど満たされない一つの世界だけで生活している人たちと、生活は貧しくでも、自然とともに生きている人たちとの対比がうまくあらわされていると感じました。

おもしろいとかおもしろくないとか、そういうことではなくて、この有名なお話をこういう風に楽しめる映画は素晴らしいと思います。

今まで映画化されたのは、アンナの話だけらしいです。でもトルストイが言いたかったのはリョーヴンとの対比なのだと思うのです。ですから、今回映画化された方が、より原作の意図に近いものだと感じました。

今度、原作を読んでみようかなと思わせる作品です。


ザ・マスター

2013-04-18 15:37:13 | 映画
今回は映画「ザ・マスター」について。



これ、アカデミーでもノミネート(主演男優と助演女優だったかな)されていたから、ちょっと観たかったんですよね。あと、監督もポールトーマスアンダーソンだし。彼の作品は変わっているけど、魅力がある映画が多いので。

ここで内容を・・・


第2次世界大戦後のアメリカ。アルコール依存の元海軍兵士のフレディ(ホアキン・フェニックス)は、「ザ・コーズ」という宗教団体の教祖ドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)に出会う。やがてフレディはドッドを信頼し、ドッドもフレディに一目置くように。そんな中、ドッドの妻・ペギー(エイミー・アダムス)は暴力的なフレディを追放するよう夫に進言し……。



と書いてあります(笑)。



で、この映画は何かを伝えるとか、ストーリーがきちんとあるとか、結論がはっきりしてるとかっていう映画ではないので、ここを好きになれるかどうかで、この映画の評価が分かれると思います。きっとつまらないと感じる人も多いかもしれません。
でも、ホアキン・フェニックス演じるフレディは人生を生きることにすごく不器用で、頭もあまり良くなく、セックス好きなんだけど、根っからの悪い人ではなく、本当に誰かに認められたいっていう想いが強い人物だなと感じました。だから、ドッドの宗教に入り込む(これも宗教とあんまり理論的ではない科学との融合のような、不思議な宗教)のだと思います。最初はドッドもすごくフレディのことを気に掛けるのですが、奥さんであるペギーは彼が危険な人物(この団体にとっても)と判断して、彼を遠ざけようとしていくんです。

フレディが修業のようなことを必死になって行う姿には、ちょっと切なさもありました。

ドッドとフレディの逮捕などがあって、フレディは団体と距離を置かざるを得なくなるのですが、ラストになってイギリスに拠点を移した団体(これはアメリカでの活動がしにくくなったため)に再びドッドに会うためにフレディが出向いていきます。でも、結局は受け入れてもらえずに、イギリスのパブで出会った女性に、コーズの考えに基づいた話をセックスのあとに行う所で映画は終わりになります。

このラストもなんだか、切ない雰囲気があって、僕は良かったと思います。ドッドに一瞬でも認められたフェニックスは幸せだったはずなので。

にしても、酒飲みだったりヤク中だったり、こういう役をやらせたらホアキンフェニックスの右に出るものがないという感じしますね(笑)。こういう役以外の彼を見てみたい気もしますが。

一方エイミーアダムズは、役によって様々な表情を見せる才能豊かな俳優さんだと思います。彼女が出演している映画はなんか「あたり」が多いような気がしています(笑)。

人によっては、賛否が分かれる映画ですが、もし気になるのであればご覧になってみてくださいね。


クラウドアトラス

2013-04-06 15:51:36 | 映画
今回は映画「クラウドアトラス」について。



監督はマトリックスのウォシャウスキー姉弟。って昔兄だったやんけ!というツッコミを入れたくなりますが、彼が性転換をしたことが有名ですよね。そいて、共同監督のトムティクバ。彼はランローラランやパヒュームでも有名です。

アメリカではあんまり評価が高くなかったのか、話題にあんまりならなかったみたい。でも、予告編をみたら、面白そうだったので、観に行ってきました。

ここで内容を・・・



1849年、太平洋諸島。若き弁護士に治療を施すドクター・ヘンリー・グース(トム・ハンクス)だったが、その目は邪悪な光をたたえていた。1973年のサンフランシスコ。原子力発電所の従業員アイザック・スミス(トム・ハンクス)は、取材に来た記者のルイサ(ハル・ベリー)と恋に落ちる。そして、地球崩壊後106度目の冬。ザックリー(トム・ハンクス)の村に進化した人間コミュニティーのメロニム(ハル・ベリー)がやって来て……。


と書いてありますが、6つの時代の6つのお話が次々と重なって、輪廻転生や人間の魂の浄化などがストーリーの中にいろいろ絡んでいく、複雑な映画。主要な登場人物もどの時代に出てきても、同じ役者が演じているのがわかりやすさにつながります。でもそれがおかしい(笑う方の)気持ちになるところもたくさんあります。女性が男性になっていたり、男性が女性になっていたり。誰がどうなのかわからないと書いてあるけど、はっきりわかりますよ(笑)。映画を観ていれば、「これはハルベリーだなぁとか、ヒューグラントだなぁとか」。

面白いのが、悪い人はどの時代でも悪い人っていう設定。ヒューグランドがそうなんですよね。でもトムハンクスが演じる人物たちは最初悪い人だったのが、輪廻を重ねていくうちに、最後は良い人になっていくっていうところが、救いがあると感じました。

ネオソウルという2144年の韓国が舞台になる時代で、クローン人間のソンミが自分たちクローンが家畜のように扱われている現実を目にして、反乱者達の指導者的な存在となっていくお話は、見ごたえがありました。演じている俳優も東洋人メイクをしていますが、これはちょっと不自然で笑っちゃうところもあります。そして、そのソンミが2321年には神としてあがめられているというのもおもしろい設定です。



ゲイとしてみれば、1936年が舞台のストーリーでゲイの青年ロバート(ベンウィショーが演じています)が出てくるのですが、ここの話が切なくて良いですねぇ(笑)。彼がクラウドアトラス6重奏という曲を作曲します。この曲がもとで、彼の人生が大きく変わってしまいます。好きだった青年との別れとか、切ないです。




結局、何が言いたいの?この映画というところで、きっと賛否がわかれるのかなと思いますが、哲学的な内容で「はっきりとしたストーリーが無い」というのがこの映画の良さのような気がします。人間の魂や存在、強欲さ、正直な気持ち。自然との調和。様々な要素が入り混じって、6重奏ではないですが、一つの作品になっていると思います。

僕は、この作品から魂の重さ、人々や自然とのかかわりには意味があるということを感じました。

3時間もある、長い映画ですが、その長さは感じません。

好き嫌いはあると思うので、全員におすすめはしませんが、ちょっとでも興味があるのであれば、ご覧になっていただくと良いかもしれません。

映画のラストで、どの役を誰が演じていたのかがわかりますので、そこもお楽しみに。

アカデミー賞でもノミネートもされなかったですから、あんまり評価が高くなかったと思います。でも、なかなか見ごたえのある大作だと思いますよ。

キャビン(ネタバレ注意)

2013-04-04 13:36:44 | Weblog
今回はホラー映画「キャビン」について。



僕はホラー映画も大好きでよく観に行くのですが、これは「想定できない展開」というのがウリのようで、それなら観に行ってみるかとなりました。

ここで内容を・・・


森の別荘へとやって来たデイナ(クリステン・コノリー)やカート(クリス・ヘムズワース)ら大学生の男女5人。彼らが身の毛もよだつような内容のつづられた古いノートを地下室で発見し、呪文を唱えてしまったことから、何者かが目を覚ましてしまう。一方、彼らの知らないところではその一部始終が監視され、コントロールされていたのだった。そして、何も知らない彼らに魔の手が忍び寄り……。



と書いてあります(笑)。


予告編でも、ありがちな山小屋で若者が次々に殺されるっていうシチュエーションがあって、でも、それをモニターで監視している映像も入っていて、ちょっと新しいリアリティショーのような雰囲気がありました。ちょうどジムキャリーのトゥルーマンショーみたいな感じですよね。あれは、感動の作品でしたが、それのホラー版なのかなと思っていました。


でも、それもどうやら「違う」みたい(笑)。


それと、シュワちゃんのバトルランナーのような殺人を中継して、楽しむ人たちがいるのかと思っていました。


でも、それもどうやら「違う」みたい(笑)。

映画を観終わって、この作品の監督はそうとうホラー映画のマニアではないかと思いました。そして、「自分ならこういうの作って、みんなを驚かせたい」って思ったのだと感じましたねぇ。

とにかく、よけいなことを考えずに、ホラー映画が好きな人であれば、観たほうが良いと思います。くだらないと思うかもしれませんが(笑)。

ここで、殺されていく若者にアベンジャーズの「マイティ・ソー」でお馴染みの、クリスヘムズワースが出ています。ブレイクする以前の作品だったのでしょうか。ちょっと驚きでした。そして、映画のラストに登場する大物俳優にも驚かされますので、お楽しみに。よくこんな作品に出てきたなぁって思いました。


ここからは、ネタバレですから本当に知りたい人だけ読んでくださいね。

















で、このモニターの人たちは山小屋(キャビン)の若者たちをある理由から、殺していかなければいけない人たちなんです。で、その殺す者達を、今回は悲しい歴史がある「ゾンビ」なのですが、若者たちが地下室にある様々なものから自発的(といっても彼らは知らないのです)に選んでいくというのが面白い。半漁人だったり、魔導師だったり、大蛇だったり。つまりこのモニターのあるところから、それぞれのキャラクターを山小屋に送り込んでいくという仕掛けなんです。

なので、このモニターの前で若者を操作している人たちがいる研究所には実は、この世にあるホラー映画やオカルト映画に出てくるクリーチャー達が「保管」され、「送り出される」所だったんです。

この設定が面白いと思いました。若者の行動はいろんな薬などでコントロールされてわざといやらしいことをさせたり、判断を鈍らせたりして、一人一人を犠牲にさせていきます。殺されていくたびに、どうやら儀式に使われるような仕掛けに犠牲者の血が流されていくのも、気になるところ。

若者の一人が、大麻を吸っていることから薬が効かず、仕組みに気づいてしまい地下の研究所にもう一人生き残った女の子と一緒に潜入していくのですが、この過程でいろんなクリーチャーが登場してくるので、ホラーファンはうれしいですね。ヘルレイザーの魔導師っぽいクリーチャーなんかマニア受けでしかないけど。

そして、この研究所をこのクリーチャー達を放出させることによってつぶしてしまえというのが、二人の作戦となるわけです。ものすごい数のクリーチャー達に襲われていく職員たちの姿は、すごい血の量ですよ(笑)。エレベーターのような箱に入っているクリーチャー達が次々と扉があいて出てくるのは、楽しいですね。

そしてやっぱり、なんで殺さないとダメなのかっていうところが気になりますよね。

これが、クトゥルー神話に出てくる古かのの神に捧げものをしないと人類が滅びてしまうというところのオチなんです。

で、ここの所長として出てくるのがシガニーウィーバー。大物女優がこんなところで出てくるんですよね。彼女の説明からすべてが明らかになっていきます。大麻を吸っていた男が死ねば、処女の女の子は死ななくても、神は納得するという説明。すでに4人は死んでいますから。一度は彼を殺そうとしますが、友人を殺すことができない女の子。結局所長もゾンビに殺され、二人の若者は崩れていく研究所に残るんです。

そして、山小屋を壊す大きな手が地下から登場して映画は終わります。

面白いのが、この研究所のようなところが世界各地にあるという設定もおもしろいです。日本にもあって、ジャパニーズホラーでよく登場する幽霊が小学生の女の子達を殺そうとして登場しますが、解決策を見つけてしまって失敗したりというオチがあったりするところも、細かいなと思いました。