第38期名人戦挑戦手合いは、4勝1敗で井山5冠が山下名人を破り、至上2人目の大三冠(併せて6冠)となりました。囲碁ファンとしては7局目まで見たかったのですが、両者が全力で戦った結果ですので拍手をおくりたいと思います。
さて、例によって布石の話になりますが、序盤の5~6手で「平行型」、「タスキ型」、そして空き隅より掛かりを優先する「掛優先型」に分けられると思います。
過去5年間のトッププロの対局1166局(2013/9/10付け記事(注1)参照)に於いては、「平行型」が圧倒的に多く908局(約78%)、ついで「タスキ型」172局(約15%)、「掛優先型」85局(約7%)となっています(その他上記分類以外のもの1局)。黒番の1166局全体の勝率は先に述べましたように50.6%ですが、上記分類の「平行型」では49.9%、「タスキ型」では48.8%と5割弱です。しかし「掛優先型」では61.2%と抜群の勝率なのです。これにより全体として5割を上回る勝率になっているようです。
「掛優先型」85局についてもう少し詳しく見ますと、黒が三手目で掛かったケースが11件で結果は黒の4勝7敗、白が二手目又は四手目で掛かったケースが74局で結果は黒の48勝26敗(勝率64.9%)。いずれも空き隅を打たず先に掛かった方の勝率が悪く、これは偶然による通常の変動範囲を越えているように思われます。つまり、昔から言われている「一に空き隅、二に掛かり」の傍証なのではないかと考えた次第です。最近では「掛優先型」の布石は非常に少なくなっているようです。