北海道でノンビリと

タブタブの何処かへ行こう を改題しました。
何処かへ行く機会も減ってきたので 北海道を楽しもうと思ったからです

思い出・・・・・藁の寝床

2017-01-13 20:22:13 | 日記
(昨日の続き)

先輩に案内され薄暗い寮の階段を上がり廊下を歩いた。
本来は土足厳禁の建物内を靴履いたままで歩くのは かなり違和感があるのだが、何しろ歩く度にジャシジャシと音がするので 靴を脱ぐわけにはいかない。

「この部屋を使って良いよ」と一室のドアを示され 先輩はジャシジャシと音を立てて消えて行った。

恐る恐るドアを開けると、そこは 「多分」 和室の六畳間。

「多分」と云うのには理由がある。

畳表が消え 一面 藁が撒かれたように見えたのだ。

まるで 犬小屋か牛舎のような感じなのだ。かろうじて元は畳だったであろう残骸が一面に敷き詰められてはいる。

裸電球の下、砂が一面に撒かれたような廊下よりもひどい惨状に荷物を下ろすこともできず しばし呆然と立ち尽くした。

ふと見ると開いたままの押入れにデンと置かれているのは先に送ってあった私の布団袋のようだ。

しかし、しかし この床を何とかしなければ座ることもできない現実に直面し、本来グータラの私は必死に動き出した。

表通りへ出て家具屋を探し、六畳サイズの敷物を買った。
雑巾と洗剤にゴミ箱も手に入れて寮へ戻り、先ずは敷物で藁を覆い隠し、部屋の片隅にある座机を拭き、押入れの布団袋を部屋に下して押入れも拭いた。

見掛け上は牛小屋から 何となく人間様の住める部屋に変わった所で やっと横になり天井を眺めた。

(これはエライことになってきたぞ) と思うのだが、一方では頭が混乱しているのか脳が充分に機能していない。

難民が必死になって重い荷物を背負い、歩いているのに似た感覚かも知れない。


そうだ、飯食おう。とにかく飯食って落ち着こう。

「住」は出来たし、「衣」もある。飯食えば 生きては行けるだろう。

もう一度 ジャシジャシと音を響かせながら廊下を歩き 表通りへ出ると 何も考えず 一番近くの定食屋へ入った。

(負けるもんか、こんなことで泣くもんか) と自分を叱咤し定食をたいらげた。
ここへ来ると決めたのは、自分なのだ。

部屋へ戻り布団を広げて その中へ倒れ込んだ途端、懐かしい故郷の匂いに包まれた