梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

名古屋へ行く前の日は…

2008年03月28日 | 芝居
銀座にございます東劇ビル内の稽古場で、名古屋御園座<陽春大歌舞伎>のお稽古が始まりました。
『与話情浮名横櫛』「見染め」の貝拾いの女は2度目ですが、『源太勘当』の腰元、『鬼平犯科帳 大川の隠居』の長谷川家の女中は初めてです。また1昨年初演の『閻魔と政頼』にも、後見として携わらせていただきます。

『源太勘当』は、名題の先輩方とご一緒ですので、万事教われるのが心強いです。久しぶりに時代物の芝居に出るのですが、最近新造とか仲居とか世話ばかりでしたので、どうもスイッチの切り替えがうまくいかず、なんとなく違和感が残りました。新参者の悲しいところです…。

「見染め」では、貝拾いの男女の出入りにいろいろ手順があって、幕開きからいる人、あとから出る人、あとから出るにも上手からか下手からかというふうに、変化をつけておりますが、貝拾い出演者の誰がどう出るかは、舞台監督的な職分である狂言作者さんが割り振りをしてくださいまして、進行表を書いてくださいます。
私は先輩と2人で、与三郎とすれ違いながら花道を引っ込むパートになりました。
与三郎を見ての芝居もできるちょっとうれしいお役です。

『鬼平犯科帳』は、齋藤雅文さんの演出です。歌舞伎としてみせるために、下座や大道具の使い方など、いろいろ工夫が凝らされているようですが、それ以上に、それぞれの人物をしっかり描くための細かく丁寧な演技演出を、じっくり時間をかけて作っておいででした。
私は後輩と2人で、酒宴の後片付けにくるお役で、お膳やらなにやら、引き下げる仕事がございます。テキパキこなさなくてはなりませんが、正直何も無い稽古場では段取りは組めません。舞台稽古での具合を待たなくてはならないのは不安です。

           ☆

お稽古を終えましてからは国立劇場小劇場に直行。舞踊家坂東三津緒師の<三津緒の会>の本番です。
三津緒師と師匠が共演する義太夫の『珠取海士』で、後見を勤めさせていただきました。師匠を葛桶に座らせるだけという、ごくごく仕事の少ない後見でしたが、それでも本番1回勝負は緊張いたしました。座っている師匠の陰になっていたので、三津緒師の踊りを間近で拝見することもできました。
海士ということで、藤色に銀の海松(みる)模様の縫の小袿、薄紅色のぼかしに千鳥の着付、白地に銀の波模様の襦袢というこしらえですが、これは6世歌右衛門の大旦那がかつての上演におきまして仕立てた意匠なのだそうです。品がよくて、お芝居らしくて、なにより舞台映えが立派で、とても美しゅうございました。

それにしても小劇場の舞台は照明が近いから暑いですね!
終演後は三津緒師の後見をされた先輩と、わざわざ観に来てくれた後輩とで、四谷の洋食屋さんでご飯を食べ、終電を逃してしまうまで芝居話し…。

なんとも濃い一日ではございました!