***** 子年の展望 No.57 *****
==========================
「思えば伊勢と三輪の神、一体分身の御事、今更何と磐座や……」
訳:伊勢の神と三輪の神は同神だ。今更あえて言うまでもない
==========================
これは、大神神社ゆかりの能「三輪」の一節で、
三輪明神(大物主神)が最後に語る文言です。
このお能の演目は、「大神祭」でも演じられるそうですし、
「三輪の神」と「伊勢の神」とのただならぬ関係は、
歴史の合間合間に人々の間で
話題に上っていたのかもしれません。
ちなみに、この文言を元に、
伊勢で祀られているのは「三輪の神」だ、
という説も取り沙汰されておりますが、
これには「長物」の概念が深く関与しているようで、
三輪山の蛇伝説と内宮の蛇伝説とが、
長い時代の中で混合している部分もあるのでしょう。
一概に「蛇神」といっても、縄文時代から
多種多様の蛇信仰が日本に入り込んでいましたし、
この一節だけで「三輪」と「伊勢」を
同神として結びつけるのは、
少々無理があるかなと個人的には感じております。
いずれにせよ、「三輪の神(大物主神)」と
「伊勢の神(天照太御神)」との間に横たわる「因縁」が、
古くから人々の記憶に残されていたことは確かなようです。