梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

京から大坂へ転職

2008年03月04日 | 芝居
私のお役は、先月も今月も<仲居>。
かたや『忠臣蔵七段目』の<祗園一力>、かたや『廓文章』の<新町吉田屋>。どちらも上方の廓でございます。
どの仲居も、扮装はほとんど同じなんですが、黒繻子の帯の結び方が、先月の『七段目』は垂れを短かめにした<柳>、今月の『廓文章』は<角出し>というふうに、微妙に違っております。
『七段目』も、上方の型で上演する際には<角出し>になることが多いそうです。別段、<角出し>が関西の芝居特有の結びかたというわけではございませんが、昔からそういう慣習になっておりますようで…。

さらに、今月の<角出し>は<関西手(かんさいで)>という締めかたで、帯を廻してゆく方向が、東京とは逆方向になるのです。関西手につきましてはこちらをご参照下さい。

着付は双方ともに縮緬地、黒繻子の襟。『七段目』は由良之助の紋である<二つ巴>、『廓文章』は伊左衛門をお勤めになる方の紋にちなんだ柄になります(今月は松嶋屋(仁左衛門)さんですので、銀杏の模様です)。
廓の女とはいえあくまで仲居ですので、着付自体はごくごく薄く仕立てられております。こういう着付をお引きずりで着ますと、裾さばきが意外と面倒で、弁天小僧じゃありませんが、「ペラッペラして歩きにくいや」という感じ。フキ(裾まわり)に綿が入ったものや、しっかりした裏地がついたものなど、ある程度の重みがあるもののほうが、体に自然とついてくるんですよ。
先月は階段の昇り降りもありましたから余計難儀をいたしましたが、今月はふた月目ということもありますし、段差もないのでずいぶん楽です。

女形として勉強している身に取りまして、まずはこういう衣裳を体に馴染ませませんとね!