今日、TSUTAYAで借り出した『倫敦から来た男』も、ミニシアターにかかった時から見たかった映画です。
メグレ警視(ジャン・ギャバンで映画化)でおなじみの、
ジョルジュ・シムノン原作です。
“ノワール・サスペンス”と評しているコメントもありますが、
“サスペンス”風味というより、シムノンらしく、人物の心情やその人生を語ることの方が見る者に訴えてきます。
ハンガリーの鬼才
タラ・ベーラ監督、大変な長回しです。(130分超の作品でわずか26カット、冒頭は30分ものワンシーン)
カメラは、人物の背後から迫り、最後には真正面でクローズアップして、その表情を覗き込んでいきます。
最初は呆れていらいらもするのですが、そのうちに主人公の心理に引き込まれていくのが不思議でした。
4,50年代の欧州映画と見間違うような陰鬱なモノクロームの世界も、独特の映像美があります。
港の駅を見下ろす制御室で、毎晩、線路の切り替えをしている鉄道員のマロワン。
ある晩、マロワンは、ロンドンから到着した船から降りた男ブラウンが、殺人を犯すのを目撃してしまう。
ブラウンが逃げ去った後、マロワンは殺された男が持っていたトランクを海中から拾い出す。
中にはいわくありげな大金が入っていた。
そのトランクを探し回るブラウン。やがてロンドンから刑事がやって来た… (公式ホームページより)
この港町は、北仏の
ディエップDieppu、英の
イーストボーンEastbourneとの間に定期船が行きかう場所です。
潮の匂いがする霧深い港町、シムノンの好きな町です。
イーストボーンには、以前に行ったことがあります。小さな港町で、あそこからフランスへの外国航路が…
英仏の近さと、生活便としての気楽な定期航路といった感じがわかります。
シムノン原作映画はほとんど見ていますが、原作は今まで敬遠してきましたが、やっと突破口を見出した気がしてます。
《ベルギー観光局のH.Pからの抜粋です。》
~倫敦から来た男~
7時間半にも及ぶ「サタンタンゴ」、熱狂的なファンを持つ『ヴェルクマイスター・ハーモニー』のハンガリーの鬼才タル・ベーラ監督。ブラッド・ピット、ガス・ヴァン・サント、ジム・ジャームッシュが心酔する彼の7年ぶりの最新作。
20世紀を代表する文豪ジョルジュ・シムノンの同名小説が、75年の時を経て映像化され、見事に"観る文学作品"へと昇華させている。
オスカー女優ティルダ・スウィントンを筆頭に退廃的な美しさを漂わせる女たちと、風変わりな男たちが、異世界へといざない、観る者を魅了する。光と影で織り成すモノクロームの映像美、空間の概念を揺るがすカメラワーク、登場人物の心情をも見透かすような長回し、タル・ベーラの完璧な技巧と、シムノンの鋭い人間描写が絡み合う、孤高のノワール・サスペンスがここに誕生した。
ジョルジュ・シムノンとは・・・
1903年ベルギーのリエージュ生まれ。
後に84篇も続く「メグレ警視」シリーズの第一作目「怪盗レトン」を31年に出版。
「メグレ警視」シリーズ以外にも「雪は汚れていた」、「闇のオディッセー」、「ちびの聖者」など本格小説を次々と発表
「倫(ロン)敦(ドン)から来た男(L'Homme de Londres)」は34年に出版され、43年フランスで「L'Homme de Londres」(アンリ・ドゥコワン監督)、47年にはイギリスで『誘惑の港』(ランス・コンフォート監督)のタイトルで映画化されている。他にも、『仕立て屋の恋』(89/パトリス・ルコント監督)など多くの小説が時代を超えて映画化され、世界中でTVシリーズ化もされている。
おまけ~
J.シムノンの生み出した人気探偵、メグレ警視の唯一のくつろぎは~
好みのワインを片手に夫人の腕によりをかけた手料理を賞味するとき。
スープからデザートまで100種類のグルメならばよだれの出そうなメニューばかりだが
庶民的な家庭料理でいわばフランスのおふくろの味。全体に煮込み料理が多い。
私にも作れそうです