チョット 痒い。
自分の身体だからと云って 全てが見えているわけではないし、むしろ半分近くは見えていないように思う。
どこが 痒いのだろうかと、先ず場所探しを開始。
多分、この辺りだと確信したのは、自分でもほとんど見たことのない場所だった。
それは、あの・・・・チョット言い難いのだけれど、オマタに垂れている お玉の場所。
非常に繊細で「急所」と呼ばれている場所で、手荒く扱うことは出来ない。
少しずつ 皮を引っ張って、この辺りかと見当をつけてルンバを呼んだ。
「お母さん、あのね チョット痒いんだけれど・・・・見てくれる?」
拒否されるかと思っていたけれど、ホイホイと私の股間を覗き込み、真面目に皮を優しく引っ張って・・・・数分後に「分からん」との言葉を残してキッチンへ戻って行った。
「暑さで蒸れたのかも知れない」と云いながら 時々ボリボリと皮を傷めない程度に優しく掻くのが癖になった。
そして定期の受診日。
採血の結果、抗がん剤投与に耐えられると診断を受け、点滴室へ移動しようと腰を上げた所で、「そうだ、お父さん あそこを見て貰いなさいよ」と突然響き渡るルンバの声。
ルンバの指は私の股間をピシっと示し、先生は???
都合の良いことに先生の横にいる事務クラークさんが呼ばれて出て行って不在。
だから私はルンバの指示に従い、ファスナーを下げてポロンと出した。
突然の出来事でアワワ状態の先生に「この辺が痒い」と お玉ちゃんを見せ「きっと蒸れたんですよね」と先に診断名まで勝手に付け、先生も同意して「蒸れたのでしょう」と 一瞬で診断を付けて元の位置に収納。
丁度事務クラークさんが戻って来てお玉ちゃんと遭遇することもなく、ジャストタイム。
心配なのは先生が 突然現れたお玉ちゃんの夢を見ないかと云うことだ。
予告なしに突然目の前にポロンと現れたからねぇ。
かなり焦ったと思うのだけれど。