マルガリータのつぶやき

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『ハーメルンの笛吹き男』 阿部謹也

2015-01-10 08:32:16 | 本 MEMO
『ハーメルンの笛吹き男』 伝説とその世界 阿部謹也

    
 
年末から、何かのきっかけで読み始めたのだが、その「きっかけ」がどうにも思い出せない。著者が真摯に伝説を追いかけるさまは、歴史的にも民俗的にも、歴史方法論的にも心がひりひりするよう(石牟礼道子)で、「きっかけ」などあっけなく押し流されてしまったということか。

それでもひとつ思い当たるのは、先のルーマニア行で13世紀~14世紀以来のドイツ人(ザクセン人)移植村を見たことから?というのがある。
極寒の山間地に突然現れたドイツそっくりの家並みには感心するばかりで歴史的経緯にまでは思いが及ばなかったが、帰国後に思い出されて仕方がなかったのだ。

それが… 本書の学説遍歴の後半の柱、20世紀の研究者ハインリッヒ・シュパヌートの若きパートナーとなったヴォルフガング・ヴァンの説に現れたのだ。
ヴァンが東ドイツ植民説との関連について、<笛吹き男>は植民請負人ではなかったかと考えたのは、自身、ズデーテンドイツ人の祖先をハーメルンに探し求めてこの伝説にたどり着いたという。
シュパヌートは、ヴァンの何かを求める生身の人間の真実の姿に打たれ自分の仕事を伝説の成立以降の変貌に限定し、原因の究明はヴァンに委ねた。

著者、阿部謹也にしても自身の辛苦を極めた生い立ちもあるのだろう、「自分の内奥と呼応しない歴史を理解することができない」と言っている。
そのあたりが「ハーメルンの笛吹き男」の、底辺の民衆伝説としてのこだわり、のちに歴史学に取り込まれていくさまを冷静に批判、分析していく姿勢に如実にあらわれている。
そして「中世史ブームといわれるきっかけの書」となり、1974年からじつに40年にわたって読み継がれてきた証なのだろう。








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