梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

使用法はいろいろ

2006年01月10日 | 芝居
写真は『鶴壽千歳』で使用しております小道具、<葛桶(かずらおけ)>です。
もともとは能、狂言で生まれた小道具ですので、歌舞伎でも、能、狂言から題材をとった<松羽目もの>の演目でよく見られますが、今回の『鶴壽千歳』のような様式性の強い舞踊や、時代物のお芝居でも、見ることができます。
使い方はいわゆる<合引>として、役者が腰をかける際に使われることがほとんどです。『鶴壽千歳』では雄鶴の精、『勧進帳』では富樫、『身替座禅』では太郎冠者と奥方玉の井、芝居では『源太勘当』の梶原源太、『伽羅先代萩』では栄御前、といった具合です。
しかしこの<葛桶>、たんに椅子代わりとしての役目だけではございませんで、鶸色の紐をほどくと、上部の蓋を外すことができますので、『勧進帳』や『素襖落』ではこの蓋を大杯として使いますし、『棒しばり』では本体を酒壷に見立てます。また『土蜘』では、源頼光が、上手で控えている間、脇息のように左腕を乗せてポーズを作ります。狂言の方では、木に見立てることもあるそうで、このように、用途が様々なのが<葛桶>の特徴なのですね。

座ることができるくらいですので頑丈な作りで、重さもけっこうあります。模様は写真のような<狂言模様>か、蒔絵風に山水を描いたものが一般的です。